おれは忍者の子孫

メバ

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彼らの日常と蠢く影

第159話:何かの崩壊

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「ふぇっ??」
聡太は突然のことに、大声をあげる。

「いやいやいや、ぼくなんかが管理者だなんてっ!でも、弟子っていうのは、ちょっと魅力的かも・・・」
「おぉ、そう言ってくれると嬉しいぞ!
雅様が最近になって初めて弟子をとり、それはもう楽しそうでな。儂も欲しいなぁと思っておったのだよ。」

「いやそんな、『孫自慢が羨ましい』みたいな理由ですか!?」
「ほっほっほ。それは冗談だ。まぁ、羨ましいと言うのは事実ではあるがの。」

(あ、羨ましくはあるんだ。)
聡太は心の中で、そっとつっこんだ。

「その年で飛翔の術に辿り着くセンスと忍力を持つ者など、なかなかおらん。是非とも儂の弟子になって欲しいのだ。
飛翔の術に辿り着くということは、お主の忍力は、木であろう。そして、風すらも使えるようになっている。
であれば、儂の元で学べる事も多いと思うぞ?」

オウの言葉に、しばし考え込む。

(オウさんの弟子。う~ん。今の話だと、オウさんは他にも木や風の術を知ってそうだし・・・でも、ノリさん以外の弟子になるのって、いいのかな?
あ。茜が既にそうなのか。でも・・・)

「いや結構考えるな。ちと悲しくなるわぃ。」
「あっ、すみません。そういうわけではないんです。
ただ、ノリさんに断りも入れずに勝手に決めてもいいのかなぁって。」

「そういうことか。それなら安心せぃ。雅様と同じように、正式な弟子入りはまだ先で良いわ。
それに、忍者部の活動優先、他諸々も、雅様同様の条件で構わぬ。」
「あ、そのへんのこともご存知なんですね?」

「あぁ。雅様から、たっぷりと自慢されたからのぉ。」

(あ、羨ましい気持ちが溢れてる。本当に弟子が欲しかったんだなぁ。)
聡太は、若干イラッとしているオウに、笑みをこぼしてそう考えていた。

「何を笑っておるのだ?」
「いや、今のオウさんがなんか面白くって。」

「失礼なやつだのぉ。して、弟子入りの件、どうするのだ?」
「はい。是非ともお願いします!」

「そうか。」
そう言って満面の笑みを浮かべたオウは、さらに続ける。

「弟子入りに際してだが、1つ条件がある。」
「このタイミングかよっ!あっ、すみません。ウチのつっこみ番長みたいにつっこんじゃいました。」

「つっこみ番長て。どうせあの伊賀の者だろう?恒久と言ったか。まったく、父親と違って言葉使いがなっておらんのぉ。」
「なんか、諸々すみません。」

「気にするでない。それで、条件についてだが・・・」

ゴクリ。
聡太の喉が鳴る。
こういう時、やはり喉はゴクリと鳴るようである。

「修行の時は、儂を師匠と呼ぶこと。」
「へ??あっ。はい、師匠っ!!」
聡太が拍子抜けしながらもオウをそう呼ぶと、

「あ、これ破壊力パネェ。」
オウが、恍惚とした表情で今までにないほど砕けた言葉を呟いていた。

っていうか砕けすぎである。

(あー、なんだろう。ぼくの周りの大人、変な人多いなぁ。)
聡太は、とある保健室の先生を思い浮かべながら1人黄昏れる。

「っと、失礼したな。それともう1つ。」
「いや2つになっちゃった!」
もう諸々諦めた聡太は謝ることもせず、ただそうつっこんだ。

「普段は、そのように砕けた口調で構わん。そして、普段儂の事はお、『おじいちゃん』と呼ぶこと。」


・・・・・・・・・・・


「ふぇっ??」

聡太、本日2度目の「ふぇっ??」である。

「儂、子も孫もおらんから、その・・・」
目の前の爺さんが両人差し指をツンツンしているのを見せられている聡太は、流石にもう堪えきれず、笑いだしてしまう。

ひとしきり笑った聡太は涙を吹きながら、

「ウチ、母が早くに亡くなって母方の祖父母とは疎遠ですし、父方の祖父母は早くに亡くなっているんです。だから、ぼくもおじいちゃんはいないようなもので・・・
なんか、おじいちゃんができて嬉しくて。」
そう言ってオウに笑顔を向ける。

「む、そ、そうか。」
オウは顔を赤らめて、頷いていた。

「おじいちゃん、これからよろしくね!」

「おっふ。これマジやばい。」

(よし、まずはおじいちゃんのこの突然のキャラ変に慣れよう。)
悶えるオウを見て、聡太は強く心に誓うのであった。


聡太がそのまましばらくオウの悶絶を冷めた目で見ていると、それに気付いたオウは何事も無かったかのように平静さを取り戻して、術の契約書を具現化させる。

「さて。これでお主の飛翔の術の契約は済んだぞ。」

(うわぁ~。改めて見ると、ギャップエグいなぁ。)
ナイスガイオウに戻ったのを見た聡太は、苦笑いでそれを見ていた。

「して、どうする?このまま少し、飛翔の術に慣れるために修行をつけてやることもできるが・・・」
「今日なところはやめておきます。早くシゲを助けたいので。」

「どうせ時間は経たないというのに。まぁ、お主がそう言うなら仕方ないのぉ。
ではせめて、その傷だけでも治して―――」
「あ、それも、できればお断りの方向で。」

「え、ちょっと何?全部拒否?」
「あ、すみません。ただなんて言うか・・・ここで回復してもらうのは、なんか卑怯な気がして・・・」

「ふむ。言われてみればそうだのぉ。弟子と孫がいっぺんに出来て、ちと過保護になってしまったのぉ。
しかし、お主のその考え方、ますます気に入ったぞ。」

「あ、ありがとうございます。」
「では、1つだけアドバイスだ。アドバイスはいいよね!?それもだめ??」

もう何度目かもわからない急キャラ変でウルウルと聡太を見つめるオウの瞳に聡太は、

「えっと、じゃぁアドバイスお願いします。」
諦めてため息交じりにそう答えるのだった。
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