おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
127 / 519
いざ、中忍体!

第121話:来訪者

しおりを挟む
ショウ達が1中の麻耶達との決戦が始まった頃、重清はというと。

イチに吹き飛ばされて、見事にゴミの山に突っ込んで気絶をしていた。

・・・・・・
とりあえずしばしの間、彼はこのまま寝かせてあげることにしよう。
いつものように、重清のことは一旦置いておく。

その前に麻耶との戦闘後、すっかり忘れ去られているシン・ケン・ノブはというと。

シン「ヒャッハァーー!!」

現在、1中の風魔ヒロを担いだ風魔カツを、執拗に追い回していた。
どこの世紀末であろうか。

・・・・・・
とりあえず、彼らの事も一旦置いておこう。
もしかすると、置いていかれたままこの中忍体が終わりを告げるかもしれないという危険な可能性に目をつぶりながら。

ここは一度、再び少しだけ時を戻して、この中忍体において一番活躍出来ない彼らを覗いてみよう。


「なに、昨日ロキに会っただと?」
2中の中忍体控室で、1中忍者部顧問の風魔ロキと、3中忍者部顧問の根来トウが去ったあと、ノリのそんな声が聞こえてくる。

「あぁ。昨日、おれとソウは、シゲの密会現場に行ったんだ。そこで、鳩の餌をあいつらにぶち撒けようとした時に、あのロキって人が現れて、それを止められたんだよ。」
恒久が、ノリの言葉に頷きながらそう答えた。

「えっ、お前ら、人に鳩の餌ぶち撒けるとか、そんなひどいことしようとしてたのか?」
「いや、あんたが言ったんじゃねかっ!!」
安定のつっこみが入る。

やはり、2中のつっこみ番長の座は、恒久をおいて他にいないのである。

「まぁ、そんなことはいい。」
「よくねーよっ!」
恒久の再度のつっこみを無視して、ノリが続ける。

「それで、アイツ何かしてたのか?」
「ちっ。いや、何も。ただおれらを止めて、そのまま颯爽と帰って行ったよ。」
ノリの理不尽さに若干苛ついて、恒久は舌打ちしながらもそう答える。

「・・・偶然、だと思うか?」
ノリが、恒久に目を向けると、

「わからねぇよ。あの時、あのロキって人はただ、おれらを止めただけだったからな。偶然て可能性だって、捨てきれねぇ。」
そう言って首を振る恒久。

そんな中、アカだけは深刻そうな顔で俯いていた。

ノリと恒久は、それに気づきつつもそのことには触れず、ただ控室のモニターに目を向けるのであった。

「うわっ、シゲめちゃくちゃ飛ばされたな。」
しばらく沈黙が続いたあと、そんな恒久の独り言だけが控室に響く。
そしてその少しあとに、事務的な3中の敗退アナウンスが控室にも響き渡ったとき、恒久はあることに気付く。

「あれ、ノリさん。シゲのモニター何も写ってないけど、これってシゲがリタイアしたってこと?」
「いや、リタイアした場合、対象のモニター自体がこの部屋から消えて無くなるはずだ。おそらく、少しばかり気絶しているんだろう。」
恒久の言葉に、ノリが答えていると、これまで沈黙を守っていたアカが、意を決したように顔を上げて、その重い口を開いた。

「ノリさん、ツネ、私ね―――」
とその時、暗くなっていた重清を映すモニターの画面が、再び光り出した。

「おっ、シゲのヤツ、やっと目を覚ましやがったな。」
恒久がそう言いながら、モニターに目を向ける。

少しずつ鮮明に映り始める画面を見て、恒久が突然大声を上げる。

「はぁ!?どういうことだよ!?こりゃ、どんな状況だ!?」
恒久こ声に、アカもつられてモニターへと目を向ける。

「っ!?」
アカはモニターに映る光景に声をつまらせ、再び俯いてしまう。
先程までと違うのは、アカの拳が、ただただ強く、握られていることであった。
その拳にどんな感情が込められているのかは、まだ彼女にしか分からないことなのであった。


「いてててて。」
重清が、全身の痛みにそんな声を上げながら立ち上がる。
(重清っ!大丈夫か!?)
(プレッソか。あぁ。なんとか大丈夫みたい。)
(重清、ごめんなさい。私が油断したばっかりに。)
(チーノ。いや、ありゃ完全におれのミスでしょ。忍力って、無くなるとこんなことになるんだな。)

重清は自身の中にいる2匹にそう答えて、腕に力を入れてみる。

(とりあえず、体はなんともない、かな?スーツのおかげだな。でも、忍力はまだやばいな。プレッソとチーノが戻ってくれたお陰で、多少は戻ったみたいだけど。

2人ともごめん、ちょっとしばらくは具現化できなさそう。あとは、おれだけでなんとかするわ。)

(わかった。)
(えぇ。無理はしないでね。)

(ありがと。チーノ、この状態でも、感知ってできる?)
(えぇ。それは任せ―――重清。どうやら、お客様みたいよ?)

「へ?」
突然のチーノの言葉に、重清が間の抜けた声を出していると。

「重清君。やっと目が冷めたみたいね。体、大丈夫??」
重清の背後から、最近ではよく聞くようになった声が聞こえてくる。
最近どころか、昨日も聞いた、重清にとって他に比べようもない程に心地よい声。

重清は、ゆっくりと振り返り、声の主に目を向ける。

「こ、琴音ちゃん!?」

そこにいたのは、重清の想い人、田中琴音であった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...