おれは忍者の子孫

メバ

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いざ、中忍体!

第101話:そびえたつフラグ

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よっちゃん事件から少し経ち、中忍体の前日。

「「「「よっしゃぁーー!」」」」

社会科研究部の部室に、そんな声が響き渡る。

「ちょっと!静かにしてくださいっ!」
「あっ。島田さん、すみませんでした。」
部室へと入ってきた島田さんに、聡太が頭を下げる。

まったくもう、と呟いて、島田さんはドシドシと足音を立ててそのまま部室を後にした。

「どうやら、今回は全員クリアみたいだな。」

島田さんと入れ替わるように入ってきたノリが、そう言って笑っていた。

それに重清達4人は、ドヤ顔で試験結果を広げる。
特に恒久が。

実力試験の時と同様の課題を夏休み前の期末試験で課されていた4人は、見事課題をクリアし、初の全員クリアを喜んでいたのだ。

ちなみに、同じく課題を課されていた先輩達の中で、ノブだけはクリアできなかったという。

「はいはい、おめでとう。で、今日は休みにしているはずだが、どうしたんだ?」

「あ、ただ試験結果を見せに来ただけです!」
そうニヤニヤしている重清の顔に不快な気持ちを抱いたノリは、聡太に目を向ける。

「重清が気持ち悪いんだが、何かあったのか?」
「あー、今日も田中さんと会うみたいなんです。」
「「ちっ!」」
「おいっ!なんでツネまで舌打ちしてるんだよっ!!そしてソウ!ノリさんにチクるなよ!!」

「言っとくけどぼくは、まだあの時のこと許してないんだからね??」
そう言って重清に笑顔を向ける聡太。
しかし、その目は決して笑っていなかった。

「うぐっ。」
花園の事を、意図していないとはいえノリに知らせてしまったことを思い出した重清は、何も言い返せず黙り込んでしまう。

「それで、その後進展はあったのか?」
恒久が面白くなさそうにそう言うと、チラッとノリを見たあと、重清が口を開く。

「いや、普通に話してるだけなんだけど・・・」
「けど??」
死んだ魚のような目で笑うノリが続きを促す。

「明日の大会の後、もう一回告白しようかと・・・」

「「「うわぁ。」」」
ノリを除く3人が、声を揃える。

「お前それ、見事なまでのフラグじゃねーか!」
「あーあ。シゲ、明日死んじゃうのね。」
「でも、まだシゲが出られるかは決まってないよ?」

3人が思い思いの言葉を重清に投げつける。

「だったらさっさと行け。行って、またフラレて来い!」
「フラレる前提!?告白するの明日ですよ!?でもまぁ、ノリさんからウダウダと文句言われる前に、おれは行くよっ!!じゃぁな!」
「重清!明日、忘れんなよー!」
「はぁーーい!」
そう叫んで、重清は走り去っていく。

島田さんの大きな咳払いに平謝りしつつ、残されたノリ達も部室を後にする。


「明日、いよいよですね。」
図書室を後にしたノリ達が校庭を歩いていると、ソウがそんな言葉を漏らす。

「そうだな。おそらくお前らのうち、2人出場できないとは思うが・・・」
「出るのはソウとシゲ、でしょう?」
ノリの言葉を遮るように、恒久が口を開く。

「・・・そう、思うか?」
「そりゃ、当然でしょ。ソウの力は不可欠だし、シゲにはプレッソ達がいる。実質8人で出られるのと変わらないんですから。」

「・・・すまないな。」
「ま、おれでもそう判断すると思いますからね。」

「ツネにしては、大人しく引き下がるのね。わたしはすごく悔しいけど。」
「言っておくが、プレッソ達がいなければ、お前ら2人が出てもおかしくなかったんだぞ?
それくらい、お前らは成長してくれたよ。」

「今日のノリさん、少し先生っぽいわね。」
「いや、先生だっての。」

ノリの言葉に笑う恒久は、ふと聡太に向きなおる。

「ソウ。明日、頑張れよ!おれら差し置いて出るんだから、誰にも負けんなよ!」
「そうよー。そんなの許さないからね!あと、ちゃんとシゲの面倒も見てあげなさいよ!」
「えっと、ぼく、シゲの保護者扱いなの?」

「似たようなもんだろ?」

ノリのつっこみに、誰ともなく笑い出す4人。
そこへ、プレッソがやって来る。

「「おっ、来た!」」
その姿に、恒久と聡太がニヤリと笑う。

「あんたたち、ホント悪趣味ねぇ。」
「ん?なにかあるのか?」

「この2人、またシゲの密会を覗きにいくんですよ。」
「それで、プレッソが案内役として来たってわけか。」
「だってシゲ、最近ちょくちょく場所変えるんですよ。」
聡太が悪びれもなくそう言ってプレッソを撫でる。

満更でもなさそうなプレッソは、名残惜しそうに聡太の手から離れ、2人に目配せをして歩き出す。

「じゃ、おれらはこれで。」
「あぁ。ほら、これは餞別だ。」
そう言ってノリは、5百円玉を聡太に投げる。

「あ、ありがとうございます。」
それを受け取った聡太がお礼を言い、
「おっ、ノリさん今日は気前がいいな!」

「この暑さだ。明日に支障が出ないように、冷たいもんでも飲め。んで、お釣りで鳩の餌買って、重清の密会中にばらまいてやれ。」
「いや陰湿っ!」
「あ、それ見てみたいかも。」
「鳩の餌って、どこに売ってるかな?」

「いや、茜もソウも、のるなよ!って、プレッソが行っちまう!ソウ、行くぞ!」
「ノリさん、茜、また明日!」
「おぅ、明日、遅刻すんなよー!」
「じゃぁーねーー!」

「茜は行かないのか?」
「そんな悪趣味なこと、しません!今日はこれから、みーちゃんとチーノちゃんと、女子会なんです!」
「3分の2、ババァじゃねーか。」
「2人には、しっかりと伝えときます!じゃ!」
「いやっ、ちょっ!」
ノリの言葉も聞かず、茜も走り去っていくのであった。

その後ろ姿を真っ青な顔で見つめていると、ハチがノリに話しかけてきた。

(あーらら。アカちゃん、絶対あのお2人に伝えちゃうわよ?)
(・・・やっぱりそう思うか?)
(えぇ。いざとなったら、私はソウ君と契約させてもらおうかしら。)
(え、俺死ぬの!?)
(あのお2人にあんなこと言って、無事で済むと思っているの?)
(ハチ、あの女子会に入り込んで、アカがしゃべるのを阻止してくれないか?)
(ムリよ。あのお2人と女子会なんて、恐れ多いわ。)
(そこを何とか!!!)
(ム~リ~。大魔王の参謀の使い魔は、そんなことできませ~ん。)
(お前、まだあの時のこと根に持ってんのか!?)
(当たり前じゃない。あれは一生忘れないわよ。)
(・・・手土産でも持って、女子会に乗り込むか。)
(やめておきなさい。あなたなんかのセンスで、あのお2人に満足いただけるわけないわ。)
(・・・ハチ、助けてくれよ~。)
(・・・はぁ。とりあえず、一緒に謝ってあげるから。)
(ありがとうございます!!)
(あなたも、あの子たちに負けないくらい、まだまだ子どもね。)
(ふんっ。男はいつまでも少年なんだよ。)
(ふふっ。はいはい。)

ハチが、母のような声で笑う声が、ノリの心に響くのであった。
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