おれは忍者の子孫

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彼らの日常と蠢く影

第139話:暗いほうが雰囲気が出る

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ノリのガクが、シリアスからの無駄話へと移行している頃の、とある場所。

昼間にも関わらず薄暗いその部屋には、2つの影があった。

そのうちの1つが、椅子へと腰掛けたまま薄暗闇に紛れて声を発した。

「何故呼び出されたか、わかっているか?」
「申し訳ございません。」
威圧するような声に怯みながらも、それを表に出さずにもう一方が直立不動のまま答える。

「わかっているか、と聞いている。」
「・・・わかりません。」

「あの男を処分したのは、お前の部下だったな?」
「・・・はい。」

「最近、物忘れがひどくてな。儂は何と言ったんだったか?」
「あの男の記憶を、消去しろ、と。」

「ふむ。儂の記憶が間違っていたわけではないようだな。それで、お前の部下はあの男をどうした?」
「自殺に見せかけて、殺害しました。」

「そうだな。お前の部下は、何をどう間違ったのかな?」
相手の言葉に、直立不動の影が跪く。

「申し訳ございませんでした。私の監督不行きです。」
「お前は何か勘違いをしているな。お前の部下は、部下であると同時に弟子でもあるんだ。
弟子の教育は、しっかりせんといかんぞ?」

「は、はい。」
「ひとまず、その部下との契約は破棄せよ。」

「し、しかし、せっかくの駒が―――」
「破棄せよ、と言っている。」

「は、はい。」
「儂の考えに賛同出来ない駒など、必要もない。駒ならば、また探せば良い。それに昨日、駒の候補者が出たようだしな。」

「か、畏まりました。」
そう言って跪いていた影は懐から1枚の紙を取り出し、それをそのまま破りさった。

「よろしい。お前の処分については、追って連絡する。なぁに、お前は儂の可愛い弟子なんだ。悪いようにはせん。」
「しょ、承知しました。」

「行っていいぞ。」
「その前に、1つよろしいでしょうか?」

「言ってみろ。」
「その。なぜ部屋を暗くしているのでしょうか。」

「その方が、雰囲気が出るだろう?」
「・・・左様ですか。」

「他に質問は?」
「いえ、失礼します。」
「あぁ、すまんが。」
一礼して出口へと歩を進める背に、そう声がかかる。

「出るときに明かりをつけてくれ。暗くてかなわん。」

その言葉にため息をつきながら、明かりつけて部屋から出ていく背を部屋の中から1人の大柄な老人が見つめていた。

老人という言葉が似つかわしくない程に屈強な体と、いくつもの顔の傷が、その男の戦闘経験の多さを物語っていた。

まさに百戦錬磨という言葉が似合う、そんな男だった。

しかし今男の顔には、老人という言葉がしっくりくるほどに深い哀愁の色が浮かんでいた。

この顔を弟子に見せたくないがために明りを消していたことを弟子が気付いていたことも、老人には分かっていた。

それでも老人は表情を崩さず、ただその場でそっと手のひらを合わせ、目を閉じた。

「―――悪いことをした―――申し訳――――」
誰に向けられているかわからない言葉を呟いた老人は、そっと目を開いた。

そこには、既に先程まで漂っていた哀愁の色は無く、ただ強い意志の宿った瞳だけが、空を見つめていた。



一方その頃、重清達はというと。

「へっへぇ~ん、こっちだよぉ~~!」
それはもう、存分に鬼ごっこをしていた。

「お兄ちゃん達~、待ってよ~!!」
しかも、近所の子ども達を巻き込んで。

玲央(プレッソ)がいた事で、重清と聡太を『遊んでくれるお兄ちゃん』だと認識した子ども達が、どんどんと鬼ごっこに加わっていき、遂には総勢20人程の大掛かりな鬼ごっこが繰り広げられていたのだった。

しかも、公園からは出てはいけないというルールの元で。

そこまで広くもない公園の中でそれだけの人数が鬼ごっこをしたにも関わらず、1人として怪我人が出なかったのだから、驚きである。

「玲央くーん、また遊ぼうね~!!」
「おぅ!またなぁ~!」

最後にはものすごく仲良くなった玲央と子ども達が別れを告げ、大規模鬼ごっこは幕を閉じたのであった。

「いや~、流石に疲れたな。」
「だね。鬼ごっこが、っていうより、あの子達が転ばないかハラハラして疲れたよ。」
重清と聡太が、揃ってため息をついた。

「オイラは、まだ遊びたりねーけどなっ!」
玲央だけは、元気なようである。

「プレッ、じゃなくて玲央、少しはその体に慣れたか?」
まだまだ元気な玲央に呆れ気味の重清が声をかけると、

「おぅ!バッチリだぜぃ!」
「あぁ、そりゃ、よーござんしたね。」
玲央の元気いっぱいな言葉に重清が返していると、

「シゲも、少しは気分転換になった?」
聡太がそう言って重清の顔を覗き込んだ。

「な、なんのことかな?」
「あのこと、まだ引きずってたんでしょ?」
聡太が心配そうに重清を見つめる。

「いや~、さすがソウ。バレバレか。でもまぁ、バカみたいに走り回ってたら、少しは気分晴れたよ。」
「ぼくの目を欺けると思ってたのに驚きだよ。
ま、少しでも気分が晴れたならいいや。」
重清の言葉に、聡太は安心したように笑っていた。

「あー、なんだ。心配してくれてありがとな。」
「いえいえ、シゲの司令塔として、これくらいは当然だからね。」

「いやだから、ソウはおれの右腕なんだって!!」
「司令塔!」
「右腕!!」

「はぁ。ホント2人は仲良しだな。」

「「どこがっ!!」」

玲央の呆れた声に2人は声を揃え、そのまま笑い出す。

「まぁこの件は、いつか白黒つけるってことで!!とりあえず、今日は帰るか!!」
「だね。」
「おぅ!オイラ、腹減っちまったよ!」

そして、3人は家路へとつくのであった。

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