104 / 519
いざ、中忍体!
第99話:よっちゃんの恐怖
しおりを挟む
「くっ!」
「お友達は全員確保したわ。あとはあなただけよん♪鈴木くんっ!!」
色黒に日焼けした短髪の男は、その日焼けとは対象的な白い歯を浮かべた笑顔でそう叫び、重清へと抱きつこうとする。
それをなんとか避けて、重清は再び走り始める。
「クソっ、何でこんなことにっ!」
そう呟きながら。
時は少し遡る。
その日、修行を終えた1年生4人は、社会科研究部の部室でしばしの歓談をしていた。
ちなみにプレッソとチーノは、一足先に窓から出て、プレッソは校門で重清を待ち、チーノは雅との女子会(?)に向かっていた。
その時、部室の扉が開く。
「ゲッ!」
入ってきた男を見て、重清はついそんな声を漏らす。
「あら、鈴木くぅん。先生を見てそんなこと言うなんて、ちょっとひどいわよ!」
男は、そう言って重清にウインクする。
男の名は斎藤 義雄。
忍が丘2中の陸上部顧問である。
以前重清が急に雅から呼び出されて全力で町中を走っているのを見て以来、重清を何度も陸上部へ勧誘していた男である。
そのあまりのしつこさに、重清が先程のような声を漏らすのも、仕方ない。
決して、斎藤のキャラの濃さに声を出したわけではないのだ。
ちなみに生徒たちからは、「よっちゃん」と呼ばれ親しまれている良き教師である。
「シゲー、お前良い加減、諦めて陸上部入っちゃえよー!こっちだっていい迷惑―――」
恒久が重清を見捨てようとしたとき、恒久の肩をむんずと斎藤は掴む。
「へっ?」
「あなた、井田君ね?そしてあなた達は森さんと風間君。あなた達も是非、陸上部へ入らない?」
その斎藤の言葉に、これまで他人事のように見ていた茜と聡太は、驚いたように斎藤を見る。
斎藤は、キラキラした瞳で、恒久を見つめていた。
それを目の当たりにした2人は思う。
((あ、これマジのやつだ。))
と。
キラキラの瞳を直接向けられた恒久は、絶望の表情でなんとか声を絞り出す。
「な、なんで・・・」
それに斎藤は、ニコリと笑って手に力を込める。
「あなた達、しばらく前に町中を走っていたでしょ?その走りに、惚れちゃったのよ。」
「「「あ。」」」
それが、田中琴音に会うために急いで中央公園へと向かっていた重清を追跡していた時のことだと気付いた3人は、揃って後悔の一言を漏らす。
「パチンッ」
その時、斎藤が指を鳴らした。
すると、厳つい男たちが社会科研究部の部室へと流れ込んで来た。
「あなた達っ!彼らは我が陸上部の希望の星よっ!今年残念な結果に終わった分、彼らを引きずり込んで来年こそは、全国に行くのよっ!!」
そう言って斎藤は、掴んでいた恒久を男達へと放り込む。
「のぉーーーーーー!」
その声を残して、恒久は男達に揉みくちゃにされながらそのまま流れるように連れ出されて行くのであった。
(((あれは嫌すぎるっ!!)))
その光景を見た3人は、そう思って目配せをする。
そして、
「逃げるぞっ!!」
重清の言葉を合図に、3人は部室から飛び出して行く。
「逃さないわよぉーー!!」
「ちょっと!斎藤先生、図書館ではお静かにお願いしますっ!」
おぉーっほっほぉーと高笑いしている斎藤に、突然インテリなメガネをかけた女性が叫ぶ。
この図書館の司書教諭、島田先生であった。
教員なのに、何故かみんなから『島田さん』と呼ばれる事が最近悩みな、31歳独身である。
「あら、島田ちゃんじゃないの。ごめんなさいね、なんか楽しくなってきちゃって。今度、あなたの好きなアイドルのグッズ買ってくるから、許してちょうだい?」
「そ、そういうことなら、今回の事は不問に付しますがっ。で、でもっ、図書館では騒がないでくださいね。」
「えぇ。承知したわ。あたし、ちょっと急ぐから、また後でねっ。」
そう言ってウインクを島田に放って、斎藤はそそくさと図書館を後にする。
「まったく、社会科研究部のあの子達といい斎藤先生といい、図書館を何だと思っているのかしら。ちゃんと、古賀先生に注意してもらわないと。」
そう呟いて、古賀の顔を思い浮かべて顔を赤らめる島田さんは、自身の席へと座り、先程まで見ていたアイドル雑誌を再び読み始めるのであった。
仕事はしなくていいのだろうか。
彼女は仕事の出来る人なのだ。
そのくらいの事で、とやかく言う者などいないのである。
そんなことはさておき。
こういうわけで、重清は現在、逃げていたわけなのである。
重清は「何でこんなことに」と言ってはいたが、よくよく考えてみると元の原因は、重清が町中を走っていたことなのではないのだろうか。
逃げる重清自身も少しだけそんなことを考えたりしたが、その現実から思考を逸らして背後から迫る斎藤に集中するのであった。
「お友達は全員確保したわ。あとはあなただけよん♪鈴木くんっ!!」
色黒に日焼けした短髪の男は、その日焼けとは対象的な白い歯を浮かべた笑顔でそう叫び、重清へと抱きつこうとする。
それをなんとか避けて、重清は再び走り始める。
「クソっ、何でこんなことにっ!」
そう呟きながら。
時は少し遡る。
その日、修行を終えた1年生4人は、社会科研究部の部室でしばしの歓談をしていた。
ちなみにプレッソとチーノは、一足先に窓から出て、プレッソは校門で重清を待ち、チーノは雅との女子会(?)に向かっていた。
その時、部室の扉が開く。
「ゲッ!」
入ってきた男を見て、重清はついそんな声を漏らす。
「あら、鈴木くぅん。先生を見てそんなこと言うなんて、ちょっとひどいわよ!」
男は、そう言って重清にウインクする。
男の名は斎藤 義雄。
忍が丘2中の陸上部顧問である。
以前重清が急に雅から呼び出されて全力で町中を走っているのを見て以来、重清を何度も陸上部へ勧誘していた男である。
そのあまりのしつこさに、重清が先程のような声を漏らすのも、仕方ない。
決して、斎藤のキャラの濃さに声を出したわけではないのだ。
ちなみに生徒たちからは、「よっちゃん」と呼ばれ親しまれている良き教師である。
「シゲー、お前良い加減、諦めて陸上部入っちゃえよー!こっちだっていい迷惑―――」
恒久が重清を見捨てようとしたとき、恒久の肩をむんずと斎藤は掴む。
「へっ?」
「あなた、井田君ね?そしてあなた達は森さんと風間君。あなた達も是非、陸上部へ入らない?」
その斎藤の言葉に、これまで他人事のように見ていた茜と聡太は、驚いたように斎藤を見る。
斎藤は、キラキラした瞳で、恒久を見つめていた。
それを目の当たりにした2人は思う。
((あ、これマジのやつだ。))
と。
キラキラの瞳を直接向けられた恒久は、絶望の表情でなんとか声を絞り出す。
「な、なんで・・・」
それに斎藤は、ニコリと笑って手に力を込める。
「あなた達、しばらく前に町中を走っていたでしょ?その走りに、惚れちゃったのよ。」
「「「あ。」」」
それが、田中琴音に会うために急いで中央公園へと向かっていた重清を追跡していた時のことだと気付いた3人は、揃って後悔の一言を漏らす。
「パチンッ」
その時、斎藤が指を鳴らした。
すると、厳つい男たちが社会科研究部の部室へと流れ込んで来た。
「あなた達っ!彼らは我が陸上部の希望の星よっ!今年残念な結果に終わった分、彼らを引きずり込んで来年こそは、全国に行くのよっ!!」
そう言って斎藤は、掴んでいた恒久を男達へと放り込む。
「のぉーーーーーー!」
その声を残して、恒久は男達に揉みくちゃにされながらそのまま流れるように連れ出されて行くのであった。
(((あれは嫌すぎるっ!!)))
その光景を見た3人は、そう思って目配せをする。
そして、
「逃げるぞっ!!」
重清の言葉を合図に、3人は部室から飛び出して行く。
「逃さないわよぉーー!!」
「ちょっと!斎藤先生、図書館ではお静かにお願いしますっ!」
おぉーっほっほぉーと高笑いしている斎藤に、突然インテリなメガネをかけた女性が叫ぶ。
この図書館の司書教諭、島田先生であった。
教員なのに、何故かみんなから『島田さん』と呼ばれる事が最近悩みな、31歳独身である。
「あら、島田ちゃんじゃないの。ごめんなさいね、なんか楽しくなってきちゃって。今度、あなたの好きなアイドルのグッズ買ってくるから、許してちょうだい?」
「そ、そういうことなら、今回の事は不問に付しますがっ。で、でもっ、図書館では騒がないでくださいね。」
「えぇ。承知したわ。あたし、ちょっと急ぐから、また後でねっ。」
そう言ってウインクを島田に放って、斎藤はそそくさと図書館を後にする。
「まったく、社会科研究部のあの子達といい斎藤先生といい、図書館を何だと思っているのかしら。ちゃんと、古賀先生に注意してもらわないと。」
そう呟いて、古賀の顔を思い浮かべて顔を赤らめる島田さんは、自身の席へと座り、先程まで見ていたアイドル雑誌を再び読み始めるのであった。
仕事はしなくていいのだろうか。
彼女は仕事の出来る人なのだ。
そのくらいの事で、とやかく言う者などいないのである。
そんなことはさておき。
こういうわけで、重清は現在、逃げていたわけなのである。
重清は「何でこんなことに」と言ってはいたが、よくよく考えてみると元の原因は、重清が町中を走っていたことなのではないのだろうか。
逃げる重清自身も少しだけそんなことを考えたりしたが、その現実から思考を逸らして背後から迫る斎藤に集中するのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!
渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞!
◇2025年02月18日に1巻発売!
◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!!
誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。
スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。
テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。
リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。
小型オンリーテイム。
大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。
嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。
しかしリドルに不安はなかった。
「いこうか。レオ、ルナ」
「ガウ!」
「ミー!」
アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。
フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。
実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

王女殿下は家出を計画中
ゆうゆう
ファンタジー
出来損ないと言われる第3王女様は家出して、自由を謳歌するために奮闘する
家出の計画を進めようとするうちに、過去に起きた様々な事の真実があきらかになったり、距離を置いていた家族との繋がりを再確認したりするうちに、自分の気持ちの変化にも気付いていく…

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる