おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
116 / 519
いざ、中忍体!

第110話:控室への来客

しおりを挟む
(は!?麻耶姉ちゃんいるの!?)
そんな重清の叫びにも似た声が、ソウの頭に響く。

「シゲ、うるさい。シンさん達の報告では、雅さんの孫で、雑賀麻耶って名乗ったらしいよ。聞いてなかったの?」

(マジかぁー。いや、確かに麻耶姉ちゃんは1中の校区に住んでるし、忍者なのかなぁーとか思ってはいたけど・・・)
「いやそれ、普通に気付こうよ!」

(でも、何でおれを倒したいと思ってるのか、わかんないんだよねぇ。)
「シゲの事だから、何も考えずに失礼な事でも言ったんでしょ?
とにかく、気を付けてね!じゃっ!」

(ちょっ、ソウ!お前時々失礼なことを―――)
「ふぅ。」

「シゲ、何だって?」
「雑賀麻耶って人がいることに、驚いてたみたいです。」
「そうなんだー。雑賀麻耶、確かに一昨年の中忍体でも見かけたなぁ。可愛い子だったよー。」

「え!?」
「ん?どうしたの?」
「ショウさんも、そういう事言うんですね。」
「そりゃ言うさー。僕だって男だからね。普段はほら、そういうのにうるさい人がいるじゃない?」

「あー。」
ソウは、とある2中忍者部の顧問を思い浮かべてそう呟いた。

「っと。無駄話なんて、シゲみたいだね。
それよりもソウ、1中の校旗の場所までは、どれくらいかな?」
若干重清をディスりながらのショウの言葉に、ソウはスマホ型レーダーに目をやる。

「んー。このままもうしばらく進んだところですね。」
「よーし。じゃぁサクッと見つけちゃおう!」
「おー!」
どことなくピクニック感のある2人は、そのまま街の中を進んでいくのであった。


「・・・あいつら、覚えとけよ。」
ノリが目の前のモニターに目を向けながら呟いた。

中忍体控室では顧問のノリと、参加していない恒久、アカが目の前の6つのモニターで、中忍体の様子を観戦していた。

「でもまぁ、ショウさんの言うこと、間違っては無いけどな。」
最早完全にノリに敬語を使う気が無くなっていた恒久が、そう言ってニヤニヤと笑っていた。

「ショウさん、ちゃんと女の子に興味あったんだ!ってことは、わたしにも可能性はあるわけよね・・・」
恒久の隣では、アカが真剣な顔でそんな事を呟いていた。

「部内恋愛禁止。」
そんなアカに、ノリは冷めた目でそう切り捨てる。

「ノリさんのケチー!あっ、じゃぁ、ショウさんが引退したら、付き合っても良いってことですよね!?」
「ん?忍者部に引退とかないぞ?」
ノリが、ポカンとした表情でアカに返す。

「えっ!ちょっと、それ絶対今考えたでしょ!」
「いやいや、ほんとに。確かに中忍体終わっちまったら、3年は大会とは関係なくなるけどな。
でもお前らは忍者なんだ。引退なんて、あるわけねーだろ?」
そう言って、今度はノリが、ニヤニヤと笑い出す。

「そんなぁ。じゃぁ、ショウさんと付き合うのは、来年の4月からかぁ。」
「いやお前、ショウさんの気持ちガン無視かよ。」
恒久がアカにつっこんでいると、

「中学生の恋愛を禁止するなんて、これだから彼女いない歴=年齢、のやつは困るぜ~。」
そんな声が、控室の扉から聞こえてきた。

その直後、扉が開かれ、そこから茶色く染めた長髪に見え隠れするピアスのある、ダボダボのジャージの男が控室へと入ってくる。

「あっ!」
男の姿に、恒久が声を上げていると、

「ロキ。貴様、何しに来やがった。」
突然の客に対して、ノリが睨みつけながら冷たく言い放つ。

「おいおい、同級生に対してそれは冷たいぜー。
ま、お前は昔っからそんなヤツだったよな。
今日は、俺には用はないんだぜ?
こちらの方が、お前にご挨拶したいんだとさ。」

そう言ってロキと呼ばれた男が、後方にわざとらしいくらいにうやうやしく礼をする。

「お主らは、いつまでたっても変わらんなぁ。」
そう言いながら、1人の好々爺然とした老人がロキの後ろから現れる。

「これは、トウさんでしたか。ご無沙汰しております。」
「ノリ、久しぶりだな。そう畏まるな。」

「ノリさん、この人たちは?」
3人のやり取りに、アカが口を挟む。

「この方は、根来(ねごろ)トウさん、3中の顧問をされているんだ。」
「で、俺は1中顧問の風魔ロキ!よろしく頼むぜ!」
ロキはそう言って、親指を立てる。

ノリはそれを無視して、トウに目を向ける。
「それでトウさん。本日はどのようなご用件で?」
「ワシが今年で定年だからな。その挨拶だ。」
「そう、でしたか。トウさん、もうそのようなお年で。」

「万年最下位の我が忍者部であったが、なかなかに楽しかったわ。お主らが来てからは、特にな。」
「私も、トウさんには色々と学ばせて頂きました。」

「よせ、むず痒い。平八様の元で学んだお主に、ワシから何を学ぶことがあるか。」

「いやーでも、トウの爺さんの『男女1人ずつ入部させる』ってやり方は、なかなか面白いと思うんだぜ?」
ロキが、ノリに無視された腹いせでもするように話に割って入る。

「そうだろう?お陰で、より楽しめたわ。」
そう言ってニヤリと笑うトウ。

「楽しめた、とおっしゃいますと?」
トウの言葉に、ノリが首を傾げると、

「皆、なかなかに『青春』しておったわ。」
「おじいちゃん!その話詳しくっ!!」

アカが、突如としてその話に食らいついてた。
小難しそうな話から、突如として恋バナに流れが傾いた途端の素早い行動。

恋愛に貪欲な女子、アカなのであった。

「アカ!トウさんに失礼だろ!トウさんも、趣味が悪いですよっ!」
「えぇーー!いいじゃないですかぁーー!ね!おじいちゃん、いいでしょ!?」
「フム。おじいちゃん、か。これはこれで・・・」
「なっはっは。トウの爺さんも、喜んでるんだぜ!」

アカの乱入で、場がわちゃわちゃしている中、恒久だけはロキをじっと見ているのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?

ありぽん
ファンタジー
 アルフォート家の3男、エリアス・アルフォート3歳は、毎日楽しく屋敷の広い広い庭を、お友達のぷるちゃん(スライム)とウルちゃん(ホワイトウルフ)と一緒に走り回っておりました。  そして4歳の誕生日の日。この日は庭でエリアスの誕生日パーティーが開かれていました。その時何処からかエリアスの事を呼ぶ声が。その声を前に聞いた事があるエリアスは、声のする庭の奥へ、ぷるちゃんとウルちゃんと3人進んで行きます。そこでエリアス達を待っていたものは?  剣と魔法そしてもふもふの溢れる世界で、繰り広げられるエリアスの大冒険。周りを巻き込みながら、今日もエリアスはやらかします! *エリアス本人登場は2話からとなります。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

処理中です...