おれは忍者の子孫

メバ

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いざ、中忍体!

第122話:守りたいという想い

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「な、何でここに琴音ちゃんが!?」
重清が戸惑っていると、琴音はすっと重清に駆け寄り、そのまま重清の胸へと飛び込んでいった。

「なっ!?」
突然のことに重清は、体を硬直させ、宙に浮いた腕を、そのまま自身の太ももへと戻し、直立不動の姿勢で琴音を受け止めていた。

「重清君!私、中忍体が始まってから怖くて、不安で。重清君の姿が見えたら、居ても立っても居られなくなって。それでっ!!」

「ちょ、ちょっとまってよ琴音ちゃん!えっと、琴音ちゃんも、忍者ってことでいいのかな??」
「うん。私、1中で、忍者部に入ったの。重清君もそうだったなんて、驚いちゃったよ。」
そう言って、顔を上げて微笑む琴音。

(ちっ、近ぃ~~~!)
その表情に、重清はただただそう思って琴音から目を逸していた。

「で、でも、何で1人でいるの?他の人たちと一緒じゃないの??」
どこを見ていいか分からない重清が、どこへともなく視線を泳がせながらそう言うと、琴音は重清の胸の中で黙り込んでしまった。

「琴音ちゃん??」
たまらず、重清は琴音へと視線を落としてその顔を覗き込む。

「えっ!こ、琴音ちゃん!大丈夫!?」
琴音の瞳に涙が浮かぶのを見た重清が、琴音にそう言ってあわあわと焦っていると、琴音は意を決したように口を開く。

「・・・私、同じ忍者部の人たちからいじめられてて・・・誰も私なんかと行動してくれないの。」

「えっ・・・」
重清はその言葉に言葉を失った。

それはつまり、従姉妹である麻耶も琴音をいじめているということになるからであった。
「だ、だって、1中には麻耶姉ちゃんもいるのに・・・」
やっとのことで搾り出した重清の言葉に、琴音は首を横に振る。

「麻耶姉ちゃんって、麻耶先輩のことね。ダメ。あの人が一番、私の事を目の敵にしているの。」
「そ、そんな・・・」

確かに重清は、忍者となってからの麻耶の事はほとんど知らなかった。
それでも、普段の麻耶がいじめなんてことをするなんて、信じられなかった。
それが、重清の正直な気持ちであった。

しかし、その気持ち以上に、重清の心にはある感情が芽生えていた。

それは、琴音を守りたいという想い。
『全てを守る』と決めた重清の心に、この想いが重なる。

しかし中忍体というこの場において、琴音は敵である。その琴音に対し、その想いを伝えるべきかどうか。そんな重清の迷いをそのままに、重清の手は琴音の肩の付近を漂っていた。

その時。

「重清君がここにいてくれて、本当に良かった。」
琴音はそう言って、重清の背に腕を回し、ギュッと抱きしめる。

そして重清も、意を決したように琴音の肩を抱き、
「大丈夫。琴音ちゃんは、おれが守るよ。」
そう、琴音を見つめて告げると、

「重清君・・・」
琴音は、そう言って微笑み、そっと目を閉じる。

(こっ、これはぁーーー!!)
重清の中に、これまでにない程の緊張が走る。

目の前には、目を瞑り、顔を上げる琴音。これはまさしく、『キスして』のポーズ。
重清は、緊張しながらと少しずつ、琴音へと顔を近づけていく。
キツく閉じられた目。
少し潤んだ柔らかそうな唇。
琴音の顔が、どんどんと近づいていく。

そして、

(重清っ!はな―――)

唇が触れ合う直前、琴音の目が見開かれ、重清はそこで、チーノの声を聞きながら意識がぼやけていくのを感じていくのであった。



「ちょぉぉーーーい!今めちゃくちゃいいところだったじゃねーかぁーー!!」
控室に、恒久の声が響き渡った。

「お前、今の状況でよくさっきの場面を楽しめるな。」
「それこれとは別!ってあれ?まだシゲ、リタイアはしてないのか?」
ノリが呆れたように言うと、恒久はそう言い切ってから首を傾げる。

その視線の先には、またしても画面が映らなくなったモニターがあった。

「どうやら、そのようだ。モニターがまだそこにあるのが、その証拠だな。」
「ってことは、また気絶を?」
「だろうな。おそらく、今の琴音って子がやったんだろう。」
「あぁ、やっぱそうなるよなぁ。」
「なんだ恒久、残念そうだな。お前、重清達のこと邪魔してたんじゃないのか?」

残念そうに呟く恒久を、ノリが不思議そうな顔で覗き込む。
「まぁそりゃぁ、あの幸せそうなオーラ出してる時は腹立つけどよ。一応、応援はしてたんだぜ?友達だからな。」

「そうかい。ま、まだあの子がどんな考えで重清に近づいたかまではわからないんだ。その応援の甲斐ってのは、まだあるかもしれねぇぞ?」
「いいえ。ないわね。」
ノリが恒久に言っていると、これまで黙っていたアカが、そっと呟いた。

「おい、アカ。久々に口を開くと思ったら、随分冷たいこと言うじゃんか。」
恒久がアカにそう言うと、アカはただ首を降って答える。

「そもそもあの琴音って子、最初っから怪しかったのよ。一度フった相手に連絡を取るなんて、何か理由がないとおかしいのよ。
相手が宝くじに当たったとか、莫大な遺産を相続したとか、たまたま書いた本が売れに売れて印税ガッポガポとか。」

「全部金じゃねーーかっ!」
恒久がつっこむと、

「でも、多分あの子にも、なにかやましい理由があるのは確かよ。」
「だとしたら、お前はそれに気付いていながらシゲに言わずに見ていたのか?」
恒久が睨むようにアカを見ると、

「わたしが何か言って、シゲが信じたと思う?」
「そ、それは・・・」
「ほらね。断言するわ。シゲは絶対信じなかった。あいつは元々あの琴音って子が好きだったんだからね。」

「だったらせめて、おれらには教えてくれてもよかったじゃねーかよ。」
「それは・・・」
「そういえばアカ、初めに3人でシゲ達を覗きに行ったとき、『面白いことになった』とかいってたよな?お前もしかして、単純に面白がってたんじゃないのか?」

恒久の言葉に、アカは黙り込む。

「お前ら、その話は後にしとけ。どうやら何か動きがあるみてーだ。」
ノリが、恒久とアカにそう声をかけると、恒久は再び俯くアカに目を向けたあと、渋々といった表情でモニターへと目を向けるのであった。
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