186 / 519
彼らの日常と蠢く影
第178話:ダメ、絶対
しおりを挟む
「うぉーーーーーーっ!!!!」
恒久が『青忍者育成契約』による吊し上げにあった翌日。
夏休みでまだ人気の少ない校内に、恒久の悲痛な叫びがこだましていた。
「ふぅん。そんなことがあったのね」
茜から前日の騒動の経緯を聞いた麻耶が、呆れ顔で茜の話を聞いていた。
「本当よね。キャンプの帰りにあれだけの目に会ったばかりだっていうのに」
茜も、麻耶に賛同するように頷いていた。
「うぉーーーーーーっ!!!!」
「あーもう!うっさいわねぇ。それで、その話とこの叫び声、どう関係があるの?」
「なんか、自分で自分に罰を課してるみたい」
そう言って茜は、図書室の間取から見えるトレーニングルームに目を落としていた。
「いい!恒久君凄く良いわっ!!やっぱりあなたは、我が陸上部に必要な人材よっ!!そうでしょ!?野郎どもっ!!」
「恒久!キテるか!?キテるのか!?」
「いいぞ!恒久っ!!筋肉はトモダチだっ!!」
「鍛えろっ!!そして徹底的に自分をいじめ抜けっ!」
「そうだ!その先に、違う世界が見えてくるぞっ!!」
「あぁー、このしなやかな体っ!食べてしまいたいぞっ!!」
「あんたら、うるせーぞっ!!おれはただ、ここでトレーニングしてるだけなんだよっ!陸上部なんかに、入部はしねーよっ!
だから、だから・・・
頼むから皆さん、離れてトレーニングしてくれよっ!!!!」
「「「「「「筋肉はトモダチっ!!」」」」」」
「いやだから、意味わかんねーって!!」
現在恒久は、よっちゃん率いる陸上部の皆さんと一緒に、仲良くトレーニング中なのである。
何故か、屈強な皆さんがゼロ距離で密集している中で。
前日のチーノの話を聞いた茜がボソリと呟いた一言に恐怖した恒久は、その日の夜、必死になって考えた。
どうすれば、自身の罪を償えるのか、と。
そして考えた末に出た結果が、これである。
名付けて『真(リアル)よっちゃんの刑(重清命名)』である。
よっちゃん率いる陸上部と共に、(物理的に)揉まれながらひたすらトレーニングで自身をいじめ抜く。
身体的にも、精神的にも。
恒久の決意を聞いた男子一同は、全員が漏れなく心の中で、恒久を賞賛した。
よくぞ決断した、と。
そしてそれは、茜と麻耶も同様であった。
「まぁ一応、反省はしてるみたいね」
「まぁ、一応はね。麻耶、あのバカのこと、許してくれる?」
「私は別にいいんだけどね。茜はいいの?」
「ん~、まだ腹が立つには立つんだけど、あそこまでさせたら、ね」
「じゃぁ今回は、これで許してやるか。でも次にこんなことがあったら・・・」
「もちろん、ただじゃおかないわよね」
茜の言葉に、2人はニヤリと笑うのであった。
そんな2人が忍者部の部室へと入っていくと。
「っしゃぁーー!今日こそ新しい術覚えるぞーっ!!」
重清が、1人意気込んでいた。
「・・・こっちはこっちで、相変わらずバカみたいに元気ね」
麻耶が!呆れたように重清に目を向けた。
「あっ、麻耶姉ちゃん!ツネは??」
「あいつなら、あんたの言う『真よっちゃんの刑』の真っ最中よ。今日は、こっちには来ないんじゃないかしら?」
麻耶に代わって答えるアカの言葉に、重清は笑って、
「ツネも大変だなぁ」
と、呑気なことを言っていた。
「言っとくけどねぇ」
麻耶が、そんか重清を睨む。
「あんた達だって、次に覗きなんて真似をしようもんなら、あんなんじゃすまないんだからね!?
