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彼らの日常と蠢く影
第173話:襲撃ヒアリング その5(襲撃者サイド)
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重清達が『中央公園』にて襲撃のヒアリングを受けていたのと同じ頃、とある一室で、同様のヒアリングが行われていた。
「して、グリ。今回の件、どういうことかな?」
厳つい老人が、チャイナ服の妖艶な女――グリ――を見据えて、呟くように言った。
「ゴウ様、も、申し訳ございません!ワタシはただ、ゴウ様が気にかけていらっしゃる重清と言う子のことが気になって!!」
「で、見に行った、と。おかしいな。見に行っただけで、何故お主はあのチーノとか言う具現獣にやられておるのだ?」
「そ、それは・・・」
「申し訳ございません、親父殿。私がグリを止めていれば・・・」
「確かに、ドウの言葉ならばグリも聞いたやもしれん。が、今はお前には聞いていないぞ?」
「は、失礼いたしました。」
「それでグリ、何か言い訳はあるのかな?」
「い、いえ、何も。どんな罰も受けます!脱げと言われれば、今すぐ脱ぎますっ!!」
「いやそれ、絶対グリさんにとってはご褒美でしょ~」
ユキが、呆れたようにそう言って笑っていた。
「脱がれても困るわ。まぁ、今回の件は不問とするつもりだったから良いのだが。」
「え!?なんでですか!?脱がせてくださいよっ!!私の裸、見てくださいよっ!!!」
「まったく。罰を受けたがるものがあるか。そりゃ罰じゃないわ。」
ゴウと呼ばれた老人が、グリの言葉にユキ同様の呆れ顔を浮かべる。
「儂も、雑賀重清は一目見たかったからな。今回のことは良いきっかけではあったわ。」
「しかし、親父殿まで出てよろしかったのですか?」
「まぁ、大丈夫であろう。幸い、シロ、ではなく今はチーノだったか?あれにも会わずに済んだからな。」
「ゴウ様、あのエロ猫と面識があるんですか!?まさかあのエロ猫に、唾をつけられたんですか!?」
グリが、取り乱してゴウに駆け寄った。
「何を言いたいのかわからんが、あやつと会うたのは大昔に一度だけだ。今対面したとて、儂のことを覚えておるとも限らん。」
ゴウは、そう言って寂しそうに笑っていた。
(あの表情!!やっぱりあのエロ猫と何かあったんだわ!!!あのエロ猫め!アタシのゴウ様を~~~!)
グリは、そんなゴウを見て1人嫉妬に燃えていた。
そんなグリの様子に気づいたゴウは、グリに目を向ける。
「グリ、あのチーノという具現獣には、余計な手出しはするなよ。」
「なっ!!やっぱりゴウ様、あのエロ猫と!!」
「馬鹿者。勘違いするな。今のお前では、あやつに勝てんから言うておるのだ。例え力を使ったとしても、な。」
「あの具現獣の力、それほどのものなのですか?」
ドウが、驚きに少しだけ表情を動かした。
「思い返すと、儂が会うた当時でも、あやつは他の具現獣から頭一つ抜きんでておった。それから何十年たっておると思う。
まぁ、唯一の救いは、一度力を失っておることか。」
「でもぉ、それでもグリさんには勝ってたよ~」
ユキが、ゴウの言葉にそう言うと、グリはキッとユキを睨んだ。
「グリ、そう怒るな。お前が負けたのは事実なのだ。しかしあやつは、一度力を失ったことで、忍力の許容量が大幅に少なくなっておる。
ユキが一度、あやつに勝てたのはそのお陰だろう。」
「なるほど、許容量が少ないからこそ、彼らにとっての空腹は命取りになる、と。」
「そういうことだ。まぁ、今後はあやつもその辺の対策を講じてくる可能性があるからな。
ユキ、次にあやつと対峙しても、決して油断するなよ。」
「なーんだぁ、やっぱりそういうことだったのかぁ。せっかく、グリさんより優位に立てたと思ったのにぃ。」
