おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
161 / 519
彼らの日常と蠢く影

第154話:あけみ姉さんが来た理由

しおりを挟む
「よっし、到着だ!」

それぞれが盛り上がる道中を経て、一同は目的地であるキャンプ場へと到着した。

ケンだけは、何故か若干げっそりしているのをシンとノブが気にしてはいたが、同車したメンバーを見てなんとなく察した2人は、ケンの隣へとそっと寄り添い、無言でそっと肩に手を置いていた。

素晴らしき友情である。

「っていうか・・・」
車から降りた茜が、周りを見渡して言葉を濁す。

「ボロボロじゃねーかっ!!」
茜に代わり、恒久がいつものごとくつっこんだ。

「そりゃそうだろ。ここは以前熊が大量に発生して、それ以降使われなくなっちまってっからな。」
ノリが、2人の言葉に当たり前のようにそう返す。

車から荷物を降ろしながら。

「いや熊て!ノリさん熊てっ!!」
重清が、そんなノリに叫んでいた。

車から荷物を降ろしながら。

「いやお前らめんどくせーよ。先に荷物を降ろせ!その後で、アケさんのことも含めてちゃんと説明すっからっ!!」
荷物を降ろしながら叫ぶノリに、一同は渋々ながらも各自の荷物を降ろし始めるのであった。

もちろん全員、熊と聞いたせいで周りを警戒しながら。


「さてと。全員荷物は降ろしたな。」
各自が荷物を降ろしてノリへと視線を向けるのを見て、ノリが一同を見る。

「ノリさん、それでー、熊ってどういうことなんですかー?」
ショウが、そんなノリを見返して尋ねる。

「あー、それな。確かにここは、以前熊が発生した。けどな、今はいねーんだよ。
熊発生のあと、客足が遠のいてこのキャンプ場は閉鎖。
それを協会が買い取って、今ここは俺等みたいな関係者しか使ってねーんだよ。
とは言っても、無関係な人が近寄ってしまう可能性も有る。そこで、アケさんの出番ってわけだ。」
「そーゆーこと!」
ノリの言葉に、あけみ姉さんがドヤ顔で一歩前に出る。

「あっ。もしかして、『中央公園』で使われてる忍術ですか?」
「さすがソウちゃん、シゲちゃんとは違うねぇ!そうだよ。『中央公園』の奥の席にかけている、忍者ではない者が『なんとなく行きたくなくなる』術、その名も『何嫌(なんかいや)の術』を使うのさっ!!」
ババァーーン!という効果音でも聞こえてきそうなくらいのドヤ顔で、あけみ姉さんが胸を張る。

「いや術のネーミングセンスっ!!」
「ってか何気におれ、ディスられてるよね?」
恒久のつっこみと重清の悲しげな声は、森の中へと吸い込まれていった。

静寂の中、あけみ姉さんが若干顔を赤らめて口を開く。
「一応言っとくけど、この術は私の術じゃないからね?この術を作ったのは平八様なんだ。だから、名前のことは私に言われてもどうしようもないんだからね!」

尊敬すべき平八をこうもあっさりと売る薄情な女、あけみ姉さんなのであった。

「お前のじいさん、色々と凄い人だとは思ってたけど、ネーミングセンスも凄いんだな。」
「別の意味でな。」
シンとケンが、苦笑いしながら重清に話しかけてきた。

「まぁ確かに、チーノも白いってだけでシロって名前だったみたいですからね。チーノ、その辺について何かご意見は?」
「ノーコメント。」

「いや、そこをなんとか!」
「ノーコメントっ!!」

「だそうです。」
「いや別に、チーノの意見とか求めてないからね!?」
何故か重清とチーノの無駄なやり取りを見せられたシンは、たまらずつっこんでいると、

「相変わらず、あんたんとこは騒がしいね。」
「・・・返す言葉もありませんよ。それより、あんなバカ共はほっといてアケさん、お願いできますか?」
あけみ姉さんとノリがそんな会話をして、直後にあけみ姉さんが何嫌の術を発動する。

辺り一帯を、術が覆う。
「くぅっ。やっぱり普段よりも範囲を広めると、キツいねぇ。
みんな。私はこの術のせいでろくに動けそうにない。
後のことは頼んだよ。」

あけみ姉さんがそう言って車の中で寝始めたのを見たノリは、

「ってことらしい。とりあえず、半々に別れてテントと晩飯の準備だ。
俺は念の為にこの辺を見回ってくる。ショウ、後のことは頼んだぞ。」
そう言ってその場を離れようとすると、その背に茜の声がかけられる。

「ノリさん!大事な事を聞いていません!」
「大事な事?」
ノリが振り向いてそう言うと、茜だけでなく麻耶も真剣な表情で、ノリを見つめていた。

「「お風呂はどこに!?」」

「あー。」
2人のかつて無いほどの真剣な表情に怯みつつ、ノリは古いコテージを指す。

「風呂ならあそこにある。一応水は引かれているが、ガスは来ていない。シン、アカ、術を使って構わないから、湯沸かしは任せたぞ。」
そう言ってノリが今度こそその場を後にしたのを確認した恒久が、スススッと重清に近寄ってくる。

「重清、わかってるな?」
「もち!」
「2人とも、何の話?」

重清と恒久の会密談、相談が不思議そうに加わってくる。

「お前なぁ、風呂だぞ?わかってるか!?」
「ソウ、こういう時、お約束があるだろ?」

「えーっと、それって・・・」

「「風呂と言ったら、覗きに決まってるだろう!?」」

※覗きは犯罪です。決してやってはいけません。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...