おれは忍者の子孫

メバ

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彼らの日常と蠢く影

第137話:2人の課題

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「そういえばよう、チーノ。」
仲良く睨み合う2人をよそ目に、プレッソが口を開く。

「忍力って、人によって量が違ったりするのか?」
「えぇ。そうよ。」
チーノの答えに、重清と聡太が食いついてきた。

「ねぇねぇ、おれとソウ、どっちの方が多いの!?」
「聞きたい?」
幼女がニヤリと笑うと、

「「聞きたいっ!!」」
2人が声を揃えて幼女に迫る。
傍から見たら怪しいので、是非ともやめていただきたいものだ。

「あくまでも私の感覚で、だけど・・・聡太の忍力は、重清のおよそ2倍ね。」

「うそー!?」
「よっし!」

「そんなに違うもんなのか?」
プレッソが、一喜一憂する2人に目をくれて言うと、

「えぇ。でも重清、悔しがることないわ。あなたの忍力も、一般的な中学生よりは多い方だから。
聡太の忍力が異常なのよ。」

「い、異常って・・・」
先程まで喜んでいた聡太が、微妙な顔をする。

「言い方が悪かったわね。でも、飛び抜けているのは事実よ。
実際に2中で言うと、ショウが重清とほぼ同じくらい、茜が重清達よりも少し多くて、他のみんなが重清達よりも少し少ない、って程度の差なの。
その中で、聡太の忍力は明らかに多いのよ。」

「そ、そうなんだ。」
「まぁ、聡太はまだまだ、それを使いこなせてはいないけれどね。」

「うっ。それはまぁ、自覚ありますけど。」
「まぁ、その辺があなたの今後の課題ね。」

「はぁ~い。」
聡太が小さく手を上げて返事をすると、重清がニヤニヤと聡太を見ていた。

「ソウ、お前こんなちっちゃい子から、課題とか言われてるぞ~。」
「重清、言っておくけど、あなたの方がよっぽど課題がたくさんあるのよ?」

「だそうですよ、重清くぅ~ん。」
今度は聡太が、重清をニヤニヤと見返していた。

「あなた達は、本当に仲が良いわね。」
そう言ってチーノは、2人を羨ましそうに見て笑っていた。

「で、おれの課題ってなんだよ?」
その笑顔に癒やされながらも、重清は不貞腐れたように口を尖らせる。

「まずは忍力の増量。重清の忍力も少なくはないけれど、多いに越したことはないからね。

そして次に、術を使う際の忍力の調節。
忍術は、一度覚えたら念じるだけで自由に使えるようになるけれど、それだけではダメなのよ。
ちゃんと忍力と心・技・体の力を練って術を使うことで、力の調節や、応用がききやすいの。」

「あっ。それ、ノリさんや公弘さんも言ってた!」
チーノの言葉に、聡太が頷く。

「公兄ちゃんが?」
「うん。公弘さんのお陰で僕は、一気に術が増えたし。」

「ソウは、公兄ちゃんとの修行で3つも術が増えてたもんな。」
重清が納得して頷いた。

事実聡太は、火の力を扱えるようになってすぐに、ケンと共に術を忍力と心・技・体の力によって使うことでその術の力配分を理解することに注力していた。

それにより聡太は、元々持っていた木砲の術を元に、火の力を使って火砲の術を覚え、更にはケンの使っていた木壁の術と、火壁の術まで覚えていたのだった。

「術の扱いについては、分かってもらえたようね。
これは、ヒビ意識して術を使って慣れていきなさい。
それから・・・」

「まだあるのかよぉ~。」
重清が泣きそうな顔で頭を抱える。

「もう。これで最後よ。
重清のあの『雷弾』についてよ。いくら重清が雷の力元となる金の属性を持っていたとはいえ、雷の術を使い慣れていない重清は、あの雷弾を使ったとき、かなりの忍力を無駄に使っていたの。

無理矢理金の力を変換した代償のようなものね。
重清はまず、雷を使う術を覚えて、その力の扱いに慣れなければ、いつまで経ってもあの雷弾は、あなたから無駄に忍力を吸い取ることになるわ。」

「雷の術、ねぇ・・・」
そう呟きながら重清が思い浮かべていたのは、中忍体で戦った麻耶。
しかし、流石にライバル校の部長に教えを請うわけにもいかないと、重清は小さくため息をつくのであった。

「まぁ2人とも、明日からまたしっかりと修行に励むことね。」
「「はぁ~い。」」
2人は揃って小さく手を上げて、ため息交じりに返事をするのだった。

「あら、もうこんな時間。私このあと、雅達と女子会だから、そろそろ失礼するわね。
あなた達はこのあと、どうするの?」

「どうって・・・」
「えっ、人を誘っておいて、考えてないの!?」
言い淀む重清に、聡太がつっこむ。

せっかくの優雅な1人の休日を邪魔されたのだから、無理もないことなのである。

「じゃぁさ、お願いがあるんだけどよ・・・」
そんな2人に、プレッソが言いにくそうに割り込んでくる。

「オイラ、まだこの姿で動くのに慣れてなくってよ。
良かったら、一緒に体動かすのに付き合ってくれねぇか?」

「ソウ、どうする?」
「ぼくは別にいいけど・・・で、何するの?」

「じゃぁ、鬼ごっこでもすっか!近くに公園もあることだし!」
「鬼ごっこて!小学生みないなことを・・・」

重清の提案に、聡太が呆れ果てる。
「だって、隠れんぼじゃ運動にならないだろ?」

「選択肢狭っ!」
「え~、いいじゃん鬼ごっこ。プレッソのこの姿だと、周りから見たときにそのくらいがちょうど良さそうじゃん。」

「あ、ゴメン。シゲ、ちゃんとそこまで考えてたんだね・・・」
「・・・ソウは、おれをなんだと思ってるんだよ。」

ソウ「ただのバカ。」
プレ「うるさいバカ、だな。」
チー「女に騙されるバカ、ね。」

「いや2人には聞いてないからね!?そしてチーノ、そこはまだそっとしておいてっ!!」

「あんた達っ!少し静かにしなっ!」
カウンターから、あけみ姉さんの怒鳴り声がこだまする。

「ほら~、みんなのせいで怒られちゃったじゃん!」
「いや、うるさいのはシゲだけだよ?うるさすぎて、さすがのこの席の忍術でもカバーできなかったんだよ。きっと。」

「冷静に考察してんじゃねーよっ!」
「あんた達~~」

「「すみませんでしたっ!!」」
再び聞こえるあけみ姉さんの声に、重清と聡太が揃って頭を下げる。

「じゃぁ、怒られたことだし、行くか。」
「あっ、その前に1つ確認。」
席を立ち上がろうとする重清に、聡太が小さく手を挙げる。

「プレッソとチーノ、この姿でこの名前、違和感ない?」

「「「あ。」」」
聡太の言葉に、チーノすらもそんな声を出す。

「まぁ、言われてみればそうだな・・・・・・
じゃぁ。プレッソは玲央(れお)、チーノは智乃(ちの)で!
ってことで、鬼ごっこに出発だぁ~~!」
「決め方雑だなおいっ!」
玲央と名付けられたプレッソが叫ぶんでいると。

「静かにしろっつってんだろうがぁっ!!!」

あけみ姉さんの今日イチの大声が、『中央公園』に響き渡るのだった。
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