おれは忍者の子孫

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彼らの日常と蠢く影

第152話:教師達の休息 後編

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教師たちのささやかな宴が始まって1時間。

「聞いてよ花園ちゃ~ん!ウチの陸上部、投擲専門の子しかいないのよぉ~!」
既に出来上がった斎藤が、花園に絡んでいた。

「それは大変ですねぇ~。」
(おかしいなぁ~。この話、もう5回目じゃなかったかしらぁ~?)
心の中でそう思いながらも、ちゃんと斎藤の言葉に相槌を打つ花園は、気配りのできる大人なのである。

それよりも、始まってたった1時間で5回も同じ話をするほどに酔っているあたり、斎藤は見た目に反してお酒に弱いようである。

「おいおいよっちゃんよぉー、だからって、ウチの部員に手を出すことはないんじゃね~のかぁー??」
こちらもすっかり出来上がったノリが、斎藤の肩に腕を回して絡み始める。

ノリの被っていた猫は、既に脱ぎ捨てられたようだ。

「そういえば、以前斎藤先生が生徒を追いかけ回していたという噂がありましたね。もしかして、それが?」
ノリの言葉に、島田さんがそう言って斎藤先生をじっと見る。

「あ~!ありましたねぇ~。何人かの目撃した生徒が、『次は自分が狙われるかもしれない』っていう謎の恐怖に取り憑かれて、しばらぬカウンセリングが大変でしたょぉ~。」
花園が笑って言った。
が、それは最早1つの大きな案件なのではないだろうか。

ちなみに全員、花園のケアのお陰で現在は心に傷が残ることもなく安心して生活を送っているらしいので、斎藤は大いに花園に感謝すべきである。

「よっちゃんよぉ、少しは反省しろよなぁー!」
ノリが斎藤を突きながら謂うと、

「もう!ちゃんとし反省してるわよっ!っていうか古賀ちゃん、いつもとキャラ変わってるじゃないの!!そんな古賀ちゃんも可愛いわよー!ほら、もっと飲んで飲んで!」
斎藤がそう言いながらノリの空いたグラスにビールを注ぐと、ノリもそれを一気に飲み干して、

「ぷはぁーー!!」
と、声を漏らす。もう、完全におっさんである。

(あぁっ!!古賀先生、飲むと一段と可愛くなるぅ~!)
島田さんが、そんなノリをツマミにビールを喉へと流し込んでいると、

「島田さんはぁ~、もしかしてぇ~、古賀先生のことが好きなんですかぁ~?」
花園が、小声でそう言いながら島田さんへと近づいてくる。

「ちょ、ちょっと花園先生!な、何を言ってるんですかっ!」
「もぉ~。隠さなくってもいいじゃないですかぁ~。お2人、とぉってもお似合いですよぉ~。」

「そ、そうかな!?」
「もちろんですよぉ~!私、応援しちゃいますよぉ~。」


こうして、それぞれがそれぞれ楽しんでいると、花園がふとあることを思い出してノリに声をかける。

「古賀先生ぇ~。そういえば、シゲ君の恋の悩みはその後どうなりましたぁ~?」
「んー?シゲー??」
ノリは花園の言葉にそう返して、そのまま爆笑し始める。

「アイツ、花園先生に相談してたんですねー!
いやー、それがアイツ、これでもかって程にフラれちゃって!
俺より先にリア充になろうとした罰ですよねー!」
「あらあら~、そうだったんですかぁ~。残念でしたねぇ~。」

「ご迷惑おかけしてすみませんでしたねー。いやー、ほんとに、結婚してぇっ!!
おいよっちゃんっ!先輩を差し置いてなに先に結婚とかしてんだよっ!!」

「いや、流れ弾もいいとこよっ!ちょっと古賀ちゃん!悪酔いし過ぎなんじゃないの!?」
斎藤が酔いながらもつっこんでいた。

「あらあら~、古賀先生、ご結婚されたいみたいですねぇ~。
島田さん、今日このまま古賀先生をお持ち帰りしちゃってくださいよぉ~。」
「おもっ、お持ち帰り!?ちょっと花園先生!?何言ってるんですかっ!!」

「えぇ~。だって、先に既成事実作っちゃえば、あとはどうとでもなるじゃないですかぁ~。」
「花園先生、意外と腹黒なんですね・・・」

「ちょっと2人ともっ!あたしの目の黒いうちは、そんなことさせないんだからねっ!島田ちゃん!悪魔の肥に耳を傾けちゃダメよっ!
ちゃんと正攻法で攻めなさい!
まぁ、古賀ちゃんはなかなか強敵みたいだけど・・・」
2人の会話に割り込んできた斎藤が、一生懸命醤油差しに話しかけているノリを冷ややかに見つめながら、そう呟くのであった。


その後なんだかんだと盛り上がった飲み会も、二次会が終わる頃には24時に差し掛かっていた。

「じゃぁ、わたしは妻が待っているから、そろそろ帰るわね!」
斎藤が、そう言って一足先に帰路へとつくのを見送り、3人はその場に立ち尽くす。

「えっとぉ、あとはお2人にお任せして私もそろそろ―――」

「おっ。誰かと思ったら、ノリなんだぜ。」
花園が気を利かせて帰ろうとしている所に、チャラめの男が声をかけてきた。

「おっ、ロキじゃねーかっ!いい所に来た!飲みに行くぞっ!」
「ノリー、お前もういい感じに出来上がってるんだぜ。
お2人は、ノリとどういったご関係なんだせ?」
酔って絡んでくるノリを華麗にスルーしながら、ロキが島田さんたちに目を向けてきた。

「関係っ!?いや、またその、そういった関係では・・・
それは、さっさとそういった関係に持ち込みたいとは思っていますが・・・」
「島田さぁ~ん、ちょっと慌てすぎですよぉ~。
こんばんわ~。私達は、古賀先生の職場の同僚なんですよぉ~。」
慌ててトンデモ発言をしている島田さんをフォローしつつ、花園がロキに答えると、

「ってことは先生なんだぜ!?
おれも、1中で教師してる神田っていうんだぜ。ノリとは中学からの同級生なんだぜ。」
そう言って親指を立てたロキは、ノリをチラリと見る。

「こいつ、かなり楽しんだみたいなんだぜ。こんなに酔ってるの見るのは初めてなんだぜ。
流石にこのままだと危なさそうなんで、こいつはここで俺が引き取るんだぜ!
綺麗な女性だけにして申し訳ないけど、気をつけて帰ってくれなんだぜ!」

ロキはそう言うと、ノリの肩を抱き、そのまま街の中へと繰り出していくのであった。

「あー・・・・」
島田さんの残念そうな声だけが、喧騒の中に溶け込んでいくのであった。

「島田さぁ~ん、残念でしたねぇ~。今日は、とことん付き合いますよぉ~。」
「花園先生っ!!ありがとう!!」
ここに、新たな友情が築かれたのであった。


「ノリ、もういいんだぜ?」
「あぁ。助かった。」
ロキの肩にもたれ掛かっていたノリが、それまでの酔いなど嘘のように姿勢を正した。

「相変わらず、飲み会の去り際が苦手なやつなんだぜ。」
「うるせぇよ。タイミングが難しいんだよ!それよりロキ、どうせこのあと暇だろ?付き合えよ。」

「どうせって失礼なんだぜ?こうなるだろうと思って、わざわざデートの予定をキャンセルしてきてるんだぜ?」
「クソリア充がっ!」

こうして、同級生2人はそのまま朝まで飲み明かすのであった。
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