わかってんの!?ショウ以外の男子っ!!」
「「「「「イエッサァーーー!!!」」」」」
ショウ以外の男子が、揃って麻耶に向けて直立した。
「っと。バカどもに釘を刺したところで、今日も修行修行っと。茜、たまには私の相手をしてくれない?」
「よーし!みーちゃんとの修行の成果を、見せてあげるわっ!」
そう言いながら、2人は扉を開けて、森の中へと進んでいった。
「・・・さて、僕らも修行、頑張ろうかー。」
そんな2人の後ろ姿を見ていた、唯一そのまま座っていたショウがそう言って、一同は直立を崩して各々が森へと進んでいった。
「重清、さっきの術のことなんだけど・・・」
ソウと並んで森へと進む重清の背に、チーノ声をかけた。
「ん?」
「新しい術、そろそろ私が教えましょうか?」
「んー。いや、やめておくよ。どうせだったら、自分の力でやってみたいし。
あ、あと、さっきはあぁ言ったけど、修行はこれまで通り、力の使い方を、中心にお願い!」
「あら、それでいいの?今あなたが目指している術は、『男の夢』ではなかったの?」
「まぁ、それはそれ。まずは、基礎をしっかりと、だ。大将のじいちゃんも言ってたしね」
「まったく。自分を襲ってきた相手の言いつけを守るなんて。あなた、それでいいの?」
「良いも何も、おかしなことは言ってないからね。おれが納得してんだから、それでいいんだよ!なんとなく、じいちゃんが生きてても、同じ事を言いそうな気もするし」
「まぁ、平八なら、言いそうではあるわね」
「だろ?ってことで、今日もよろしく!」
「オイラ達のご主人様は、やっぱり意外とちゃんと考えてるんだよな~」
「この子の具現獣で、良かったでしょう?」
「まぁ、な。あいつといると、退屈はしねーな」
「まったく、素直じゃないんだから」
「おーい、チーノ!プレッソ!早く行くぞー!」
「ご主人様が呼んでいるわよ?」
「はいはい。わーってるよ重清っ!いちいち大声で呼んでんじゃねーよっ!!」
こうして彼らは、今日もまた修行に明け暮れるのであった。
「うぉーーーーーーっ!!!!」
そして、忘れちゃいけない恒久もまた、筋肉とオトモダチになるべく、頑張るのであった。
「あぁーーーっ!!覗き、ダメ!絶対っ!!!」
恒久が『青忍者育成契約』による吊し上げにあった翌日。
夏休みでまだ人気の少ない校内に、恒久の悲痛な叫びがこだましていた。
「ふぅん。そんなことがあったのね」
茜から前日の騒動の経緯を聞いた麻耶が、呆れ顔で茜の話を聞いていた。
「本当よね。キャンプの帰りにあれだけの目に会ったばかりだっていうのに」
茜も、麻耶に賛同するように頷いていた。
「うぉーーーーーーっ!!!!」
「あーもう!うっさいわねぇ。それで、その話とこの叫び声、どう関係があるの?」
「なんか、自分で自分に罰を課してるみたい」
そう言って茜は、図書室の間取から見えるトレーニングルームに目を落としていた。
「いい!恒久君凄く良いわっ!!やっぱりあなたは、我が陸上部に必要な人材よっ!!そうでしょ!?野郎どもっ!!」
「恒久!キテるか!?キテるのか!?」
「いいぞ!恒久っ!!筋肉はトモダチだっ!!」
「鍛えろっ!!そして徹底的に自分をいじめ抜けっ!」
「そうだ!その先に、違う世界が見えてくるぞっ!!」
「あぁー、このしなやかな体っ!食べてしまいたいぞっ!!」
「あんたら、うるせーぞっ!!おれはただ、ここでトレーニングしてるだけなんだよっ!陸上部なんかに、入部はしねーよっ!
