69 / 519
忍者部、戦力強化
第65話:試験結果と罰ゲーム
しおりを挟む
「ノォーーーーーーー!」
重清が、実力試験の結果を受け取っていると、どこからか叫び声が聞こえてきた。
((あ、ツネだな。))
重清と聡太は、同時にそう感じていた。
新たな修行から一週間、それぞれが修行と試験対策に奔走し、無事に実力試験は終了していた。
先程の叫び声から、一概に『無事に』とは言えないのかもしれないが。
とにかく、その日は試験から更に数日経ち、試験結果の返却される日となっていた。
恒久の叫び声を聞きつつ、重清は自身の手にある試験結果に目を落とす。
----
国語86点、数学91点、理科89点、社会83点、英語82点
----
そう、重清は、無事にノリの課題をクリアしていたのである。
彼はこれまで、幾度となくバカにされてきてはいるが、基本的にやれば出来る子なのであった。
「ちっ。」
どこからともなく、雅の舌打ちが聞こえてきたような気がする重清であったが、そんなことは気にしないのである。
「えーっと、シゲ、どうだった?」
重清同様、どこからか聞こえてきた舌打ちを無視して、聡太が重清の結果を覗き込む。
「ん?余裕でクリア。ソウは?」
「もちろん、クリアだよ。」
そう言って聡太が差し出す結果を見た重清は、
「って、オール90越えかよ!」
「ちょっ、シゲ、声が大きいよ!試験のほとんどは小学校で習ったことだったんだから、このくらい大したことないって!」
「お前それ、あいつらに面と向かって言えるか?」
重清の叫びに慌ててフォローを入れる聡太に、重清がある方向を見ながら呟く。
聡太がその視線の先に目を向けると、そこには肩を落として慰め合う後藤、藤田、原田の姿があった。
どうやら、あまり成績がよろしくなかったようで、先程の重清の叫びも耳には入っていなかったようである。
「正たちには、内緒にしといてね?」
「まぁ、おれもアイツらには自分の点数言いたくはないからなぁ。」
お互いにそう言って、周りに負のオーラを漂わせる3人に、ただただ憐れむ視線を送る2人なのであった。
その日の放課後、重清達の姿は、いつものように忍者部の部室にあった。
いつもと違うことといえば、恒久の姿が小さく見えることくらいか。
結局、アカを含め、恒久以外の3人は、無事にノリの課題をクリアしており、唯一失敗した恒久も、
「なんだよ、79点って。あと1点じゃねーかよ・・・」
ギリギリのところで、クリアに届かなかっただけのようであった。
それでも、79点は79点なのであるが。
「うるせぇよー」
恒久がどこへともなくつっこんでいると、ノリが部室へとやってくる。
「あー、早速だが、恒久。お前これから罰ゲームな。ちょうどさっき、警察署から連絡があった。以前『借り』にしてた件、今日返せだとさ。」
まだ立ち直れていない恒久に代わって、ソウがその言葉に返す。
「それって、軽犯罪の捜査協力を忍者部にしろっていう?」
「それだ。最近多発しているひったくり事件の捜査に協力しろだとさ。
別に解決する必要はないらしい。ガクが付くらしいから、怪しいやつ見かけたらアイツに連絡すりゃいいだけの簡単なお仕事なんだとよ。
犯罪捜査を『簡単なお仕事』とか言うあの署長も、どうかと思うがな。」
そう言いながら呆れ顔をするノリに、恒久が心配そうに口を開く。
「犯罪捜査におれだけって、大丈夫なんですか?」
「ん?大丈夫だろ。そもそも逮捕しろって言われてるわけじゃないんだ。見回り増やす程度のつもりなんだろうから、こっちの手をわざわざ増やしてやる気にもならん。」
その時、ノリの言葉を聞いていた重清がスッと手を挙げる。
「ノリさん、これ、おれも行っていいですか?」
「ん?どうした?『お前は全科目80点以上取った』だろ?」
一部の言葉を強調し、かつ、恒久に目を向けながらノリが答える。
「元はといえば、警察に協力することになったのはおれの責任です。だから・・・」
「まぁ、重清が行きたいのであれば、止める理由もないけどな。」
「そ、そんな!?シゲ!ってことは、俺は一人で、お前のばあさんと修行することになるのか!?」
「あ。」
ノブの悲痛な叫びに、そのことをすっかり忘れていた重清が声を漏らす。
「いいよ、ゴリ。あんたも行っておいで。」
「ひぃっ!」
突然背後から現れた雅に、ゴリラが小さく悲鳴を上げるながらも、自分を取り戻して雅に向く。
「い、いいんですかい?」
「あぁ。ゴリラとはいえ、男と2人っきりだなんて、あの人に顔向けできないからねぇ。」
雅が笑ってそれに答える。
もう、ゴリラの件に関しては、誰もつっこまないのであった。
「雅様の許可もおりたことだし、今回は恒久と重清、それにゴリ、じゃなくてノブの3人が依頼を受けるってことで。一応表向きは、社会科見学ってことにしてるから、よろしくー。」
「あー、ゴリや。さっきの言葉、忘れてないからね。明日は覚悟おしよ。」
軽いノリと、おもーい雅の言葉に見送られながら、3人と1匹はガクに会うために警察署へと向かうのであった。
重清が、実力試験の結果を受け取っていると、どこからか叫び声が聞こえてきた。
((あ、ツネだな。))
重清と聡太は、同時にそう感じていた。
新たな修行から一週間、それぞれが修行と試験対策に奔走し、無事に実力試験は終了していた。
先程の叫び声から、一概に『無事に』とは言えないのかもしれないが。
とにかく、その日は試験から更に数日経ち、試験結果の返却される日となっていた。
恒久の叫び声を聞きつつ、重清は自身の手にある試験結果に目を落とす。
----
国語86点、数学91点、理科89点、社会83点、英語82点
----
そう、重清は、無事にノリの課題をクリアしていたのである。
彼はこれまで、幾度となくバカにされてきてはいるが、基本的にやれば出来る子なのであった。
「ちっ。」
どこからともなく、雅の舌打ちが聞こえてきたような気がする重清であったが、そんなことは気にしないのである。
「えーっと、シゲ、どうだった?」
重清同様、どこからか聞こえてきた舌打ちを無視して、聡太が重清の結果を覗き込む。
「ん?余裕でクリア。ソウは?」
「もちろん、クリアだよ。」
そう言って聡太が差し出す結果を見た重清は、
「って、オール90越えかよ!」
「ちょっ、シゲ、声が大きいよ!試験のほとんどは小学校で習ったことだったんだから、このくらい大したことないって!」
「お前それ、あいつらに面と向かって言えるか?」
重清の叫びに慌ててフォローを入れる聡太に、重清がある方向を見ながら呟く。
聡太がその視線の先に目を向けると、そこには肩を落として慰め合う後藤、藤田、原田の姿があった。
どうやら、あまり成績がよろしくなかったようで、先程の重清の叫びも耳には入っていなかったようである。
「正たちには、内緒にしといてね?」
「まぁ、おれもアイツらには自分の点数言いたくはないからなぁ。」
お互いにそう言って、周りに負のオーラを漂わせる3人に、ただただ憐れむ視線を送る2人なのであった。
その日の放課後、重清達の姿は、いつものように忍者部の部室にあった。
いつもと違うことといえば、恒久の姿が小さく見えることくらいか。
結局、アカを含め、恒久以外の3人は、無事にノリの課題をクリアしており、唯一失敗した恒久も、
「なんだよ、79点って。あと1点じゃねーかよ・・・」
ギリギリのところで、クリアに届かなかっただけのようであった。
それでも、79点は79点なのであるが。
「うるせぇよー」
恒久がどこへともなくつっこんでいると、ノリが部室へとやってくる。
「あー、早速だが、恒久。お前これから罰ゲームな。ちょうどさっき、警察署から連絡があった。以前『借り』にしてた件、今日返せだとさ。」
まだ立ち直れていない恒久に代わって、ソウがその言葉に返す。
「それって、軽犯罪の捜査協力を忍者部にしろっていう?」
「それだ。最近多発しているひったくり事件の捜査に協力しろだとさ。
別に解決する必要はないらしい。ガクが付くらしいから、怪しいやつ見かけたらアイツに連絡すりゃいいだけの簡単なお仕事なんだとよ。
犯罪捜査を『簡単なお仕事』とか言うあの署長も、どうかと思うがな。」
そう言いながら呆れ顔をするノリに、恒久が心配そうに口を開く。
「犯罪捜査におれだけって、大丈夫なんですか?」
「ん?大丈夫だろ。そもそも逮捕しろって言われてるわけじゃないんだ。見回り増やす程度のつもりなんだろうから、こっちの手をわざわざ増やしてやる気にもならん。」
その時、ノリの言葉を聞いていた重清がスッと手を挙げる。
「ノリさん、これ、おれも行っていいですか?」
「ん?どうした?『お前は全科目80点以上取った』だろ?」
一部の言葉を強調し、かつ、恒久に目を向けながらノリが答える。
「元はといえば、警察に協力することになったのはおれの責任です。だから・・・」
「まぁ、重清が行きたいのであれば、止める理由もないけどな。」
「そ、そんな!?シゲ!ってことは、俺は一人で、お前のばあさんと修行することになるのか!?」
「あ。」
ノブの悲痛な叫びに、そのことをすっかり忘れていた重清が声を漏らす。
「いいよ、ゴリ。あんたも行っておいで。」
「ひぃっ!」
突然背後から現れた雅に、ゴリラが小さく悲鳴を上げるながらも、自分を取り戻して雅に向く。
「い、いいんですかい?」
「あぁ。ゴリラとはいえ、男と2人っきりだなんて、あの人に顔向けできないからねぇ。」
雅が笑ってそれに答える。
もう、ゴリラの件に関しては、誰もつっこまないのであった。
「雅様の許可もおりたことだし、今回は恒久と重清、それにゴリ、じゃなくてノブの3人が依頼を受けるってことで。一応表向きは、社会科見学ってことにしてるから、よろしくー。」
「あー、ゴリや。さっきの言葉、忘れてないからね。明日は覚悟おしよ。」
軽いノリと、おもーい雅の言葉に見送られながら、3人と1匹はガクに会うために警察署へと向かうのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる