おれは忍者の子孫

メバ

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いざ、中忍体!

第135話:黒い少年と白い少女

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「あー、起きたくないよ~」
重清が、ベッドに寝転んでそう呟いていた。

昨日、中忍体後に『喫茶 中央公園』で開かれた会は、最終的に『重清ざまぁ会』で統一されることとなった。

その場にいたほとんどの者が、そう思っていたからである。
ショウだけは、最後まで『シゲの恋バナパーティー』だと言い張っていたが。

そんな重清ざまぁ会は、モテない男達が大いに盛り上がり、結局日が落ちるまで続いた。
しかもその場に出されるのはコーヒーである。

重清は、普段の何倍ものコーヒー牛乳をあおり続け、結果、カフェインのせいで夜遅くまで眠ることができなかったのであった。

しかし、重清がベッドから起きたくないのはそんなことが理由ではなかった。

(結局また、琴音ちゃんにフラれたよぉ~。っていうか、普通にフラれた方がマシだったよぉ~)
どうやら重清は、失恋のショックからまだ立ち直ってはいなかったようだ。

好きだった相手から、ずっと騙されていたのだから無理もない。

中忍体終了後には色々なことが続いて考える余裕がなかった出来事が、カフェインによる眠れない夜によって再び重清を苦しめているのだった。

「プレッソ達は朝早くからどっか行っちゃったし、父さんも母さんも仕事でいないし。
今日は、コーヒー牛乳でも飲みながら、失恋に酔いしれよう。

いや、失恋した今こそ、ブラックコーヒーを飲んで大人の階段を―――」
独り言を言いながら、重清が上体を起こして立ち上がろうとしていると、部屋の外からドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえてくる。

「ん??」
駆け上がる音は聞こえたが、それからほんの少しだけ静かになり、そして、重清の部屋の扉が開け放たれる。

重清が驚きながらそちらに目を向けるとそこには、見知らぬ少年と少女が立っていた。

少年の方は、色黒で髪も黒く、年の頃で言えば6歳くらいだった。
片や少女は、少年とは正反対に色白で髪も白く、4歳くらいに見えた。

そんな2人が、目をキラキラさせて重清を見つめていた。

「えっと、どちら様??っていうか、どうやって入ってきたの?君達、人の家に勝手に入っちゃ、ダメなんだよ??」
重清は、突然現れた見知らぬ2人に、諭すようにそう告げる。

「重清っ!オイラだよっ!」
その少年のどこかで聞いたような声に、重清は首を傾げる。

「その声、どこかで聞いたような・・・しかも、ごく最近。」
「相変わらずバカだな重清!オイラだよっ!プレッソだよっ!!」

「へ?プレッソ!?じゃぁそっちは・・・」
「えぇ。チーノよ。」
少女が、見た目とは裏腹な大人びた声でそう答える。

「た、確かに、エロ姉ちゃんの子ども時代って言われたら納得か・・・
で、その姿、どうしたのさ?」

「オイラ達、やっと変化の術が使えるようになったんだよ!!」
プレッソが、嬉しそうに目をキラキラさせている。

「へ、変化の術?」
「えぇ。私が、あなたが言うところの『エロ姉ちゃん』になるのに使っていた術よ。」

「えっ、でもチーノ、術は全部忘れたんだろ?」
「だからプレッソが言ったでしょう?やっと使えるようになった、って。使えなくなっていた術を、また必死に覚えたのよ。」

「あ、そーゆーことね!もしかして、他にも術が増えちゃったりした?」
「残念だけど、この術だけよ。」
「でもなぁ、重清っ!オイラとチーノ、同じ術を使えるようになったんだぞ!」

「は?ちょっと何言ってるのかわかんない。」
「プレッソ、今のじゃ説明になってないわよ。
つまりね、重清。私とプレッソは、あなた達忍者で言う忍術の契約書を、2人て共有できるようになったのよ。」

「あー、ダメ。まだ理解できない。」
「へっへ~ん。チーノ、お前の説明でもダメだったぞ。」
「い、今のは重清がバカなせいよっ。」

(あ、チーノ可愛い。なんか急に妹と弟ができたみたいだな。)
口を尖らせるチーノを見て、重清が笑う。

「とっ、とにかくっ!プレッソが覚えていた鉄玉の術を私も使えるようになって、私が覚えた変化の術を、プレッソも使えるようになったってことなのよっ!!」

笑う重清に顔を赤らめてチーノが恥ずかしそうに言う。

「それは、つまり??」
「どんだけバカなんだよっ!これからは、どっちかが術を覚えたら、もう片方も術を使えるようになるんだよっ!」

「なーーーる!」
「チーノ、オイラもう疲れたよ。」
「私もよ。でも重清、覚悟しなさいよ?」

「な、なにがさ!?」
「これから私とプレッソは、どちらかが術を覚えたらお互いに使えるようになる。
それはつまり、私達はこれまでの倍のスピードで、強くなることができるのよ?」

「そうだぞ重清っ!お前が失恋でクヨクヨしている間に、オイラ達は強くなっちまうぞ!!」
「っ!!やっぱ、バレてた?」

「当たり前でしょう?私達は、重清の具現獣なのよ?」
「2人とも、ありがとな。」

「べっ、別に重清のためなんかじゃないんだからなっ!!」
「どこのツンデレだよ。プレッソ、あ・り・が・と・う・な!」
分かりやすくツンしたプレッソに、重清は改めてお礼を告げて、頭を撫でる。

「うわっ、ちょっ、恥ずい!めっちゃこれ恥ずいっ!!」
プレッソは、頭を撫でられたことに赤面して、そう言いながら走り出し、

「ずべぇっ!!」
そのまま顔から転んでしまった。

「もう、プレッソ!あなたはまだ、人型に慣れてないんだから、急に走らないのっ!」
「ははは、チーノ、お母さんみたいだな。」
「まぁ年の差的には、ばあちゃんだけどな。」
「うるさいっ!私はプレッソの妹だって言ってるでしょ!!」
もはや重清の部屋は、ちょっとした保育園になっていた。

「チーノ、その姿になってなんか、性格まで子どもっぽくなってない?」
重清がニヤニヤして言うと、

「そ、そんなことないもんっ!!」
そう言ってただ、顔を赤らめるチーノ。

その姿は、どこをどう見えも子どもなのであった。
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