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忍者部、戦力強化
第79話:締まらない開戦
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重清がチーノと契約し、リア充への階段を登り始めてから1週間。
その日は現在行われている修行の最終日であった。
「よし!この辺で切り上げるか!」
少し息を切らせたノブが、重清にそう告げる。
その場には、雅や公弘、裕二の姿は無い。
それぞれが、
「あとは自分で頑張れ」
との言葉を重清に放り投げ、ここ最近は修行に来なくなっていたためである。
過保護なのか、放任主義なのか。
ただただ、自分勝手な雑賀家なのであった。
その分重清は、チーノを含めた修行に重点を置き、ノブもまた、新たに身につけた属性を使う修行に時間を割くことで、時間の殆どを使っていた。
「それにしても、お前の銃、ほんとに凄いな。メ型、だったか?近距離でのあの威力、シャレにならんな。」
先程2人(と、プレッソ&チーノ)で行った模擬戦の中で、重清の一撃を受けたノブは、腹部を押さえながら口にする。
「あれは、カ型です!メ型が、銃口が1つの中距離型、カ型が銃口が3つの近距離型なんです。元々は、コーヒーのハンドドリップで・・・」
「あー、シゲ。その説明、長いか?」
「え?まぁ、それなりに。」
「じゃぁ、カットで。」
ノブが両手でチョキチョキするのを見て、残念そうに、それはもう残念そうに頷く重清なのであった。
「ふふふ。でもね、あれでも重清は、威力を抑えていたのよ?」
「姐さん、そりゃ本当ですかい!?」
ノブが、驚いたようにチーノに目を向ける。
「・・・あなた、その『姐さん』って呼び方、いい加減どうにかしてくれないのかしら?」
チーノがムスッとした顔でノブを見る。
「いや、だって、姐さんは姐さんですから・・・」
ノブが困ったようにそう呟く。
「まったく。重清も、なんとか言ってちょうだいよ。」
ボールが急に重清へと投げられる。
「へ?いやー、だってチーノ、エロ姉ちゃん状態の時、めちゃくちゃエロいお姉様って感じだったじゃん?しょーがねーって!」
と笑って返す重清に目を向けたチーノは、次にプレッソへと矛先を向ける。
「プレッソ兄さん、助けてよ?」
最近身につけた、妹力を武器に。
「うぐっ。」
可愛い妹分に助けを求められたプレッソは、それでも負けずに言い返す。
「チーノ。オイラは、具現獣としての経験はお前に負ける。でもな、唯一勝っている、重清の具現獣歴の長さがオイラにこう言っている。『諦めろ』ってな。コイツのネーミングセンスの無さと、1度名付けに納得したあとの頑固さは、オイラにもどうしようもないんだよ。」
申し訳なさそうにそう告げるプレッソに、チーノは諦めたようにため息をつく。
「もういいわ。でも私、重清のセンスは好きよ?チーノって名前も、あっちの名前も。」
「それに関しちゃ、オイラは納得してねーけどな。」
チーノの言葉に、今度はプレッソが不機嫌な顔をする。
「あぁ、あれか。あれも大概凄かったな。」
プレッソの不機嫌さに気付かないノブが、感心して笑う。
「ふふふ。兄さん、さっき私に言ったばかりでしょ?諦めましょう?」
「・・・わかったよ。」
妹分にそう言われ、しょうがなくそう呟くプレッソなのであった。
修行を終えた2人と2匹は、他の面々と合流するために集合地点へ向かう。
「っと。チーノ、お前はしばらくおれの中に戻ってて。一応、チーノの存在はまだ隠してるから。」
「ええ。わかったわ。」
そう言うとチーノは、光となって重清の胸へと入っていく。
「あ、チーノ。今からみんなに会うけど、みんなの忍力とか、まだ覚えないようにね。」
(ええ、承知してるわ。)
「ん?重清、どういうことだ?」
重清の言葉に、ノブが返す。
「チーノの感知能力が残ってるって話したじゃないですか。あれって、忍力の性質で、相手が誰かまでわかっちゃうらしいんですよ。」
「なるほどな。ソウのレーダーみたいなもんか。」
「そういうことです!まぁソウみたいに、1度覚えたら『リセット』はできないんですけどね。あとは、チーノのさじ加減で。」
(えぇ、その辺は任せてちょうだい。)
「おう!頼りにしてるぞ!」
「・・・チーノと話してるんだろうが、傍から見たら、『独り言がもの凄いヤツ』だな。」
「あははは。たまに、周りの人からそんな目で見られます。」
「確かに、重清たまに普通に声出してるもんな。」
プレッソが笑う。
「うん。今後は気をつけような。」
そう言って、ノブが重清の肩に手を置く。
こうしているうちに一同は、集合地点へと到着する。
そこには既に、重清達以外の全員が揃っていた。
「よし、全員集まったな。ノブ、重清。これ着とけよ。他は全員準備万端だ。」
そう言われて重清たちは、中忍体用のスーツを着て、ノリに目を向ける。
「よし。以前言ったように、これから全員で遭遇戦を行う。まどろっこしいルールは無しだ!ただ、他チームを殲滅しろ!」
(殲滅て。)
全員が、心の中でつっこむ。
「各自所定の位置に移動しろ!合図をしたらスタートだ!」
そう言って、ノリはそそくさと去っていく。
「えっと。じゃ、みんな、行こうか。」
久々のショウスマイルを発揮するショウの声に、それぞれが移動を始める。
アカだけは、いつものように目をハートにして、シンに呆れられていたが。
「あー、あー。マイクテス、マイクテス。聞こえてるかー?じゃ、始めっ!」
どこからともなく締まりのない号令が森全体に聞こえ、模擬戦の火ぶたが切られる。
「え、あれってマイク使ってたんですか、ノブさん!?」
(ふふふ、違うと思うわよ?)
重清の言葉に、チーノが答える。
「「・・・締まらねぇな。」」
ノブとプレッソがそう言って、呆れたように目を合わせてため息をつくのであった。
----------
あとがき
誰も興味無いであろう補足
重清君が説明できなかった、猫銃・マキネッタのメ型、ア型について。
メ型:銃口が1つの中距離型
カ型:銃口が3つの近距離型
これはそれぞれ、コーヒーのペーパードリップで使う器具から。
1つ穴のものがメリタ式、3つ穴のものがカリタ式と呼ばれているとのことでしたので、そこから。
ちなみにカリタ式は日本で作られたらしく、『メリタ』の『メリ』をつなげると『刈』となることから、『カリタ』になったとかならなかったとか(どこかでかじった話なので、嘘かもしれません。)
どちらも社名のため、『メ型』『ア型』としました。
その日は現在行われている修行の最終日であった。
「よし!この辺で切り上げるか!」
少し息を切らせたノブが、重清にそう告げる。
その場には、雅や公弘、裕二の姿は無い。
それぞれが、
「あとは自分で頑張れ」
との言葉を重清に放り投げ、ここ最近は修行に来なくなっていたためである。
過保護なのか、放任主義なのか。
ただただ、自分勝手な雑賀家なのであった。
その分重清は、チーノを含めた修行に重点を置き、ノブもまた、新たに身につけた属性を使う修行に時間を割くことで、時間の殆どを使っていた。
「それにしても、お前の銃、ほんとに凄いな。メ型、だったか?近距離でのあの威力、シャレにならんな。」
先程2人(と、プレッソ&チーノ)で行った模擬戦の中で、重清の一撃を受けたノブは、腹部を押さえながら口にする。
「あれは、カ型です!メ型が、銃口が1つの中距離型、カ型が銃口が3つの近距離型なんです。元々は、コーヒーのハンドドリップで・・・」
「あー、シゲ。その説明、長いか?」
「え?まぁ、それなりに。」
「じゃぁ、カットで。」
ノブが両手でチョキチョキするのを見て、残念そうに、それはもう残念そうに頷く重清なのであった。
「ふふふ。でもね、あれでも重清は、威力を抑えていたのよ?」
「姐さん、そりゃ本当ですかい!?」
ノブが、驚いたようにチーノに目を向ける。
「・・・あなた、その『姐さん』って呼び方、いい加減どうにかしてくれないのかしら?」
チーノがムスッとした顔でノブを見る。
「いや、だって、姐さんは姐さんですから・・・」
ノブが困ったようにそう呟く。
「まったく。重清も、なんとか言ってちょうだいよ。」
ボールが急に重清へと投げられる。
「へ?いやー、だってチーノ、エロ姉ちゃん状態の時、めちゃくちゃエロいお姉様って感じだったじゃん?しょーがねーって!」
と笑って返す重清に目を向けたチーノは、次にプレッソへと矛先を向ける。
「プレッソ兄さん、助けてよ?」
最近身につけた、妹力を武器に。
「うぐっ。」
可愛い妹分に助けを求められたプレッソは、それでも負けずに言い返す。
「チーノ。オイラは、具現獣としての経験はお前に負ける。でもな、唯一勝っている、重清の具現獣歴の長さがオイラにこう言っている。『諦めろ』ってな。コイツのネーミングセンスの無さと、1度名付けに納得したあとの頑固さは、オイラにもどうしようもないんだよ。」
申し訳なさそうにそう告げるプレッソに、チーノは諦めたようにため息をつく。
「もういいわ。でも私、重清のセンスは好きよ?チーノって名前も、あっちの名前も。」
「それに関しちゃ、オイラは納得してねーけどな。」
チーノの言葉に、今度はプレッソが不機嫌な顔をする。
「あぁ、あれか。あれも大概凄かったな。」
プレッソの不機嫌さに気付かないノブが、感心して笑う。
「ふふふ。兄さん、さっき私に言ったばかりでしょ?諦めましょう?」
「・・・わかったよ。」
妹分にそう言われ、しょうがなくそう呟くプレッソなのであった。
修行を終えた2人と2匹は、他の面々と合流するために集合地点へ向かう。
「っと。チーノ、お前はしばらくおれの中に戻ってて。一応、チーノの存在はまだ隠してるから。」
「ええ。わかったわ。」
そう言うとチーノは、光となって重清の胸へと入っていく。
「あ、チーノ。今からみんなに会うけど、みんなの忍力とか、まだ覚えないようにね。」
(ええ、承知してるわ。)
「ん?重清、どういうことだ?」
重清の言葉に、ノブが返す。
「チーノの感知能力が残ってるって話したじゃないですか。あれって、忍力の性質で、相手が誰かまでわかっちゃうらしいんですよ。」
「なるほどな。ソウのレーダーみたいなもんか。」
「そういうことです!まぁソウみたいに、1度覚えたら『リセット』はできないんですけどね。あとは、チーノのさじ加減で。」
(えぇ、その辺は任せてちょうだい。)
「おう!頼りにしてるぞ!」
「・・・チーノと話してるんだろうが、傍から見たら、『独り言がもの凄いヤツ』だな。」
「あははは。たまに、周りの人からそんな目で見られます。」
「確かに、重清たまに普通に声出してるもんな。」
プレッソが笑う。
「うん。今後は気をつけような。」
そう言って、ノブが重清の肩に手を置く。
こうしているうちに一同は、集合地点へと到着する。
そこには既に、重清達以外の全員が揃っていた。
「よし、全員集まったな。ノブ、重清。これ着とけよ。他は全員準備万端だ。」
そう言われて重清たちは、中忍体用のスーツを着て、ノリに目を向ける。
「よし。以前言ったように、これから全員で遭遇戦を行う。まどろっこしいルールは無しだ!ただ、他チームを殲滅しろ!」
(殲滅て。)
全員が、心の中でつっこむ。
「各自所定の位置に移動しろ!合図をしたらスタートだ!」
そう言って、ノリはそそくさと去っていく。
「えっと。じゃ、みんな、行こうか。」
久々のショウスマイルを発揮するショウの声に、それぞれが移動を始める。
アカだけは、いつものように目をハートにして、シンに呆れられていたが。
「あー、あー。マイクテス、マイクテス。聞こえてるかー?じゃ、始めっ!」
どこからともなく締まりのない号令が森全体に聞こえ、模擬戦の火ぶたが切られる。
「え、あれってマイク使ってたんですか、ノブさん!?」
(ふふふ、違うと思うわよ?)
重清の言葉に、チーノが答える。
「「・・・締まらねぇな。」」
ノブとプレッソがそう言って、呆れたように目を合わせてため息をつくのであった。
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あとがき
誰も興味無いであろう補足
重清君が説明できなかった、猫銃・マキネッタのメ型、ア型について。
メ型:銃口が1つの中距離型
カ型:銃口が3つの近距離型
これはそれぞれ、コーヒーのペーパードリップで使う器具から。
1つ穴のものがメリタ式、3つ穴のものがカリタ式と呼ばれているとのことでしたので、そこから。
ちなみにカリタ式は日本で作られたらしく、『メリタ』の『メリ』をつなげると『刈』となることから、『カリタ』になったとかならなかったとか(どこかでかじった話なので、嘘かもしれません。)
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