おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
241 / 519
雑賀家お家騒動

第207話:雑賀重清 対 雑賀美影 決着?

しおりを挟む
「大忍弾の術だぁーーーっ!」
そう叫んだ重清は、そのまま指先を向け、続けた。

「ドカンっ!!」
((発射音もダセぇ!!))

再びつっこんでいるプレッソとチーノの言葉に若干傷ついている重清の忍力が、重清の指先からサッカーボール大の忍力の塊となり、重清の声とともに美影に向って飛び出した。

銃を使わない状態の弾丸の術よりも少し遅めのその『大忍弾』は、まっすぐに美影に向って進んでいった。

「こここここんなもの、避けるまでもないわ!!」
相変わらず焦り声の美影は、自身に向かって来る忍力の塊に耐えるべく、忍力を全開にして身構えた。

大忍弾が美影の目前へと迫った瞬間、美影の視界に黄色い閃光が迸った。
その直後、美影の目の前に1人の男が姿を現した。

一瞬にして美影の前に現れた男の姿に、重清は瞬時に思った。

(うわぁ)

と。

重清の視線の先にいるその男は、いわゆる忍者装束を身に纏っていた。
重清の思う『これぞ忍者』ってくらいに忍者っぽい装束である。
ただ1点、重清の思っていたのとは似ても似つかないところが、その男の纏う装束にはあった。

重清の中では、忍者装束と言えば黒だった。
闇に生き、闇とともに死す、それが忍者。

まさに中二病的な思想の中一男子、重清にとって、男の姿はまさに理想的であった。

忍者らしくない、あまりにも目立つ『黄色』という色を除いて。

(忍者っぽい!けどそうじゃない!!)

一瞬にしてテンションがマックスからミニマムへと上下した重清は身動きも取れず、ただ男の動向を見つめることしかできなかった。

美影の前に現れた瞬間に重清複雑な思いを抱かせたその男は、迫る大忍弾を見つめ、こともなげに重清に向って蹴り返した。

「うそっ!?」

重清が「ドカン」した時よりも速いスピードで蹴り返された大忍弾に、重清は声をあげつつ慌てて防御に徹しようとする。

(やっべ、忍力結構使っちゃってる!)
焦りながらも重清は、残り少ない忍力を腕へと集め、自身が放った大忍弾を受け止めようとした。

「へ??」
しかし大忍弾は、まるでそこに重清などいないかのようにスッと重清をすり抜け、忘れられていたかのように黙って重清たちを観戦していたショウ達の方へと向かって行った。


「あら、こっちに来るじゃない。重清の新しい術、私達だったら止められるんじゃない?」
「どうだろうねー。あれ、かなり忍力込められてるみたいだよー」

大忍弾の前に、麻耶とショウが立ちはだかった。

「やる気出してるとこ悪ぃが、あれはお前らにはどうにもできねーよ」
麻耶たちの背後から聞こえるノリの言葉に、2人はむっとしながらも笑いを浮かべ、構えた。

雷脚の術を使った麻耶の蹴りと、その直後にじょうから放たれるショウの水砲の術が、大忍弾へと向けられた。

しかし、麻耶の脚と水砲をすり抜けた大忍弾は、慌てて防御に構えたショウすらもすり抜けて、背後のノリへと迫る。

「はぁーーーーーー」
深いため息の後、ノリは両手を前へと突き出し、大忍弾を

そのまま両掌で挟み込むように抑えた大忍弾を、グッと力を入れたノリが潰し、大忍弾は霧散していった。

「覚えておけ。今のが本来の、百発百中の術の力だ」
ノリは、ショウ達に目を向けてそう言った。

その時。

「甲賀ノリ!!!!」
黄色い男が、怒鳴り声をあげた。

「貴様、何故介入しなかった!!美影様にお怪我を負わせるところだったのだぞ!!」
男の言葉に、ノリは離れた男に聞こえるか聞こえないかくらいの声で答える。

「申し訳ございませーん。初めて見る技でしたので、威力がわかりませんでした!」
なんともやる気のないノリの言葉に、男は黄色い装束に覆われた顔に青筋を浮かべた。

「ちっ。甲賀平八の弟子が、粋がりおって」
「すみませーーーん、平八ですよーー」
ノリに聞こえないほどの声で呟いた男の言葉に、わざとらしく間延びした声でノリが反論した。

「黙れ!!たかが契約忍者が、雑賀の名を名乗るなど、この私が認めぬわ!!」

「た、たかが?」
男の言葉に、忍力切れに近いフラフラの重清が反応した。

「じ、じいちゃんをそんな風に言わないでもらえませんかね、黄色いおっちゃん」
「き、黄色いおっちゃんだと!?貴様、雑賀本家の一番弟子であるこの私に、なんてことを言うのだ!!」

重清の言葉に、男が怒りの表情を浮かべるのと同時に、美影は驚きの色を浮かべて重清に視線を向けていた。

「いや、そんなの知らないし。それよりじいちゃんに謝って―――」

「ちょっと末席!あんた、雑賀平八の、雑賀雅様の孫なの!?」
美影が、重清につかみかかった。

「えっ、いや、今そこ!?ちょ、やめて、首もげる!」
美影に首をガクンガクンされながら重清が美影に返していると、

「おい貴様!美影様にタメ口とは、どういう了見だ!!!」
黄色いおっちゃんが重清に対して怒鳴り始めた。

なんかもう、その場はただ、わちゃわちゃするのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

処理中です...