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雑賀家お家騒動
第199話:甲賀ソウ 対 雑賀クル その2
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「・・・・・・」
2人で声も出さず笑いあったソウとクルは、また沈黙していた。
「えっと、なんだかほんわかしちゃったけど、どうする?」
そんな中、ソウがおずおずとクルに目を向けた。
「充希様から言われたし、できれば僕は、続けたい」
クルは、そんなソウに強い意志のこもった視線を返した。
強制的な命令ではなく、あくまでも自身の意志がこもった目を見たソウは、
「うん。じゃぁ、続き、やろう!ぼくも、もう少し君の力を見たかったんだ」
笑ってクルにそう返した。
「「じゃぁ・・・」」
2人はそう言って互いに距離をとり、構えた。
「雑賀本家当主、雑賀六兵衛様の弟子、雑賀クル!」
「甲賀ノリ、そしておじい―――じゃなくて甲賀オウの弟子、甲賀ソウ!」
「「いくよっ!」」
その言葉と同時に、ソウは再び飛翔の術で空へと飛び上がった。
そのままソウは、その場に留まることなく空中を自在に動き回っていた。
クルは隠密の術で姿を隠し、体の力で強化した体術で攻撃をしてくる。
それを理解していたソウの、空中であればクルも自在に動けないだろうと考えての行動であった。
(やっぱり、もういない)
飛翔の術で飛び上がってすぐにクルのいた場所に目を向けたソウは、クルが既に術で姿を隠したのを確認し、忍力を高めた。
(雅さんみたいに空間ごと場所を変えているわけじゃない。この場に必ずいるんだ。だったら、絶対に見つけられるはず)
ソウはクルの捜索に集中し、ソウも気づかないうちに少しずつ、飛翔の術の動きが緩慢になっていった。
「探すのに集中しすぎだよ」
その声が聞こえたときには、ソウは飛翔の術でその場から離れていった。
「凄い。今、僕が声をかける前に、僕の居場所がわかってたね?」
クルが驚きの声をあげて地へと落下しながら、マントで身を包んでその姿を消した。
(違う、今のは隠君が近づいたから何とか分かっただけだ!)
ソウは心の中で悔しそうに言いながら、木砲の術を発動した。
ソウの武具であるスマホの能力、『追尾』や『迎撃』を使わずにスマホのみをとおして発動された木砲の術は、スマホを握るソウの手にその根を巻き付け、手の甲に一輪の花を咲かせていた。
『迎撃』のように自動で対象を狙うのではなくソウ自身の意思で攻撃をとばす、飛翔の術使用時の攻撃スタイルであった。
しかしソウは、若干の不満げな顔で左手の甲に割いた花を見つめて、それを地面に向けて撃った。
隠密の術で姿を隠しているとはいえ、空中で自由に動けないはずのクルはただ落下するしかない。
だからこそその落下地点に向けて、着地するであろうタイミングで撃たれた攻撃であった。
「はぁ、別の術とは言え、こうするとシゲと被った気がして嫌なんだよねぇ」
ソウは、花の種が着弾して土煙が起きる地面を見ながら呟いていた。
どうやらソウが先ほど不満そうな顔をしたのは、今の攻撃スタイルが重清と似ていることに対する不満が原因だったようである。
彼と重清は親友だったはずなのだが、男心とはわからないものなのである。
それはされておき。
(土煙が起きたってことは、隠君じゃなくて地面に当たったみたい。ってことは、避けられちゃったかな。う~ん。いつも『追尾』や『迎撃』に頼り過ぎかな)
ソウが一瞬そんなことを考えていると、
「油断しちゃダメだよ」
ソウの足元から声が聞こえた。
空中から落下し、地面に着地したその足でそのまま飛んできた花の種を避けながらソウに向かって飛び上がっていたクルが、ソウの足を掴んでいた。
「うわっ!!」
そのまま空中で回転しながら、クルはソウを振り回して地面へ向かって投げつけた。
「くっ!!」
ソウは地面へ叩きつけられる直前に飛翔の術でその勢いを止め、そっと地に着地してすぐに空を見上げた。
「またいない!?」
「相手が地面にいれば、こっちのもの」
空を見上げて声をあげたソウの背後で、声が聞こえたのと同時にソウは、
(くっ、鎌鼬の術!)
四方に竜巻を発生させた。
「うわっ!」
竜巻に吹き飛ばされたクルは、空中で一回転して着地する。
その体には、鎌鼬の術でできたいくつもの傷ができていた。
「凄い。やるね、君」
クルが笑って言った。
「隠君こそ」
肩で息をしながら、ソウも笑って返した。
「ありがと」
そう言って笑うクルは、少しの間目を閉じ、
「お2人の忍力は近くに感じない。ここなら大丈夫だね。じゃぁソウ君、僕もう少しだけ本気、出すね」
そう言ったクルは、手を掲げたのであった。
2人で声も出さず笑いあったソウとクルは、また沈黙していた。
「えっと、なんだかほんわかしちゃったけど、どうする?」
そんな中、ソウがおずおずとクルに目を向けた。
「充希様から言われたし、できれば僕は、続けたい」
クルは、そんなソウに強い意志のこもった視線を返した。
強制的な命令ではなく、あくまでも自身の意志がこもった目を見たソウは、
「うん。じゃぁ、続き、やろう!ぼくも、もう少し君の力を見たかったんだ」
笑ってクルにそう返した。
「「じゃぁ・・・」」
2人はそう言って互いに距離をとり、構えた。
「雑賀本家当主、雑賀六兵衛様の弟子、雑賀クル!」
「甲賀ノリ、そしておじい―――じゃなくて甲賀オウの弟子、甲賀ソウ!」
「「いくよっ!」」
その言葉と同時に、ソウは再び飛翔の術で空へと飛び上がった。
そのままソウは、その場に留まることなく空中を自在に動き回っていた。
クルは隠密の術で姿を隠し、体の力で強化した体術で攻撃をしてくる。
それを理解していたソウの、空中であればクルも自在に動けないだろうと考えての行動であった。
(やっぱり、もういない)
飛翔の術で飛び上がってすぐにクルのいた場所に目を向けたソウは、クルが既に術で姿を隠したのを確認し、忍力を高めた。
(雅さんみたいに空間ごと場所を変えているわけじゃない。この場に必ずいるんだ。だったら、絶対に見つけられるはず)
ソウはクルの捜索に集中し、ソウも気づかないうちに少しずつ、飛翔の術の動きが緩慢になっていった。
「探すのに集中しすぎだよ」
その声が聞こえたときには、ソウは飛翔の術でその場から離れていった。
「凄い。今、僕が声をかける前に、僕の居場所がわかってたね?」
クルが驚きの声をあげて地へと落下しながら、マントで身を包んでその姿を消した。
(違う、今のは隠君が近づいたから何とか分かっただけだ!)
ソウは心の中で悔しそうに言いながら、木砲の術を発動した。
ソウの武具であるスマホの能力、『追尾』や『迎撃』を使わずにスマホのみをとおして発動された木砲の術は、スマホを握るソウの手にその根を巻き付け、手の甲に一輪の花を咲かせていた。
『迎撃』のように自動で対象を狙うのではなくソウ自身の意思で攻撃をとばす、飛翔の術使用時の攻撃スタイルであった。
しかしソウは、若干の不満げな顔で左手の甲に割いた花を見つめて、それを地面に向けて撃った。
隠密の術で姿を隠しているとはいえ、空中で自由に動けないはずのクルはただ落下するしかない。
だからこそその落下地点に向けて、着地するであろうタイミングで撃たれた攻撃であった。
「はぁ、別の術とは言え、こうするとシゲと被った気がして嫌なんだよねぇ」
ソウは、花の種が着弾して土煙が起きる地面を見ながら呟いていた。
どうやらソウが先ほど不満そうな顔をしたのは、今の攻撃スタイルが重清と似ていることに対する不満が原因だったようである。
彼と重清は親友だったはずなのだが、男心とはわからないものなのである。
それはされておき。
(土煙が起きたってことは、隠君じゃなくて地面に当たったみたい。ってことは、避けられちゃったかな。う~ん。いつも『追尾』や『迎撃』に頼り過ぎかな)
ソウが一瞬そんなことを考えていると、
「油断しちゃダメだよ」
ソウの足元から声が聞こえた。
空中から落下し、地面に着地したその足でそのまま飛んできた花の種を避けながらソウに向かって飛び上がっていたクルが、ソウの足を掴んでいた。
「うわっ!!」
そのまま空中で回転しながら、クルはソウを振り回して地面へ向かって投げつけた。
「くっ!!」
ソウは地面へ叩きつけられる直前に飛翔の術でその勢いを止め、そっと地に着地してすぐに空を見上げた。
「またいない!?」
「相手が地面にいれば、こっちのもの」
空を見上げて声をあげたソウの背後で、声が聞こえたのと同時にソウは、
(くっ、鎌鼬の術!)
四方に竜巻を発生させた。
「うわっ!」
竜巻に吹き飛ばされたクルは、空中で一回転して着地する。
その体には、鎌鼬の術でできたいくつもの傷ができていた。
「凄い。やるね、君」
クルが笑って言った。
「隠君こそ」
肩で息をしながら、ソウも笑って返した。
「ありがと」
そう言って笑うクルは、少しの間目を閉じ、
「お2人の忍力は近くに感じない。ここなら大丈夫だね。じゃぁソウ君、僕もう少しだけ本気、出すね」
そう言ったクルは、手を掲げたのであった。
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