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外伝〜出会いの章〜
第9話:甲賀平八 対 雑賀雅 その3
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「あ、あたしはこの術を作るのに長い時間を使っていたのよ!?それをあんたは、この短時間でやったというの!?」
そう言う雅に、平八はボロボロになった筵を手放して笑いかけました。
「私は術を作るのは苦手だけど、術の解析には自信があってね。1度見た術は、大抵力の配分が分かるんだよ。でも、さすがに君の術には手こずったよ。ここまで解析に時間が掛かったのは、初めてだったよ」
「ふざけたことをっ!この猿真似野郎がっ!」
雅がそう言うと、その姿がフッと消えてしまいました。
高速で移動したのではありませんでした。
感知の得意な私でも、雅の気配を全く感じることができなかったからです。
「凄い。物質だけでなく、ヒトすらも別空間に移動することができるなんて・・・しかもその術。今までの術とは別ものだね。これはまた、解析に時間が掛かりそうだ。君は、本当に天才だな」
『あんたには言われたくないわよ!』別空間にいるはずの雅の、そんな言葉が聞こえてきた気がしました。
「でも・・・」
平八が、言葉を続けました。
「『野郎』だなんて、可愛い女の子が言うものじゃないよ?」
「うるさいっ!!」
平八の言葉と同時に、雅が平八の背後に現れて殴りかかりました。
突然雅が現れたにも関わらず、平八は雅の拳を避けてその腕を掴み、そのまま放り投げました。
放り投げられた雅は、すぐにまた姿を消し、直後に平八の前に姿を現してその足元を掬うように蹴りを放ちました。
平八はそれを、その場でバク宙するように回転して避け、それと同時に雅の足を掴んで再び投げ飛ばしました。
それから2人は、
雅消える→現れて平八に攻撃→平八避けながら雅を投げる
を続けました。
そうしながらも平八は、
「術者の直接攻撃しかない。別空間からは、術は使えない?」
そんなことをブツブツと言いながら、雅を投げ続けました。
そして。
「よし、こんな感じかな!あれ??」
平八は、その言葉とともに、その場から姿を消しました。
先程まで2人が死闘(と呼べるかは分かりません)を繰り広げていた場には、私1人が、ポツンと取り残されてしまいました。
ここからは、後日平八から聞いた話です。
平八は、あの瞬間に雅の術を解析し終わって、試しに使ってみたそうです。
もちろん、契約などできるわけもないと思っていたようですが、雅に、『君のこの術も、力の配分わかっちゃった』と伝えるために、そうしたようです。
しかし、平八の予想に反して、彼は雅の術と契約ができてしまい、そのまま雅のように別の空間に飛ばされたようでした。
彼が気付くと、そこはそれまでいた人気の無い森などではなく、いつも平八がいた、あのお店でした。
「やっぱりこの術、使用者が別でも、同じ場所に来るのね」
店の奥から、声がしました。
平八がなんの警戒もせずに声のした方へと進むと、いつもの場所に、雅が座っていました。
「ここが、君の術による空間かい?」
平八が、雅に笑いかけました。
「前は違う風景だったんだけど。久しぶりに使ったら、何故かこうなっていたわ」
雅が、不機嫌そうに答えました。
「そんなに、私との出会いが印象的だったんだね」
茶化すように言う平八の言葉に雅は、
「そうみたいね」
と、当たり前のように呟きました。
「おや、やけに素直だね」
平八は笑いながら、彼のいつもの席へと座りました。
「「・・・・」」
お互いに向かい合うことなく隣り合って座る2人の間に、沈黙が続きました。
そう言う雅に、平八はボロボロになった筵を手放して笑いかけました。
「私は術を作るのは苦手だけど、術の解析には自信があってね。1度見た術は、大抵力の配分が分かるんだよ。でも、さすがに君の術には手こずったよ。ここまで解析に時間が掛かったのは、初めてだったよ」
「ふざけたことをっ!この猿真似野郎がっ!」
雅がそう言うと、その姿がフッと消えてしまいました。
高速で移動したのではありませんでした。
感知の得意な私でも、雅の気配を全く感じることができなかったからです。
「凄い。物質だけでなく、ヒトすらも別空間に移動することができるなんて・・・しかもその術。今までの術とは別ものだね。これはまた、解析に時間が掛かりそうだ。君は、本当に天才だな」
『あんたには言われたくないわよ!』別空間にいるはずの雅の、そんな言葉が聞こえてきた気がしました。
「でも・・・」
平八が、言葉を続けました。
「『野郎』だなんて、可愛い女の子が言うものじゃないよ?」
「うるさいっ!!」
平八の言葉と同時に、雅が平八の背後に現れて殴りかかりました。
突然雅が現れたにも関わらず、平八は雅の拳を避けてその腕を掴み、そのまま放り投げました。
放り投げられた雅は、すぐにまた姿を消し、直後に平八の前に姿を現してその足元を掬うように蹴りを放ちました。
平八はそれを、その場でバク宙するように回転して避け、それと同時に雅の足を掴んで再び投げ飛ばしました。
それから2人は、
雅消える→現れて平八に攻撃→平八避けながら雅を投げる
を続けました。
そうしながらも平八は、
「術者の直接攻撃しかない。別空間からは、術は使えない?」
そんなことをブツブツと言いながら、雅を投げ続けました。
そして。
「よし、こんな感じかな!あれ??」
平八は、その言葉とともに、その場から姿を消しました。
先程まで2人が死闘(と呼べるかは分かりません)を繰り広げていた場には、私1人が、ポツンと取り残されてしまいました。
ここからは、後日平八から聞いた話です。
平八は、あの瞬間に雅の術を解析し終わって、試しに使ってみたそうです。
もちろん、契約などできるわけもないと思っていたようですが、雅に、『君のこの術も、力の配分わかっちゃった』と伝えるために、そうしたようです。
しかし、平八の予想に反して、彼は雅の術と契約ができてしまい、そのまま雅のように別の空間に飛ばされたようでした。
彼が気付くと、そこはそれまでいた人気の無い森などではなく、いつも平八がいた、あのお店でした。
「やっぱりこの術、使用者が別でも、同じ場所に来るのね」
店の奥から、声がしました。
平八がなんの警戒もせずに声のした方へと進むと、いつもの場所に、雅が座っていました。
「ここが、君の術による空間かい?」
平八が、雅に笑いかけました。
「前は違う風景だったんだけど。久しぶりに使ったら、何故かこうなっていたわ」
雅が、不機嫌そうに答えました。
「そんなに、私との出会いが印象的だったんだね」
茶化すように言う平八の言葉に雅は、
「そうみたいね」
と、当たり前のように呟きました。
「おや、やけに素直だね」
平八は笑いながら、彼のいつもの席へと座りました。
「「・・・・」」
お互いに向かい合うことなく隣り合って座る2人の間に、沈黙が続きました。
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