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彼らの日常と蠢く影
第148話:良いシーン台無し
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「雷纏(らいてん)の術!」
重清が、忍術の契約書に加わっていた術を発動すると、重清の体を白い雷が覆った。
「雷速(らいそく)の術!」
それに対し、同じく術を発動して恒久は、足に黄色い雷が集中する。
「いやあんた達、まさかこの小屋の中でおっ始めるつもりじゃないだろうね?」
「「「あ。」」」
呉羽の呆れたような声に、重清と恒久、そしてヒトが声をあげる。
ヒトだけは、その直後に外に対って猛然とダッシュし、
「おいガキ共!さっさと出て来いっ!!」
と、さも当たり前のように外で叫んでいた。
「おい、アイツも今、『あ。』っつってたよな!?」
「言ってた言ってた!何か普通に、『俺は外に行くつもりだった』アピール始めてるけど。」
恒久と重清が、コソコソと話していると、
「あんた達、少しは緊張感を持ちな!」
呉羽にガッツリ叱られた。
「へいへい。じゃぁシゲ、行く――――ぞわぁーーーー!」
そんな言葉を残して一歩踏み出した恒久がその場から急にいなくなり、直後に外への扉近くの壁にめり込んでいた。
「あんた、術を解除してなかったのかい。その雷速の術はね、その名の通り速さに特化した術だよ。
だから、気を付けることだね。」
「いや、そういう事は先に言えよっ!!」
壁から出てきた恒久が、呉羽に向かって叫んで出ていくと、
「呉羽ばあちゃん、おれのはどんな術?」
重清が、壁に激突した友を無視して気にも留めず呉羽を見る。
「あんたは全身に雷の力を纏っていただろう?あれは、全身をそれなりに強化してくれるんだよ。」
「それなりって!なんか弱そうじゃない!?」
「要は使いようさ。あんたなら、上手く使いこなしてくれると思ったんだがねぇ。」
「お、おう!任しとけぃ!!」
そう言って外へと走り出す重清の背に、呉羽が苦笑いして「任せたよ。」と呟いていると、
「単純な奴だろ?」
プレッソがニシシと呉羽に笑いかけてくる。
「あぁ、心配になるほどにねぇ。あんたがあの子についててくれて、本当に良かったよ。」
「だろっ!」
そう言って外へと走り出すプレッソを見つめていたチーノが、微笑んでいった。
「2人とも、単純でしょ?」
「本当にねぇ。重清も重清だが、あのプレッソって子もなかなかだねぇ。さすがは、重清の具現獣ってとこかい。
こりゃ、あんただけが頼りだねぇ。」
「あの子たちも、やるときはやるのよ?でもまぁ、2人のことは任せてちょうだい。」
「なんだか2人の祖母みたいだねぇ。」
「失礼ね。せめて母と言ってちょうだい。」
呉羽の言葉に、チーノはへそを曲げて重清たちを追うのであった。
「あのシロが、なんだか子どもっぽくなっちまったねぇ。良い意味で、あの子たちに毒されてきているみたいだね。」
そう言って、呉羽は笑って外へと向かうのであった。
「さぁガキ共!さっさと掛かってこい!こっちは準備出来てるぞ!」
呉羽が外に出ると、ヒトがそう言って構えていた。
右手には槍、左手には水の盾。
それは、呉羽もよく知るヒトのスタイルだった。
であれば、このあとの行動も呉羽には手にとるように分かってはいたが、それを口にするのは無粋だと、呉羽はただ、重清達に目を向けてその場に佇んでいた。
「ちっ、槍と盾、か。しかもあの盾、水の属性だぞ。」
「だね。金との相性は良くないよね。っていうかあの槍、刃があるよ。」
「だな。向こうは俺らを傷つけることに躊躇ねぇってか。俺らはどうする?」
「もち、いつもどおりで!」
「言うと思ったよっ!」
重清の言葉にそう返す恒久は、再び雷速の術を発動する。
「シゲ、ちょっとこの術に慣れたい。しばらくあいつの相手を頼むっ!」
「りょーかいっ!プレッソ、チーノ!ヤバくなったら助けて!とりあえずおれ1人で、この術試すっ!」
そう言って、重清も雷纏の術を発動し、ヒロへと向かっていく。
(おぉ、結構スピード出るじゃん!)
