おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
63 / 519
忍者部、戦力強化

第59話:走馬灯とクソ兄貴

しおりを挟む
「で、重清、新しい術は気に入った?」
「うん。まぁ。」
公弘の言葉に、重清は歯切れ悪くそう答える。

「まぁ?おいおい、具現獣もいないのに必死に作った術だってーのに、その反応はないんじゃねーか?」
裕二が拗ねる。

「いや、前に先輩がさ、おれの特徴はプレッソとの連携だって言ってたんだ。これだと、鉄玉の術とそんなに変わんないんじゃないかなぁって。それに、どうせだったら、おれの術じゃなくて、プレッソの術でもよかったんじゃないの?」
重清の言葉を聞いた公弘は、笑顔で頷く。

「確かにね。プレッソとの連携の話は後でするとして、敢えてお前の術にした理由から説明してやろう。
プレッソ、鉄玉の術を発動したまま、重清に召喚されたことはあるかい?」
「あぁ、一度あったな。あ。」

「プレッソは気付いたみたいだね。その時、鉄玉の術は解除されたんじゃないか?」
「あぁ、確かにあのときは、今の姿に戻ってたな。」
そう言うプレッソが思い浮かべていたのは、ソウがショウに攻撃されるのを止めようとしたときのことである。

「あのときは、もう一回鉄玉の術使わなきゃいけなかったから、ソウ助けるの間に合わなかったんだよな。」
「あ、あの時か!確かにプレッソ、猫に戻ってたな。」

「それはな、術を使ってたのがプレッソだったからなんだ。その点、重清の術であれば、瞬時に手元に銃化したプレッソを召喚できる。」
「瞬時に?」

「試しに具現獣銃化の術、使ってみ?」

公弘に言われた重清は、具現獣銃化の術を発動してみる。

すると、プレッソの体が光出し、直後に重清の手に、ゲームでよく見るハンドガンのような銃が現れる。

「「おぉーー」」
重清と、銃になったプレッソが感動の声をあげる。

「術の発動で、わざわざ召喚しなくても手元に来るように作ったんだよ。これが一番苦労したんだぜ?」
裕二が得意げに笑う。

「ユウ兄ちゃん、ほんとにありがとう!」
そう言って頭を下げる弟に、
「た、たまには兄貴らしいことしねーとな。」
と顔を赤らめる裕二であった。

「でも、これってさ、弾は?」
頭を上げた重清が裕二に尋ねると、
「ん?ない。」
「「はぁ!?」」
驚いて銃化の術を解除した重清と、猫に戻ったプレッソが声を揃える。
「その説明は、兄さんよろしく。」

「任された。その辺が、さっきの連携ってとこにも繋がって来るんだけど。重清、弾は、お前が作るんだ。」
「へ?」
間の抜けた声を出す重清に、公弘が続ける。

「お前が、弾を出す忍術を作るんだよ。」
「あー、なるほど。でも、そんな術、既にあるんじゃないの?」

それに答えたのは裕二だった。
「兄さんに言われて、色々と調べてみたけど、銃を武具として具現化する忍者ってのは、いるらしいんだ。でも、みんな揃いも揃って、銃と一緒に弾も具現化されるらしい。
それに、昔普通に銃が使われてたときにも、そんな術は作られてないみたいなんだよ。まぁ、これはばあちゃんに調べてもらったんだけどな。」

「なるほど。。。ん?でも、それとプレッソの連携と、どんな関係があるのさ?」

「重清、お前には、これから作る術でできた弾を、プレッソ無しでもある程度攻撃に使えるようになってもらう。そうすれば、プレッソと連携取りながらでも攻撃できるだろ?」
「なるほど!それならおれだけでも攻撃できちゃうからプレッソとの連携もできるね!」

「だろ?ばあちゃんが、他にも方法を考えてるみたいなんだけど、それはまだ聞かされてないんだよ。とりあえず、術をつくって、銃有りと銃無しのどちらでも攻撃できるようにしろーってしか言われてなくてね。」

「ばあちゃんが考えてる方法かぁ。なんか、ものすごーく不安なんだけど。」

「「「御愁傷様です。」」」
公弘と裕二、そしてプレッソが声を揃える。

「いや、プレッソはこっち側だからな!」

「とりあえず今日は、この辺で切り上げるか。」
「え、術作るまで付き合ってくれるわけじゃないの?」

「「彼女と会いたいから、早く帰りたい」」

「はぁ!?2人とも彼女いるの!?じゃなくて!そんな理由!?」

「まぁ、というのは半分冗談で。」
((半分は本気なんだ。))
公弘につっこむ重清とプレッソをよそに、公弘が続ける。

「俺はね、ばあちゃんのこの空間使うの、好きじゃないんだよ。」
「ほぉ、それは面白い話だね。」
悪の帝王、もとい、3人の祖母雅が、公弘の爆弾発言と共に現れる。

「公弘。あんた、あたしのこの空間での修行に反対だって言うのかい!?」
怒りのこもった雅の表情に、重清とプレッソは身構える。

それに対して公弘は、平然とした顔でそれを受け止める。
ちなみに裕二は、その状況を涼しい顔で見てはいたが、額には大粒の汗が浮いていたのであった。

「あぁ、反対だね。」
「理由を聞かせてもらおうか。」
「ばあちゃんのやり方は、じいちゃんの作ったカリキュラムを否定したやり方なんだよ。」
「なに?」

「じいちゃんは多分、中学生達のことを考えて、敢えて部室の使用を3時間に制限してると思うんだ。」
「確かに、この制限はあの人の注文だったけど・・・」

「そうでしょ?じいちゃんは、中学生達の体力の事とかをしっかりと考慮して、そうしたはずなんだ。なのにばあちゃんは、俺達のときもそうだったけど、部室で修行したあと、普通に3日間修行させたりするでしょ?こんなの、じいちゃん聞いたらきっと怒るよ。」

その言葉を聞いた雅は、公弘に身構える隙も与えない程のスピードで、突然公弘に突進する。

(あ、死んだ。)
そう思った時には、公弘は雅の腕の中で抱かれていた。
雅は公弘にハグをかましたまま、呟く。
「ありがとう」と。


その時のことを、公弘は後に語る。
「あの時、リアルに走馬灯が見えたよね。今までの楽しかった思い出、彼女の顔。あー、もう、彼女に会えないんだなぁって思ったよ。」
そう、涙を浮かべて。


公弘を解放した雅の目には、涙が浮かんでいた。
「公弘、お前の言うとおりだね。あたしが間違っていたよ。今まで、すまなかったね。」
そう言って頭を下げる雅に、公弘と裕二は、ただ頷く。

しかし、重清とプレッソは違った。
雅が自身の修行方法について非を認めた。
それはつまり、地獄の修行が無くなることを意味するのだ。
この瞬間、重清とプレッソにとって、公弘はただの『鈴木家の長男(彼女持ち)』ではなくなった。

((か、神様だっ!))

ここに、公弘信仰が興る。

「重清も、今まですまなかったね。これから修行をつけるときは、忍者部の部室を借りることにするよ。さて、短時間で修行をつける方法を考えないといけないね。今までの倍、いや、十倍くらいはきつくしないといけないか?」
そう言って、雅はその場を去っていく。

「「はぁーーー!?」」
悲痛な叫びをあげる重清とプレッソに、公弘と裕二は、憐れむ視線を送ることしか出来なかった。

この瞬間、重清とプレッソにとって公弘は『神』ではなく、ただの『ばあちゃんに死ぬほどの修行を考えるよう焚き付けたクソ兄貴(彼女持ち)』になった。

公弘信仰が終わりを告げた瞬間であった。


後に公弘は語る。
「いやー、まさかそう来るとは思わないよね。でもまぁ、俺にはもう関係ないし、重清とプレッソには頑張ってほしいですね、はい。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

すべて、お姉様のせいです

シエル
ファンタジー
私の姉は聖女だ。 我が家はごく普通の男爵家で、特に貧乏でも裕福でもない まったく特筆すべきことがない家である。 そんな我が家の長女であるアイラが、王立貴族学院へ 入学したことで『特別』になった。 お花畑ヒロインの家族もお花畑なの? そんなヒロイン体質の姉をもつ、セイカの苦労と涙の物語。 ※ 中世ヨーロッパがモデルの架空の世界です。 ※ ご都合主義なので、ご了承ください。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され…… ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

処理中です...