おれは忍者の子孫

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いざ、中忍体!

第97話:花園先生の恋愛相談室

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「じゃぁ、今日は解散だ。」
そう言ってノリは、聡太に目を向ける。

「ソウは、少し残れよ?」
冷めた笑顔でそう言うノリに、ため息をついて一瞬重清をジト目で睨んだ聡太は、返事をして机に突っ伏した。

「えっと・・・ソウ、悪ぃな!とりあえずおれは、カオルンのとこ行ってるから終わったら来いよっ!」
そう言って重清は、逃げるように部室を後にした。

「お~ぼ~え~と~け~よぉ~」
くぐもったそんな声が聞こえた気がするも、重清はそれを聞かなかったことにしてそのまま保健室へと向かった。

「シゲ、保健室行くのか?おれも連れてけよ!」
そう重清に声をかけてきたのは、我らがムッツリ。

「ムッツリじゃねーよっ!」
どこへともなくつっこむ恒久に、重清は微妙な表情を向け、

「でもさ、まだ保健室には被害者がいるかもしれないし・・・」
「あー、もう帰ってるから心配すんなー」
重清の言葉にノリがそう声をかけてきた。

「はぁ~。」
「なんだよ、行っちゃダメなのか?もしかしてお前、花園先生狙ってんのか!?」
「そんなんじゃないけどさぁ。まぁいっか。」

(ほんとは1人で琴音ちゃんとの事相談したかったんだけどなぁ・・・)

そんなことを考えながらも重清は、恒久と連れ立って保健室へと向かうのであった。


「あらあら、シゲ君じゃないのぉ。ソウ君は?」
「早速だよっ!少しは他の生徒にも興味持ってくださいよ!」
「えぇー、これでも私、一途なのよぉ。」
「いや、そういう意味じゃなくてっ!」

「・・・シゲ、お前がつっこみに回ってる時点で、花園先生の凄さがよくわかったよ。」
恒久が、2人のやり取りを呆然と見てため息混じりに言うと、

「あら、この子はどなたぁ?」
「こいつはツネ!おれらと同じ、社会科研究部です!」
「よろしくねぇ。あら、あなたもいい男じゃないのぉ。」
「ちょ、カオルン!さっき一途って言ったばっかりですよ!」
「いやぁ、花園先生も、す、素敵な人ですよ。」

いい男と言われた恒久が、顔を赤くしながらもムッツリ視線を花園に送ると、

「あらぁ、何かいやらしい視線を感じるわぁ。ツネくん、あなたも意外とモテないんじゃなぁい?」

花園がニヤリと笑って恒久を見る。

「ちょ、も、って言った!今カオルン、あなたも、って言った!!ねぇ、それはなに。おれも、モテないってこと!?」
「あー、なんか普通の顔のやつがうるさくてすみませんね。それと、確かにおれはモテませんけどっ!!」
「普通の顔って言うな!ムッツリ!!」
「おいっ!誰かムッツリじゃぁ!!」

「ちょっと2人ともぉ。保健室では静かにしてくれるかしらぁ??」

((あんたのせいだろっ!!))

もう、保健室の中はしちゃかちゃである。

「えっとぉ。そんなことより、2人は何をしにきたのかしらぁ?見たところ、具合が悪そうでもないみたいだけど?」

((そんなことって言っちゃったよ、この人!))
2人がそう考えていると、

ポンっと手を叩いて花園は、
「あっ。シゲ君もしかして、早速恋の相談かしらぁ?」
「ちょっ。そ、それはまた、次の機会にっ!!」
それを聞いた恒久は、ニヤリと笑う。

「なるほどねぇ。重清君は、琴音ちゃんのことを相談したかったわけだぁ。」
「なっ!つ、ツネ、なんでそれをっ!?」
「あ。」
恒久が、言葉を詰まらせる。

「えっと、そのぉ。いや、おれらは何も知らないぜ?」
「待って、おれらって、らって、他にも知ってる人いるの!?ソウか!ソウが言ったんだな!!」
「まぁ、言ったっていうか、ついて行ったっていうか・・・あ。」
(やっちまった・・・)

恒久が見事な墓穴を掘る。
さすがは土穴の術の使い手である。

「え、ついて行った!?まさか、あの時・・・」

「あのぉー。2人で盛り上がるなら他所でやってくれないかしらぁ?これでも私、仕事あるんですけどぉ。」
花園が、不貞腐れたように2人を見つめる。

(いや、可愛いなおい!)
そんな花園に照れる恒久は、
救いを求めるように花園に話しかける。

「いやぁ、コイツ実はですねぇ―――――」


「なるほどねぇ。」
恒久から話を聞いた花園は、そう言って重清を見る。

「それでシゲ君、琴音ちゃんとはそれから、どうなってるのぉ??」
「どうって、たまに会って話してますけど??」
「あらぁ。キスもしてないのぉ??」

「きききききき、キス!?そんなこと、してませんよっ!!」
「いやお前、慌てすぎだろ。」
「2人は、付き合ってる、のよね??」
「えーっと。そこんとこ、どうなんすかね、恒久君。」
「いやおれに聞くなよっ!」

「ふふふ。青春してるわねぇ。」

花園が笑って、
「それにしてもシゲ君、これからあなたは、琴音ちゃんとどうなりたいの?」
そう言って重清を見つめる。

「どうって・・・」
「お前まさか、何も考えていなかったんじゃないだろうな?」
「うっ。」
「やっぱり。」
「いやだって、一回フラレてるんだよ!?話せてるだけで嬉しいじゃん!」

「でも、そのフッた相手と、またこうして会ってくれてるんでしょう?まだ、チャンスはあるのかもよぉ?」
「ほ、ホントに!?」
「えぇ。焦らずに、仲良くなってみなさいなぁ。」
「うん!ありがと!カオルン!!」
「いぃえぇ~」

「ちょ、花園先生、じゃなくてカオルン!おれにもアドバイスくださいよっ!」
恒久が、どさくさ紛れに呼び方を変えつつ、嘆願する。

「あなたはまず、そのいやらしい目線をどうにかしなさぁい。女子はそういう目線、敏感なのよぉ。」
「えっ!?おれ、そんな目線送ってます!?」
「えぇ。とおっても。」
「マジでかぁ・・・」
「ムッツリが出ちゃってるんだな。」
「うるさいわっ!!」

結局騒がしくなる保健室であった。

(人がネチネチやられてるときに、随分楽しそうだなぁ。
田中さんとのこと、ノリさんに言って正解だったと心から思うよ。)

保健室の扉の外では、そんなことを考えながら、聡太が1人、肩を落として佇んでいるのであった。


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