呉羽の言う『それなり』のスピードに驚きつつ、重清は雷を纏う拳でヒロに殴りかかる。
しかしその時、ヒロの足元に氷の道が現れ、ヒロはそのまま流れるように地面を滑り出し、
「喰らえっ!」
その流れのままヒロは、重清に槍を突き出した。
「うわっと。」
突き出された槍を軽々と避けた重清は、そのまま雷を纏った足で蹴りを放つ。
ヒロはそれを水の盾で防ぐも、その威力を防ぎきることができず、そのまま吹き飛ばされる。
「ちぃっ。なんて威力だっ。しかし、ガキのくせに少しもビビらねぇとはな。」
(おぉ、蹴りの威力も格段!呉羽ばあちゃん、全然『それなり』じゃないじゃん!)
重清はそう思いながらも、ヒトに答える。
「あんたの仲間とウチの具現獣のお陰で、殺気には慣れっこなんだよっ!」
「シゲ、待たせたな!やっとこの術に慣れた!」
その時、恒久がそう言いながら重清の元へと瞬時に現れる。
「いくぜ、おっさん!!」
「うるせぇ!おれはまだ、38だっ!」
「十分おっさんだよっ!喰らえっ!」
恒久がそういうのと同時に手裏剣を具現化させ、その場から消える。
直後、再び恒久が元いた場所に姿を現した。
「てめえっ、何がしたいん―――がっ。」
怒りをあらわにするヒトの背に、手裏剣が直撃する。
「今、いくつもの手裏剣を仕掛けた。俺の合図で、手裏剣がお前に飛びかかるぞ。何度もな!お前はもう、逃げられない!」
恒久がそう言ってニヤリと笑う。
「クソがぁっ!!次はどこから来る!!」
そう言って睨んでくるヒトの瞳を見つめながら恒久は、
(よし、信じた!幻感の術っ!!)
内心でほくそ笑み、術を発動させた。
幻感の術は、相手を騙し、そうと信じ込ませたことが実際に起きているように錯覚させる、伊賀家の忍術である。
それは、ただ錯覚させるだけではなく、感覚の全てを支配し、ダメージすらも与える恐ろしい忍術なのである。
恒久の合図で手裏剣が飛んでくると信じてしまったヒトはもう、合図のたびに飛んできてもいない手裏剣をその身に浴びることとなるのである。
「これで本当にもう、お前は逃げられないっ!」
(ちょ、今の俺、かっこよくない!?)
せっかくの良いシーンが、台無しなのであった。
重清が、忍術の契約書に加わっていた術を発動すると、重清の体を白い雷が覆った。
「雷速(らいそく)の術!」
それに対し、同じく術を発動して恒久は、足に黄色い雷が集中する。
「いやあんた達、まさかこの小屋の中でおっ始めるつもりじゃないだろうね?」
「「「あ。」」」
呉羽の呆れたような声に、重清と恒久、そしてヒトが声をあげる。
ヒトだけは、その直後に外に対って猛然とダッシュし、
「おいガキ共!さっさと出て来いっ!!」
と、さも当たり前のように外で叫んでいた。
「おい、アイツも今、『あ。』っつってたよな!?」
「言ってた言ってた!何か普通に、『俺は外に行くつもりだった』アピール始めてるけど。」
恒久と重清が、コソコソと話していると、
「あんた達、少しは緊張感を持ちな!」
呉羽にガッツリ叱られた。
「へいへい。じゃぁシゲ、行く――――ぞわぁーーーー!」
そんな言葉を残して一歩踏み出した恒久がその場から急にいなくなり、直後に外への扉近くの壁にめり込んでいた。
「あんた、術を解除してなかったのかい。その雷速の術はね、その名の通り速さに特化した術だよ。
だから、気を付けることだね。」
「いや、そういう事は先に言えよっ!!」
壁から出てきた恒久が、呉羽に向かって叫んで出ていくと、
「呉羽ばあちゃん、おれのはどんな術?」
重清が、壁に激突した友を無視して気にも留めず呉羽を見る。
「あんたは全身に雷の力を纏っていただろう?あれは、全身をそれなりに強化してくれるんだよ。」
「それなりって!なんか弱そうじゃない!?」
「要は使いようさ。あんたなら、上手く使いこなしてくれると思ったんだがねぇ。」
「お、おう!任しとけぃ!!」
そう言って外へと走り出す重清の背に、呉羽が苦笑いして「任せたよ。」と呟いていると、
「単純な奴だろ?」
プレッソがニシシと呉羽に笑いかけてくる。
「あぁ、心配になるほどにねぇ。あんたがあの子についててくれて、本当に良かったよ。」
「だろっ!」
そう言って外へと走り出すプレッソを見つめていたチーノが、微笑んでいった。
「2人とも、単純でしょ?」
「本当にねぇ。重清も重清だが、あのプレッソって子もなかなかだねぇ。さすがは、重清の具現獣ってとこかい。
こりゃ、あんただけが頼りだねぇ。」
「あの子たちも、やるときはやるのよ?でもまぁ、2人のことは任せてちょうだい。」
「なんだか2人の祖母みたいだねぇ。」
「失礼ね。せめて母と言ってちょうだい。」
呉羽の言葉に、チーノはへそを曲げて重清たちを追うのであった。
「あのシロが、なんだか子どもっぽくなっちまったねぇ。良い意味で、あの子たちに毒されてきているみたいだね。」
そう言って、呉羽は笑って外へと向かうのであった。
「さぁガキ共!さっさと掛かってこい!こっちは準備出来てるぞ!」
呉羽が外に出ると、ヒトがそう言って構えていた。
右手には槍、左手には水の盾。
それは、呉羽もよく知るヒトのスタイルだった。
であれば、このあとの行動も呉羽には手にとるように分かってはいたが、それを口にするのは無粋だと、呉羽はただ、重清達に目を向けてその場に佇んでいた。
「ちっ、槍と盾、か。しかもあの盾、水の属性だぞ。」
「だね。金との相性は良くないよね。っていうかあの槍、刃があるよ。」
「だな。向こうは俺らを傷つけることに躊躇ねぇってか。俺らはどうする?」
「もち、いつもどおりで!」
「言うと思ったよっ!」
重清の言葉にそう返す恒久は、再び雷速の術を発動する。
「シゲ、ちょっとこの術に慣れたい。しばらくあいつの相手を頼むっ!」
「りょーかいっ!プレッソ、チーノ!ヤバくなったら助けて!とりあえずおれ1人で、この術試すっ!」
そう言って、重清も雷纏の術を発動し、ヒロへと向かっていく。
(おぉ、結構スピード出るじゃん!)
呉羽の言う『それなり』のスピードに驚きつつ、重清は雷を纏う拳でヒロに殴りかかる。
しかしその時、ヒロの足元に氷の道が現れ、ヒロはそのまま流れるように地面を滑り出し、
「喰らえっ!」
その流れのままヒロは、重清に槍を突き出した。
「うわっと。」
突き出された槍を軽々と避けた重清は、そのまま雷を纏った足で蹴りを放つ。
ヒロはそれを水の盾で防ぐも、その威力を防ぎきることができず、そのまま吹き飛ばされる。
「ちぃっ。なんて威力だっ。しかし、ガキのくせに少しもビビらねぇとはな。」
(おぉ、蹴りの威力も格段!呉羽ばあちゃん、全然『それなり』じゃないじゃん!)
重清はそう思いながらも、ヒトに答える。
「あんたの仲間とウチの具現獣のお陰で、殺気には慣れっこなんだよっ!」
「シゲ、待たせたな!やっとこの術に慣れた!」
その時、恒久がそう言いながら重清の元へと瞬時に現れる。
「いくぜ、おっさん!!」
「うるせぇ!おれはまだ、38だっ!」
「十分おっさんだよっ!喰らえっ!」
恒久がそういうのと同時に手裏剣を具現化させ、その場から消える。
直後、再び恒久が元いた場所に姿を現した。
「てめえっ、何がしたいん―――がっ。」
怒りをあらわにするヒトの背に、手裏剣が直撃する。
「今、いくつもの手裏剣を仕掛けた。俺の合図で、手裏剣がお前に飛びかかるぞ。何度もな!お前はもう、逃げられない!」
恒久がそう言ってニヤリと笑う。
「クソがぁっ!!次はどこから来る!!」
そう言って睨んでくるヒトの瞳を見つめながら恒久は、
(よし、信じた!幻感の術っ!!)
内心でほくそ笑み、術を発動させた。
幻感の術は、相手を騙し、そうと信じ込ませたことが実際に起きているように錯覚させる、伊賀家の忍術である。
それは、ただ錯覚させるだけではなく、感覚の全てを支配し、ダメージすらも与える恐ろしい忍術なのである。
恒久の合図で手裏剣が飛んでくると信じてしまったヒトはもう、合図のたびに飛んできてもいない手裏剣をその身に浴びることとなるのである。
「これで本当にもう、お前は逃げられないっ!」
(ちょ、今の俺、かっこよくない!?)
せっかくの良いシーンが、台無しなのであった。
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