おれは忍者の子孫

メバ

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彼らの日常と蠢く影

第145話:乙女の秘密

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『ダーリンへ』

重清達が手にした密書の表には、ただそう書かれていた。

恐る恐る2人が密書を裏返すと、そこには

『あなたの愛しのハニー 雅より』

そう、書かれていた。

・・・・・・・・

「おいシゲ、これって・・・」
「うん。いわゆるひとつの、ラブレターってやつだね。」

「あ、あんた達、何を見ているんだい!?」
「ちょっと、あんた達!ホント最低ねっ!!」

その時、2人の背後から声が聞こえた。

2人がそっと後ろに目を向けるとそこには、顔を真っ赤にしている雅と、鬼のような形相の茜の姿があった。

「シゲ!ツネ!2人とも、乙女の秘密を勝手に見るなんて、どういう神経してんの!?
みーちゃんの様子聞いてきたときから、怪しいとは思ってたけど!」
茜が2人の胸ぐらをつかんで、首がもげるのではというほどにガクンガクンと揺らしていた。

重清と恒久は、雅の家に侵入する前に、とある情報筋である茜に連絡をとっていたのだった。

少し考えれば、それが師である雅の耳に入ることも考えらるものだが。

それはさておき、最早生きた心地のしない2人は、さながら首振り人形のように、ただ揺らされるままに首をガクンガクンさせていた。

茜の後ろでは、雅がこれまで見たことのない程に顔を赤らめて、ただその場で顔を手で覆っていた。

自分から平八大好きアピールするのは問題ない雅であったが、平八に宛てた密書と言うなのラブレターを、こともあろうに孫に見られた雅は、それはもう恥ずかしかったそうな。

「みーちゃん、みーちゃん!!」
茜の声に気付いた雅は、手の隙間から茜に目を向ける。 

「こいつら、何か罰を与えるべきよ。」

「「ちょ、茜っ!!」」
「あんた達は黙ってなさい!」

「「すみませんでしたっ!」」

「ほら、2人も観念してるし、たっぷり罰を与えちゃいましょう。あの空間、罰だったら3日くらいは使っていいって、公弘さんも言ってたんでしょう?」

「そ、そりゃそうだが・・・
あっちゃん、アンタはこんな私を笑わないのかい?」

「何言ってるのよ!今のみーちゃん、乙女乙女してて可愛いわよ。」
「あっちゃん・・・」
涙目で茜を見つめる雅。

師弟を超えた真の友情が出来た瞬間である。

「じゃぁそういうことで。」
しばしの沈黙の後、雅はなんとか気を取り直し、ニヤリと笑って2人に目を向ける。

「人の秘密を勝手に除くようなヤツには、たぁ~ぷり修行してやらないといけないかねぇ。
それはもう、今日の記憶を無くすくらいには・・・」
そう言って雅は、チラリと部屋の隅に目を向けて、部屋を後にする。

茜は、胸倉を掴んだまま2人を部屋の外へと引きずり出していった。

「「い、いやぁーーーーーーーー!」」

2人の叫び声だけが、辺りに響き渡るのだった。


人気の無くなったその部屋の隅に、突如2つの目玉が現れた。
目玉は辺りを見回すようにキョロキョロと動いたあと、スッとその場から消えるのだった。


重清達が連れ去られて1時間後。
(ただし、重清達の体感では3日後。)

「あっひゃっひゃ、いーっひっひ!!」

1中校区内の森にある小屋で、呉羽が腹を抱えて笑っていた。

目の前にいる重清と恒久は、精神的にやつれた表情でそれをただ、死んだ目で見ていた。

「いや~、雅のクソババアのあんな表情が見れて、楽しかったよ。」
呉羽が涙を拭きながらそう言うと、

「え、呉羽ばあちゃん、見てたの?」
雅のしごきに多少は慣れている重清が、恒久よりもひと足早く立ち直って驚きの表情を浮かべた。

「あぁ、こいつを通してね。」

呉羽がそう言うと、突然呉羽の肩に1匹のカメレオンが姿を現す。
呉羽の肩のカメレオンは、何かを催促するように呉羽の頬を舌でつついていた。

「はいはい、そう急かすんじゃないよ。」
呉羽は言いながら、指の先から泥団子のような物を発し、カメレオンはそれを舌で絡めとり、そのまま自身の口へと導いていた。

「いろは、茶は飲むかい?」
呉羽がカメレオンに言うと、いろはと呼ばれたカメレオンはただ目玉をくるりと回し、そのまま姿を消した。

「まったく。せっかく淹れてやったというのに。」
呉羽は残念そうにため息をつき、いろはのために淹れたお茶をそっと重清の前へと差し出していた。

(え、カメレオンに飲ませようとしてたお茶をナチュラルにおれの前に置かれたんですけど。
これは、おれに飲めってこと?っていうか、絶対あのカメレオンも呉羽ばあちゃんのお茶が不味いってわかってるよね!?)

重清はそんなことを考えながら、差し出されたお茶を無視して口を開いた。

「具現獣に、泥団子をあげてるの?」
「・・・・・・」
それに対して呉羽は答えず、じっと重清を見つめていた。

「・・・・・・いただきます。」
見つめられた重清は、何かを諦めたようにそう言って、目の前のお茶に手を伸ばした。

(うん、不味い!もう1杯はいらない!)

重清の様子を見て満足したように頷いた呉羽は、何事もなかったかのように先ほどの重清の問いに答え始める。
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