おれは忍者の子孫

メバ

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外伝〜出会いの章〜

第3話:きれいな手

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店から出た平八と私が、人気の無い場所へと入って行くと、黒装束の男が1人、現れました。

「甲賀平八!訳あってその命、頂戴する!」

平八の目の前の黒装束の男が、そう叫びました。

「いや、同じ忍者として言わせてもらいますけど、私の命狙ってるなら、そんな正面から正々堂々言わなくても、裏でどうとでも出来るんじゃないですか?」

「う、うるさいっ!お前の実力はこちらの調べでわかっている!どう頑張っても、お前には気付かれそうだったのだ!」

「そんなに自信満々に言わなくても・・・
こんなとこ、普通の人たちに見られたらどうするんです?せっかくこれまでひた隠しにされていた我々の存在が、公になってしまうんですよ?」

「知らぬ!それで我が忍者でなくなるわけではなし!えぇい!噂通り、話を逸らすのも上手いな!甲賀平八!勝てる気はせぬが、尋常に勝負だっ!」

「まったく。勝てる気がしないのに、なんで依頼受けちゃったんですか」
「払いが良かったのだ!それに我々契約忍者は、こうして実績を出さねば、使われなくなってしまう!そうすれば、妻と子ども達を養うことができぬのだっ!」

「どうしてこうも、忍者の皆さんは他に手に職を持とうとしないんですか。いざとなったとき、他にも職を持つと、色々と便利ですよ?かく言う私も、教師を目指していてですね―――」
「えぇい!まだ話を逸らすかっ!もう良い!お主と話しているとどうにも落ち着いてしまう!いざ、ゆくぞっ!」

男は無理矢理に気持ちを高ぶらせて、平八へと向かっていきました。

「はぁ~。わかりましたよ。お相手させていただきますよ」


一分後

「まったく。こんな若輩者に簡単に負けないでくださいよ。もっと努力して、実力をつけてからまた来てくださいね」
平八が手をはたきながら、足元で簀巻き状態の男に笑顔を向けていると。

「ふん。少しはやるようね」
その言葉とともに、雅が暗闇から姿を現しました。
その手には、ボコボコにされた黒装束の忍者が無造作に掴まれていました。

雅はその忍者を平八の足元へと放り投げて言いました。

「どうやらこいつ、あんたが簀巻きにした男を囮にしてあんたのこと狙ってたみたいね」
「おや?助けてくれたのかい?」

「白々しい。どうせ気づいていたんでしょ?」
「はは。バレてたか」

「で、どうすんの?こいつらあんたのこと殺そうとしてたんでしょ?ここで殺すの?」
「物騒だなぁ。そんなことしないよ。この人たちへの罰は、依頼者がやるでしょ。私はただ、このまま協会に彼らを届けるだけさ」

「ぬるいことするのね」
「私はね、無駄に人を傷付けるのが嫌いなんだよ。特に、依頼なんかで縛られてしまっている人なんかはね。
というか、君の方こそちょっとやりすぎじゃない?」
平八がそう言って、放り投げられた男に目を向けました。

男は手足の全てがおかしな方向に曲がり、体のいたるところから血を流していました。

「あたしに歯向かおうとしたから、こうなったのよ」
雅はそう言って、血まみれの男を一瞥しました。

その時。

「雑賀雅、死ねぇっ!!」
突然そんな声がしました。

気付いた時にはその声の方向へ平八が走り出し、声を上げた忍者が振り下ろす刀から、雅を庇っていました。

「ぐっ」
背を切りつけられた平八は、声を漏らしながらも男に向き直り、またたく間にその男も簀巻きにしてしまいました。

「あんた馬鹿なの!?こんな奴、あたしひとりでどうとでもできるわよ!」
「いてててて。わかってはいるんだけどさ。でも君、今この人を殺そうとしたでしょ?」
平八は、自身の背に治癒の術をかけながら雅に目を向けました。

「あたしの命を狙っていたのよ!?殺して当然でしょう!?」
「いや、そんな獣みたいな理論で・・・ちなみに君、殺しの経験は?」

「な、無いわよ。まだ、ね!今までコソコソと命を狙われたことはあるけど、ここまであからさまに狙われたのは初めてだったからね」
雅は、バツが悪そうにそう言いました。

「よかった」
雅の言葉に、平八は満面の笑みを浮かべました。

「だったら、君の事は私が守るよ」

「はぁ!?何言ってんのよあんた!」
「何って、そのままの意味だよ。このままじゃ君の手が、血で汚れてしまう。こんな綺麗な手、血でなんか絶対に汚したくないんだよ」
そう言って笑う平八は、雅の手を握りました。

私の手ですら、握ってくれたことなんかないのに。

「そもそもあたしは、誰にも負ける気なんか無いのよ!一体何から守るっていうのよ!?」
平八から手を握られた雅は、少し顔を赤らめて平八の手を振り払いました。

なんて罰当たりなガキなんだろう、と、私は思いました。

「何って・・・悪しき伝統から、かな?」

「っ!?訳がわからない!もういい!あたし帰るわっ!」

雅はそう言って、その場を去っていきました。


「流石に、今のはちょっとクサかったかな?どう思う、シロ?」

「知らないわよ、そんなの」

私はただ、不機嫌にそう答えることしかできませんでした。
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