おれは忍者の子孫

メバ

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外伝〜出会いの章〜

第5話:襲撃者

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雅が初めてその店に来てから、2か月が経ちました。

ある日はお互いにほとんど無言で過ごし、またある日は平八の熱い教育論を雅が否定するという日々を、2人は過ごしていました。

そして時々は、彼らのどちらかの命を狙う忍者の相手をすることもありました。

そしてその日も、私達は同時に外からの殺気を感じ取り、店の無愛想なマスターに目配せをして、外へと向かいました。

「わかってるよね?いつもどおり、私が相手をする。君は一切、手を出さないでね!」
「・・・わかったわよ」
平八の言葉に、雅はそれだけ返していました。


「甲賀平八!その命、貰い受けるっ!」
「うわぁ~。今日はまた随分と沢山いらっしゃいますね」
平八が、目の前にいる5人の黒装束の忍者達を見て言いました。

「20人ほど、ですか?」
「ぐっ。バレいたのか!」
目の前の1人が焦ったようにそう言っていましたが、バレバレでした。
気配をしっかり隠せてもいないのだから、私にだって簡単に分かりました。
彼らの練度も、確かにそれなりではありましたが、平八の相手ではないと思いました。

それでも、平八は苦笑いを浮かべて私に目を向けました。

「流石にこの人数だと、無傷は難しそうだ。シロ、手伝ってくれる?」
そう言われた私が一歩前に出ると、

「気をつけろ!やつは甲賀平八の具現獣だっ!やつもなかなかの実力者と聞く!皆、油断するな!」
そう、リーダー格の男は周りに声をかけると、苦々しそうな表情で平八を睨みつけました。

「しかし貴様。この人数を相手に、たった3人で無傷でいられると思っているのか!?」

「んー。あなた、2つ勘違いをしていらっしゃいますよ」
平八は、笑みを浮かべて言いました。

「まず1つ。我々は2人です。彼女は手を出しませんから。命が惜しければ、彼女には手を出さないことをオススメしますよ。ワリと本当に」
そう言って平八が雅の方を見ると、雅は無表情でその場に佇んでいました。

「そしてもう1つ。別に私は、自分が傷つくことなんて何とも思っていませんよ?まぁ、できればシロには傷ついて欲しくはないですけど。あ、シロというのは私の相棒なんですけどね。ほら、凄く美人でしょ?」
ニカリと笑った平八が、言葉を続けました。

「無傷で済ませたいのはあなた方のほうですよ。あなた方も、依頼を受けてここに来ているだけでしょう?
そんな人達を傷つけるのなんて、ごめんですからね」

「ちっ、舐めたことを!その言葉、後悔させてやるわっ!!」

その言葉と同時に、目の前の5人だけでなく、周りに隠れた忍者達からも一斉に殺気が放たれ、その全てが平八へと注がれました。

「さて。これはなかなか骨が折れそうだ。シロ、自分の身を守ることが最優先だからね。そのうえで、できるだけみんな傷つけないようにね。どちらが多く仕留められるか、勝負だ!」
20人からの殺気を受けてなお余裕の表情の平八が、まるで楽しい遊びが始まるように言いながら、構えました。


そして5分後


「さて、と。これで全部だね」
所々傷を負った平八が、手をはたきながら言いました。

そんな彼の足元には、簀巻き忍者20名。

そのうち9名が無傷で、11名が多少の傷を負っていました。

「うーん。僅差で負けちゃったね」
平八が、少しだけ悔しそうに私に言いました。

「何を言っているのよ。あなたがこの人達を傷つけることさえ気にしなければ、1人でどうとでもなったでしょう?」
傷を負った平八を心配しながら、私は彼に言いました。

「それを言われると返す言葉もないけど・・・シロは、わかってくれるだろ?」
平八は、そう言いながら全ての傷をまたたく間に治癒の術で治していきました。

自身の傷だけでなく、私が傷つけた忍者達の分まで。

「まったく。あなたにそう言われたら何も返せないじゃない。あなたは卑怯なのよ」
私は、拗ねて平八にそう返しました。

「いつも苦労かけて、悪いね」
平八は私に笑いかけた後、雅へと目を向けました。

「君は―――大丈夫みたいだね」
無表情のまま佇んでいる雅を確認した平八は、そう言うと唯一意識を失っていない忍者へと近づいていきました。

「あなた方は、誰から依頼されたのかな?」
「ぐっ。そのようなこと、言えるわけないであろう!」

「では、質問を変えましょう。あなた方の師は、どなたですか?」
「・・・・・・」

「返答なし、ですか。この2か月ほど、何度か私の命を狙う人たちが現われました。彼らの動きから察するにおそらく、風魔家と伊賀家の方の弟子でしょう。
しかしその彼らとあなた方では、動きの質が違うのですよ。ここにいる皆さんは、同じ忍者に師事しているのではないですか?
そして今回の襲撃は、その師からの依頼なのではないですか?」

「・・・・」
「お答えいただけませんか。まぁそうですよね。ではあなた方は、協会に連行―――」
突然、平八はその場で身を翻しました。

その平八の頬には、一筋の血が流れていました。
そしてその背後の木には、1つの手裏剣が刺さっていました。

「一体どこから!?いいえ、誰がやったの!?この人たちは全員、平八の術で力が使えないはずよ!?」
力の感知に自信のあった私が気付けなかった突然の攻撃に、私は大声をあげてしまいました。

しかし平八は、少しも驚いた様子もなく、しかしどこか寂しそうな表情を浮かべて、ある一点を見て言いました。

「やはり、私の命を諦めてはくれないんだね。残念だよ。君とは仲良くなれると思ったんだけどな」

平八の視線の先にいる天才美少女と呼ばれている彼女は、ただ無表情のまま、平八を見つめ返していました。
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