「ちょっとユキ!あんたそんなこと考えてたの!?」
「グリ、そう目くじらを立てるな。ユキもグリを挑発するでない。とにかく、この件はこれで終いだ。」
ゴウの言葉に、グリとユキ、そしてドウが頷いた。
「話は変わるがグリ。伊賀の者に負けたお前の弟子の様子はどうだ?」
「ヒトのことですか?アイツなら、中学生に負けたからって、死ぬ気で修行しています。」
「それはなによりだ。ユキの弟子はどうだ?」
「僕の見つけた弟子は優秀だからねぇ。素質だけなら、雑賀重清なんかとは比べ物にならないよぉ。」
「ふむ。あいつらは儂らの大事な駒だ。しっかりと育てておけよ。して、ドウ。お前は今、弟子がおらんかったな?」
「はい。以前の失態で契約を破棄してからは。」
「そうであったな。グリ、ユキ、お前らも、弟子には不殺を叩きこんでおけ。
次に殺しが起きたら、お前たちであっても罰するつもりだからな。」
「親父殿。何故そこまで殺しを否定するのですか?」
「・・・これは儂の意地なのだ。我々の目的は、殺しではないのだからな。」
「それはそうなのですが・・・しかし、その選択肢があるだけで、我々ももう少し動きやすくなるのですが・・・」
「くどい。このことは、何度も言うておる。曲げるつもりはない。」
「かしこまりました。」
「話しが逸れたな。ドウ、1人、駒の候補がおったな。そやつの様子はどうだ?」
「一応探ってはみましたが、それほどの力は持っていなかったようです。しかし・・・」
「どうした?」
「雑賀重清とは、少なからぬ縁の有る者ではあるようです。」
「ほう、それは面白い。ドウ、そやつをお前の弟子に迎え入れておけ。」
「良いのですか?以前の小松の件で、力のない者は駒としない方針にされたのでは?」
「力はなくとも、縁があれば使いようはある。どちらにしても、駒に変わりはないがな。」
ゴウは、そう言ってただ笑うのであった。
「して、グリ。今回の件、どういうことかな?」
厳つい老人が、チャイナ服の妖艶な女――グリ――を見据えて、呟くように言った。
「ゴウ様、も、申し訳ございません!ワタシはただ、ゴウ様が気にかけていらっしゃる重清と言う子のことが気になって!!」
「で、見に行った、と。おかしいな。見に行っただけで、何故お主はあのチーノとか言う具現獣にやられておるのだ?」
「そ、それは・・・」
「申し訳ございません、親父殿。私がグリを止めていれば・・・」
「確かに、ドウの言葉ならばグリも聞いたやもしれん。が、今はお前には聞いていないぞ?」
「は、失礼いたしました。」
「それでグリ、何か言い訳はあるのかな?」
「い、いえ、何も。どんな罰も受けます!脱げと言われれば、今すぐ脱ぎますっ!!」
「いやそれ、絶対グリさんにとってはご褒美でしょ~」
ユキが、呆れたようにそう言って笑っていた。
「脱がれても困るわ。まぁ、今回の件は不問とするつもりだったから良いのだが。」
「え!?なんでですか!?脱がせてくださいよっ!!私の裸、見てくださいよっ!!!」
「まったく。罰を受けたがるものがあるか。そりゃ罰じゃないわ。」
ゴウと呼ばれた老人が、グリの言葉にユキ同様の呆れ顔を浮かべる。
「儂も、雑賀重清は一目見たかったからな。今回のことは良いきっかけではあったわ。」
「しかし、親父殿まで出てよろしかったのですか?」
「まぁ、大丈夫であろう。幸い、シロ、ではなく今はチーノだったか?あれにも会わずに済んだからな。」
「ゴウ様、あのエロ猫と面識があるんですか!?まさかあのエロ猫に、唾をつけられたんですか!?」
グリが、取り乱してゴウに駆け寄った。
「何を言いたいのかわからんが、あやつと会うたのは大昔に一度だけだ。今対面したとて、儂のことを覚えておるとも限らん。」
ゴウは、そう言って寂しそうに笑っていた。
(あの表情!!やっぱりあのエロ猫と何かあったんだわ!!!あのエロ猫め!アタシのゴウ様を~~~!)
グリは、そんなゴウを見て1人嫉妬に燃えていた。
そんなグリの様子に気づいたゴウは、グリに目を向ける。
「グリ、あのチーノという具現獣には、余計な手出しはするなよ。」
「なっ!!やっぱりゴウ様、あのエロ猫と!!」
「馬鹿者。勘違いするな。今のお前では、あやつに勝てんから言うておるのだ。例え力を使ったとしても、な。」
「あの具現獣の力、それほどのものなのですか?」
ドウが、驚きに少しだけ表情を動かした。
「思い返すと、儂が会うた当時でも、あやつは他の具現獣から頭一つ抜きんでておった。それから何十年たっておると思う。
まぁ、唯一の救いは、一度力を失っておることか。」
「でもぉ、それでもグリさんには勝ってたよ~」
ユキが、ゴウの言葉にそう言うと、グリはキッとユキを睨んだ。
「グリ、そう怒るな。お前が負けたのは事実なのだ。しかしあやつは、一度力を失ったことで、忍力の許容量が大幅に少なくなっておる。
ユキが一度、あやつに勝てたのはそのお陰だろう。」
「なるほど、許容量が少ないからこそ、彼らにとっての空腹は命取りになる、と。」
「そういうことだ。まぁ、今後はあやつもその辺の対策を講じてくる可能性があるからな。
ユキ、次にあやつと対峙しても、決して油断するなよ。」
「なーんだぁ、やっぱりそういうことだったのかぁ。せっかく、グリさんより優位に立てたと思ったのにぃ。」
「ちょっとユキ!あんたそんなこと考えてたの!?」
「グリ、そう目くじらを立てるな。ユキもグリを挑発するでない。とにかく、この件はこれで終いだ。」
ゴウの言葉に、グリとユキ、そしてドウが頷いた。
「話は変わるがグリ。伊賀の者に負けたお前の弟子の様子はどうだ?」
「ヒトのことですか?アイツなら、中学生に負けたからって、死ぬ気で修行しています。」
「それはなによりだ。ユキの弟子はどうだ?」
「僕の見つけた弟子は優秀だからねぇ。素質だけなら、雑賀重清なんかとは比べ物にならないよぉ。」
「ふむ。あいつらは儂らの大事な駒だ。しっかりと育てておけよ。して、ドウ。お前は今、弟子がおらんかったな?」
「はい。以前の失態で契約を破棄してからは。」
「そうであったな。グリ、ユキ、お前らも、弟子には不殺を叩きこんでおけ。
次に殺しが起きたら、お前たちであっても罰するつもりだからな。」
「親父殿。何故そこまで殺しを否定するのですか?」
「・・・これは儂の意地なのだ。我々の目的は、殺しではないのだからな。」
「それはそうなのですが・・・しかし、その選択肢があるだけで、我々ももう少し動きやすくなるのですが・・・」
「くどい。このことは、何度も言うておる。曲げるつもりはない。」
「かしこまりました。」
「話しが逸れたな。ドウ、1人、駒の候補がおったな。そやつの様子はどうだ?」
「一応探ってはみましたが、それほどの力は持っていなかったようです。しかし・・・」
「どうした?」
「雑賀重清とは、少なからぬ縁の有る者ではあるようです。」
「ほう、それは面白い。ドウ、そやつをお前の弟子に迎え入れておけ。」
「良いのですか?以前の小松の件で、力のない者は駒としない方針にされたのでは?」
「力はなくとも、縁があれば使いようはある。どちらにしても、駒に変わりはないがな。」
ゴウは、そう言ってただ笑うのであった。
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