おれは忍者の子孫

メバ

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忍者部、戦力強化

第68話:謝罪と八つ当たり

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「犯人の記憶が、無い?」
ひったくり犯逮捕の翌日の放課後にやって来た小野田の言葉に、重清がそう返す。

「あぁ。詳しくは、ノリさんが来てから話すよ。それより、お前あのあと、大丈夫だったか?」
「えっと・・・」
「コイツ、昨日の夜は、布団潜ってガタガタ震えてたんだぜ?」
「ちょ、プレッソ!余計なこと言うなよな!」
「そうか。シゲ、恥ずかしがることじゃない。お前の年で、本気の殺気を向けられたんだ。怖くなって当然だ。まぁ、いつまでもビビってたんじゃ話にならんが、しばらくはその恐怖と、向き合ってみろ。」

「恐怖と、向き合う?」
「そうだ。怖いってことは、何も悪いことばかりじゃない。恐怖は、それ自身が自分を守るためのセンサーにもなり得る。お前が抱く恐怖と向き合い、乗りこなしてみろ。」
「んー、なんか難しいですね。」
「とりあえず、今はこの言葉だけ頭に入れとけばいい。」
「わかりました。」
重清がそう言って頷いていると、ノリが部室へと入ってきた。

「お、ガク。どうした、こんなとこまで来て。」
そう言って髪をかき上げているノリに、
「あれ、ノリさん。素が出てますよ?」
「ん?あぁ。もう、こいつらの前で猫かぶるの面倒くさくなっちまってな。ここだけは、素でいることにしたんだよ。」

「おれはそっちの方がいいと思いますがね。あの人の真似だなんて、どうにも・・・」
「お前なぁ、まだそんな事言ってんのかよ?」
「いや、だって・・・って、今日はそんな話をしに来たんじゃないんですよ。」
そう言って小野田は、ノリと忍者部の面々に深々と頭を下げる。

「この度は、危険な依頼をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!こちらの確認不足で、重清君達の身を危険に晒してしまいました。署を代表して、ここに陳謝いたします。」

「だそうだぞ、重清?」
「へ?おれに振ります!?いや、ガクさん。気にしないでください!さっきのアドバイスもありがたかったし、その、いい経験になりましたから!」
「ほらガク、平八先生のお孫さんがそう言ってくれてるよ?」
ノリの言葉に、小野田がバッと頭を上げる。

「お前、平八さんの孫なのか!?」
「えぇ、まぁ。」
「・・・そうか。」
小野田は、何か言いたそうな顔をしながらも、重清から目を逸らして口を開く。

「一応、昨日逮捕した男について、報告させてもらいます。あの男、小松拓也は以前、忍者だったことがわかりました。」
「忍者、だった?でも昨日、あの人忍術使ってましたよ!?」
「まぁ待て。ヤツは昔、忍者部に所属して契約をしていたらしい。そして、中学生のときに忍者であることがバレて、契約を破棄されている。その頃の忍名は、風魔 タク。」
「あ。確かにあの人、1度風魔と名乗ったあと、甲賀 タクって言い直してました。それに、久々に目覚めたとも。」

「おそらく、1度契約を破棄されて忍者としての記憶を無くしていたんだろう。」
「そして、最近になってまた、甲賀の名を持つ者と契約をして、忍者としての記憶を取り戻した、と。」
小野田の言葉に、ノリが続けた。

「推測ですが、おそらくは。しかし、再び契約を破棄されたようです。今は、完全に忍者としての記憶をなくしています。」
「無くしたフリ、って可能性もあるんじゃないですか?」
恒久が手を小さく挙げる。

「いや、それは無い。『嘘をついた場合、髪がピンクになる』って契約を結ばせたうえで聞いたんでな。」
「契約って、そんな使い方もできるんですね。」
ソウが、感心したように呟く。

「あぁ、警察に所属している忍者も多くはないから、そのせいで色んなところに呼び出されちまうがな。」
小野田がそう言って笑って、
「とりあえず、報告は以上です。あとは・・・」
そう言ってノリに目配せをする。

ノリそれに頷いて、
「少しガクと話すことがあるから、お前ら先に行ってろ。特別講師の皆さんならもう着いてるはずだ。ショウは、済まないが向こうで少し待っててくれ。」
と、忍者部の面々に告げる。

それぞれが部室から去っていく中、プレッソを頭に乗せた重清だけが、そこに残っていた。

「すみません、1つだけいいですか?」
重清が小野田を見る。

「・・・あぁ。」
小野田は、少しだけ間をあけてそれだけ答えた。

「ガクさん、じいちゃんと何かあったんですか?もしかして、じいちゃんに嫌な思いさせられたんですか!?」
重清が、少し悲しそうな目でそう尋ねる。

「ガク、答えてやれ。」
「・・・・・・」
ノリが促しても、小野田はただ黙って俯いていた。

「はぁ。ガクはな、平八先生に八つ当たりしてんのさ。」
「っ!?ノリさん!」
「俺の可愛い生徒に、変な勘違いしてほしくねーんだよ。俺の口から言って欲しくなきゃ、テメーで話せ。」
「・・・わかりましたよ。シゲ、お前、俺の名前、覚えてるか?」
「え?えっと、学さん、ですよね?」
「そうだ、まなぶ、だ。わかるか?まなぶだぞ?それなのに俺の忍名、ガクなんだぞ!?これちょっと、ひどくないか!?」
そう言って重清に詰め寄る小野田。

「いや、おれに言われても・・・(ってあれ?これテジャビュ?)」
「俺さ、この忍名付けられて、周りからスゲーイジられたのな。で、中学卒業して高校進んでもまずそれでイジられる。
高校卒業したら無くなるかと思ったら、『名前は学なのに、ガクなんですね❨笑❩』とか言われるんだぞ?わかるか、その気持ち!?」

(確かに、聡太もそんな事言ってたな。)
(プレッソ!よく口に出さずに言った!今のはファインプレーだ!)
「確かに、ソウもそんな事言ってたしな。」
ノリがニヤニヤしながらそう言って小野田を見る。

「ノリさん、台無し!せっかくプレッソが、心の中で留めてたのに!!」
「あ、わりい。」
「ほらな、みんなそうやって俺のこと笑うんだよ。」
そう口にする小野田は、先程重清にアドバイスしていた姿からは想像もできないほど小さく、重清の目には映っていた。

「こいつ、こう見えてナイーブなんだよ。」
そう言って小野田の背中をバシバシ叩くノリ。
「古賀は、無神経過ぎだけどな。」

「プレッソ、よく言った!じゃなくて!ガクさん、おれ、ガクさんカッコいいと思います!さっきのアドバイスも本当に嬉しかったし!それに、考えてもみてくださいよ!ガクじゃなかったら、マナかナブですよ!?絶対ガクの方がカッコいいですって!」

「そ、そうか??ありがとな。」
そう言って照れくさそうに笑う小野田なのであった。
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