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彼らの日常と蠢く影
第171話:襲撃ヒアリング その3
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重清の突然の宣言にチーノが焦っていると、重清は恥ずかしそうに頬をかく。
「あのグリって人倒したの、チーノだろ?大将のじいちゃんが言ってたんだよ。チーノは力の使い方に長けてる、って。おれさ、今回ホントに何も出来なかった。
まぁ、落ち込んでたら思いっきり大将のじいちゃんに怒られたんだけどさ。
でも、今のままだとおれ、『全てを守る』ことなんて絶対に出来そうもない。
だから頼むよチーノ!おれに力の使い方を教えてくれよっ!!」
「そ、そんなこと、急に言われても・・・」
頭を下げる重清に、チーノが戸惑っていると、雅が笑い出した。
「はっはっは!具現獣に師事を仰ぐとはねぇ。でも確かに、チーノの力の使い方は、他の具現獣だけでなく、その辺の忍者とも比べものにならないほどだ。
力の使い方を習うなら、うってつけの師だね。チーノ、私からも頼むよ。
どうかこの子に、力の使い方を教えてやってくれ。」
そう言って、雅もチーノに頭を下げた。
「ちょ、雅までっ!・・・もう!わかったわよ!教えてあげるわよっ!だから2人とも、頭を上げてちょうだいっ!!」
こうして、具現獣と具現者という異色の師弟が、ここに結成されたのであった。
「でも、重清。1つ条件があるわ。」
「わかった!普段はチーノのこと、『おばあちゃん』って呼べばいいんでしょ!」
「ぶっ!!!」
重清の言葉に、その場の殆どの者が吹き出した。
雅とノリ、そしてプレッソは、チーノをおばあちゃん呼ばわりしたことに。
それ以外の者は、オウの件を思い出して。
ただ1人、オウだけは、
「重清殿、君まで・・・」
そう言ってしょげていた。
「あら、私に何も教えてほしくはないみたいね。」
「すいやせんしたっ!!」
重清の言葉に拗ねたようにそう言ったチーノに、重清はすかさず頭を下げた。
「まったく、失礼しちゃうわ。こんなに若いのに。」
そう言って智乃へと姿を変えるチーノ。
「でも実年齢ババアじゃん。」
「ノリ、何か言ったかしら?」
「すいやせんしたっ!!」
幼女へと頭を下げるノリ。
「女性にあんなこと言うなんて、さいてー。」
「ほんと、麻耶の言うとおりよ。ノリさん、さいてー。」
女子ズが非難がましくノリを睨んでいると、
「しかし、チーノは雅様とほとんど変わらないくらい生きてるんだぞ!?」
「ほぉ。ノリや、ということは、あたしもその『ババア』ってことかい?」
「あ。」
完全に墓穴を掘ったノリは、ただもう埋められるのを待つばかりなのである。
「あーあ。ノリさん、『よっちゃんの刑』決定。」
重清の哀れんだ声に追随するように、『よっちゃんの刑』被害者達が、一様に手を合わせて拝んでいた。
「ノリ。帰りの車、気をつけて帰るんだよ。」
雅が笑ってそう言うと、ノリはただ、その場に泣き崩れるのであった。
「もう!重清のせいで話が変な方向にいっちゃったじゃない!ノリを見なさい!あれは、あなたの言葉が引き起こしたことなのよ!!」
智乃が呆れたように重清を諭すと、
「いや、あれはノリさんの自爆でしょ。そんなことよりチーノ、じゃなくて今は智乃、か。結局条件ってなんなのさ?」
泣き崩れる教師をそんなこと呼ばわりして、重清は智乃に笑いかける。
「まったく。あなたはつくづく平八の孫ね。」
そう呟いた智乃は、重清に向かい合う。
「私の条件はね、今まで通り接すること、よ。」
「え!?これだけ引っ張っておいて、それだけ!?」
「あなたねぇ、誰のせいでここまで引っ張ることになったと思っているのよ?」
「誰って、ノリさんでしょ?」
「はぁ。わかった、あんたはねぇ!平八よりもたちが悪いわ!平八は、脱線癖をちゃんと理解してたけど、あんたはちっともそれが分かってないのよっ!」
「そんなの知らねーよ!おれはおれで、じいちゃんじゃない!じいちゃんと比べるなよっ!!」
「っ!?なにを・・・」
「そこまでだよ。」
重清と智乃の言い合いに、雅が割って入る。
「智乃、今のはあんたも悪い。ちゃんと、この子を見てやってくれ。」
「そ、そんなの、わかってるわよっ!」
「重清、あんたもあんただよ。確かに、そこで泣き崩れているバカは本人の責任だ。でもね、あんたも少しは自分の脱線癖をちゃんと理解しな。
別に、それが悪いってわけじゃないんだ。あんたのじいさんから受け継いだ、大切なもんなんだから。
だからこそ、ちゃんとその癖と向き合いな。」
「わ、わかったよ。智乃、ごめん。言い過ぎた。」
「いえ、私こそ、大人気なかったわ。」
「まぁ、智乃は今、子どもだけどな。あっ、こういうところか。」
「ふふふ。ええ、そういうところよ。」
「どうやら仲直り出来たみたいだね。」
「ええ。雅も、ありがとうね。」
「あんたに礼を言われるなんざ、むず痒くなるね。」
「あら、失礼なババアね。」
「あんたに言われたくはないさ。」
そう言って婆さん達が笑いあっていると、重清が智乃の顔を覗き込む。
「えっと、智乃。とりあえずさっきの条件、おれはいいんだけど、それでいいの?」
「ええ。師匠ってガラでもないし、今まで通りでお願い。」
「りょーかい!」
重清が笑って智乃に、返すのであった。
「あのグリって人倒したの、チーノだろ?大将のじいちゃんが言ってたんだよ。チーノは力の使い方に長けてる、って。おれさ、今回ホントに何も出来なかった。
まぁ、落ち込んでたら思いっきり大将のじいちゃんに怒られたんだけどさ。
でも、今のままだとおれ、『全てを守る』ことなんて絶対に出来そうもない。
だから頼むよチーノ!おれに力の使い方を教えてくれよっ!!」
「そ、そんなこと、急に言われても・・・」
頭を下げる重清に、チーノが戸惑っていると、雅が笑い出した。
「はっはっは!具現獣に師事を仰ぐとはねぇ。でも確かに、チーノの力の使い方は、他の具現獣だけでなく、その辺の忍者とも比べものにならないほどだ。
力の使い方を習うなら、うってつけの師だね。チーノ、私からも頼むよ。
どうかこの子に、力の使い方を教えてやってくれ。」
そう言って、雅もチーノに頭を下げた。
「ちょ、雅までっ!・・・もう!わかったわよ!教えてあげるわよっ!だから2人とも、頭を上げてちょうだいっ!!」
こうして、具現獣と具現者という異色の師弟が、ここに結成されたのであった。
「でも、重清。1つ条件があるわ。」
「わかった!普段はチーノのこと、『おばあちゃん』って呼べばいいんでしょ!」
「ぶっ!!!」
重清の言葉に、その場の殆どの者が吹き出した。
雅とノリ、そしてプレッソは、チーノをおばあちゃん呼ばわりしたことに。
それ以外の者は、オウの件を思い出して。
ただ1人、オウだけは、
「重清殿、君まで・・・」
そう言ってしょげていた。
「あら、私に何も教えてほしくはないみたいね。」
「すいやせんしたっ!!」
重清の言葉に拗ねたようにそう言ったチーノに、重清はすかさず頭を下げた。
「まったく、失礼しちゃうわ。こんなに若いのに。」
そう言って智乃へと姿を変えるチーノ。
「でも実年齢ババアじゃん。」
「ノリ、何か言ったかしら?」
「すいやせんしたっ!!」
幼女へと頭を下げるノリ。
「女性にあんなこと言うなんて、さいてー。」
「ほんと、麻耶の言うとおりよ。ノリさん、さいてー。」
女子ズが非難がましくノリを睨んでいると、
「しかし、チーノは雅様とほとんど変わらないくらい生きてるんだぞ!?」
「ほぉ。ノリや、ということは、あたしもその『ババア』ってことかい?」
「あ。」
完全に墓穴を掘ったノリは、ただもう埋められるのを待つばかりなのである。
「あーあ。ノリさん、『よっちゃんの刑』決定。」
重清の哀れんだ声に追随するように、『よっちゃんの刑』被害者達が、一様に手を合わせて拝んでいた。
「ノリ。帰りの車、気をつけて帰るんだよ。」
雅が笑ってそう言うと、ノリはただ、その場に泣き崩れるのであった。
「もう!重清のせいで話が変な方向にいっちゃったじゃない!ノリを見なさい!あれは、あなたの言葉が引き起こしたことなのよ!!」
智乃が呆れたように重清を諭すと、
「いや、あれはノリさんの自爆でしょ。そんなことよりチーノ、じゃなくて今は智乃、か。結局条件ってなんなのさ?」
泣き崩れる教師をそんなこと呼ばわりして、重清は智乃に笑いかける。
「まったく。あなたはつくづく平八の孫ね。」
そう呟いた智乃は、重清に向かい合う。
「私の条件はね、今まで通り接すること、よ。」
「え!?これだけ引っ張っておいて、それだけ!?」
「あなたねぇ、誰のせいでここまで引っ張ることになったと思っているのよ?」
「誰って、ノリさんでしょ?」
「はぁ。わかった、あんたはねぇ!平八よりもたちが悪いわ!平八は、脱線癖をちゃんと理解してたけど、あんたはちっともそれが分かってないのよっ!」
「そんなの知らねーよ!おれはおれで、じいちゃんじゃない!じいちゃんと比べるなよっ!!」
「っ!?なにを・・・」
「そこまでだよ。」
重清と智乃の言い合いに、雅が割って入る。
「智乃、今のはあんたも悪い。ちゃんと、この子を見てやってくれ。」
「そ、そんなの、わかってるわよっ!」
「重清、あんたもあんただよ。確かに、そこで泣き崩れているバカは本人の責任だ。でもね、あんたも少しは自分の脱線癖をちゃんと理解しな。
別に、それが悪いってわけじゃないんだ。あんたのじいさんから受け継いだ、大切なもんなんだから。
だからこそ、ちゃんとその癖と向き合いな。」
「わ、わかったよ。智乃、ごめん。言い過ぎた。」
「いえ、私こそ、大人気なかったわ。」
「まぁ、智乃は今、子どもだけどな。あっ、こういうところか。」
「ふふふ。ええ、そういうところよ。」
「どうやら仲直り出来たみたいだね。」
「ええ。雅も、ありがとうね。」
「あんたに礼を言われるなんざ、むず痒くなるね。」
「あら、失礼なババアね。」
「あんたに言われたくはないさ。」
そう言って婆さん達が笑いあっていると、重清が智乃の顔を覗き込む。
「えっと、智乃。とりあえずさっきの条件、おれはいいんだけど、それでいいの?」
「ええ。師匠ってガラでもないし、今まで通りでお願い。」
「りょーかい!」
重清が笑って智乃に、返すのであった。
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