だから、だから・・・
頼むから皆さん、離れてトレーニングしてくれよっ!!!!」
「「「「「「筋肉はトモダチっ!!」」」」」」
「いやだから、意味わかんねーって!!」
現在恒久は、よっちゃん率いる陸上部の皆さんと一緒に、仲良くトレーニング中なのである。
何故か、屈強な皆さんがゼロ距離で密集している中で。
前日のチーノの話を聞いた茜がボソリと呟いた一言に恐怖した恒久は、その日の夜、必死になって考えた。
どうすれば、自身の罪を償えるのか、と。
そして考えた末に出た結果が、これである。
名付けて『真(リアル)よっちゃんの刑(重清命名)』である。
よっちゃん率いる陸上部と共に、(物理的に)揉まれながらひたすらトレーニングで自身をいじめ抜く。
身体的にも、精神的にも。
恒久の決意を聞いた男子一同は、全員が漏れなく心の中で、恒久を賞賛した。
よくぞ決断した、と。
そしてそれは、茜と麻耶も同様であった。
「まぁ一応、反省はしてるみたいね」
「まぁ、一応はね。麻耶、あのバカのこと、許してくれる?」
「私は別にいいんだけどね。茜はいいの?」
「ん~、まだ腹が立つには立つんだけど、あそこまでさせたら、ね」
「じゃぁ今回は、これで許してやるか。でも次にこんなことがあったら・・・」
「もちろん、ただじゃおかないわよね」
茜の言葉に、2人はニヤリと笑うのであった。
そんな2人が忍者部の部室へと入っていくと。
「っしゃぁーー!今日こそ新しい術覚えるぞーっ!!」
重清が、1人意気込んでいた。
「・・・こっちはこっちで、相変わらずバカみたいに元気ね」
麻耶が!呆れたように重清に目を向けた。
「あっ、麻耶姉ちゃん!ツネは??」
「あいつなら、あんたの言う『真よっちゃんの刑』の真っ最中よ。今日は、こっちには来ないんじゃないかしら?」
麻耶に代わって答えるアカの言葉に、重清は笑って、
「ツネも大変だなぁ」
と、呑気なことを言っていた。
「言っとくけどねぇ」
麻耶が、そんか重清を睨む。
「あんた達だって、次に覗きなんて真似をしようもんなら、あんなんじゃすまないんだからね!?
わかってんの!?ショウ以外の男子っ!!」
「「「「「イエッサァーーー!!!」」」」」
ショウ以外の男子が、揃って麻耶に向けて直立した。
「っと。バカどもに釘を刺したところで、今日も修行修行っと。茜、たまには私の相手をしてくれない?」
「よーし!みーちゃんとの修行の成果を、見せてあげるわっ!」
そう言いながら、2人は扉を開けて、森の中へと進んでいった。
「・・・さて、僕らも修行、頑張ろうかー。」
そんな2人の後ろ姿を見ていた、唯一そのまま座っていたショウがそう言って、一同は直立を崩して各々が森へと進んでいった。
「重清、さっきの術のことなんだけど・・・」
ソウと並んで森へと進む重清の背に、チーノ声をかけた。
「ん?」
「新しい術、そろそろ私が教えましょうか?」
「んー。いや、やめておくよ。どうせだったら、自分の力でやってみたいし。
あ、あと、さっきはあぁ言ったけど、修行はこれまで通り、力の使い方を、中心にお願い!」
「あら、それでいいの?今あなたが目指している術は、『男の夢』ではなかったの?」
「まぁ、それはそれ。まずは、基礎をしっかりと、だ。大将のじいちゃんも言ってたしね」
「まったく。自分を襲ってきた相手の言いつけを守るなんて。あなた、それでいいの?」
「良いも何も、おかしなことは言ってないからね。おれが納得してんだから、それでいいんだよ!なんとなく、じいちゃんが生きてても、同じ事を言いそうな気もするし」
「まぁ、平八なら、言いそうではあるわね」
「だろ?ってことで、今日もよろしく!」
「オイラ達のご主人様は、やっぱり意外とちゃんと考えてるんだよな~」
「この子の具現獣で、良かったでしょう?」
「まぁ、な。あいつといると、退屈はしねーな」
「まったく、素直じゃないんだから」
「おーい、チーノ!プレッソ!早く行くぞー!」
「ご主人様が呼んでいるわよ?」
「はいはい。わーってるよ重清っ!いちいち大声で呼んでんじゃねーよっ!!」
こうして彼らは、今日もまた修行に明け暮れるのであった。
「うぉーーーーーーっ!!!!」
そして、忘れちゃいけない恒久もまた、筋肉とオトモダチになるべく、頑張るのであった。
「あぁーーーっ!!覗き、ダメ!絶対っ!!!」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる