おれは忍者の子孫

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忍者部、戦力強化

第56話:重清の決断と恐怖

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古賀と重清、プレッソが土下座をし続けて数分後。

その間、大人の土下座という、普段見ることのない光景を目の当たりにしている一同は思う。

(一体何を見させられているんだろう。)
と。

そしてそれ以上に、先程古賀達の足元に手裏剣が飛んできたのが、重清の祖母の仕業であろうと気付いた彼らは、心に深く刻み込む。

(シゲのじいちゃんディスるのは、やめよう。)
と。

教え子達が、そんな恐怖を味わっていると、
「さてと。」
と、先程まで見事な土下座を披露していた古賀が、何事も無かったかのように膝に付いた土を落とし、前に卸していた髪をオールバックのように後ろに流しながら立ち上がる。

「俺の洗練された土下座も披露できたし、今日のところはそろそろ解散ってことにしたいけどその前に、これからの予定についてだ。」
そう言って古賀は、全員に目を向けてから話し出す。

「もともとの予定では、今後は個人対個人の模擬戦と、中忍体ルールでの模擬戦を繰り返しながら、それぞれの弱点や欠点を見つけていく予定だったんだけどよ。今日のことで、おれ自身、一度今のカリキュラムと真剣に向き合いたくなっちまった。ってことで、明日1日部活休みにするわ!そのあとのことは、また明後日話す!以上!とっとと帰れ、クソガキども!」

そんな古賀を見て、重清がソウに話しかける。
「おいソウ、古賀先生、キャラ変してからのおれらの扱い、めちゃくちゃ雑だぞ?どうすんだ?」
「いや、知らないよ!どうもしないよ!?できないよ!?もう今日は、色々ありすぎてこっちも処理しきれてないから!っていうか、なんでいつもこういう時にこっちに話をふるのさ!?」
時々発揮されるソウのつっこみ力が、発揮される。

「あぁ、あとひとつだけ。」
掛け軸に向かっていた古賀が振り向きながら、

「ここでの活動の時、『古賀先生』って呼ぶの、もう禁止な。」

「へ?じゃぁ何と呼べば?」
シンが、全員を代表して聞き返す。

「ノリさん、とかでいいよ。なんだったら、『兄貴』でもいいんだぜ?今までは、俺自身『古賀先生』演じてたから気にしてなかったけど、素になった途端、そう呼ばれるの恥ずかしくなってきたんだわ。ただ、そう呼ぶのはここでだけな。学校内では、これまで通り、俺は『古賀先生』演じっから、お前らもこれまで通りに接しろよ。余計なことしゃべったら、生まれたこと後悔させてやっから。よろ~。」

二ィっと笑ってそう言い、古賀は再び掛け軸に向かって歩き出す。
「あ、やべっ、この髪戻さねーと。」
と、先程オールバックにした前髪を元のように前に落としながら。

「兄貴、おつかれっした!」
その背に、重清が声をかけると、古賀はそれに振り向かず、片手だけを上げて応じてそのまま掛け軸から社会科研究部の部室へと戻っていくのであった。


そんな古賀、もといノリが出ていった後も、一同は無言でそのままその場に立ち尽くしていた。
その沈黙を破ったのは、アカだった。

「古賀先生、じゃなくてノリさん、独身だったんだね。」

「いや、今日の総括は絶対そこじゃないだろ!?なんなんだよ、アカ!視点が独特すぎんだろ!?」
「なによ、じゃぁツネだったらなんていうのよ!?」
「そりゃぁお前、あれだ。ノリさん、やっぱリア充憎んでるんだな、って・・・」
「何よ。わたしと似たようなもんじゃない。」
「うぐっ。」
つっこみ番長、つっこみ返されるの巻、である。

「いや~、でも、古賀・・・じゃなくて、ノリさんのあの正確にはびっくりしたね。」
ショウが珍しく心底驚いていたのを見ていたソウが、そんなショウの言葉を聞いてショウに尋ねる。

「やっぱり、ショウさんが1年生のころから、先生は『古賀先生』だったんですか?」
「うん、今日みたいなのは、今まで一度だって見たことない。ずっと、『古賀先生』だったよ。」

「そっか、おれだって驚いたと思ってたけど、おれら2年よりも1年長くいたショウさんが、一番これまでの『古賀先生』見てるんですもんね。そりゃ驚きますよね。」
シンが、そんなショウに言葉に納得して口を開く。

「でもさ、あっちの方が接しやすくないか?」
プレッソがそう言ってみんなに目をやる。

「まぁ、確かにな。先生っていうより、ほんとに『兄貴』って感じだしな。」
恒久が、そんなプレッソの言葉に同意する。

「それは言えてるね。少しガラは悪いけど。」
ソウが苦笑いしながら、恒久の言葉に頷き、最後にショウが、
「ま、とにかく。ノリさんのキャラ変問題はさておき。明日は1日休みだ!明日1日休んで、明後日からまた、頑張ろ~~~。」
そう言って締め、
「お~~!」
アカだけがそう返して、その場は解散となった。

重清たち1年メンバーはその後、いつものように『喫茶 中央公園』へ向かう。
ただし、茜だけは友人との約束があるとのことで、一足先に帰っていたのだが。

そして3人は、宿題を広げ、あけみ姉さんが持ってきてくれたコーヒーを口に運びながら話し始める。
なお、プレッソは椅子で丸まって3人の話を聞いていた。

「あのさ、術ってどうやったら覚えられるのかな?」
そんな言葉を発したのは、重清だった。

「どうしたの、急に。」
「いや~、おれ前に、ショウさんから術のこと指摘されてたじゃん?小太郎捜索の時も思ってはいたけど、今日の模擬戦で改めて、ちゃんと考えなきゃな~って思ってさ。」
「あれ、『○○波~~』とかにするんじゃなかったの?」
聡太が重清をからかうと、

「シゲ、お前そんなこと言ってんのかよ!」
恒久が笑いながら聡太に輪をかけて重清をからかい始める。

「いや、マジでどうすればいいかわからなさ過ぎてさ。何にも思いつかないから、だったらカッコ良いやつで、って結論になったわけですよ。」
「な、こいつ、バカだろ?」
プレッソが聡太と恒久に告げる。

「いや、バカなのはわかってたけどよ。」
恒久がプレッソに返しているなか、聡太が重清に視線を向ける。

「シゲさ、おばあさんのところに相談行った方がいいんじゃない?」
「ばあちゃんのとこ??」
「うん、おばあさんって、部室の忍術作った人なんでしょ?だったら、術のこともすごく詳しいんじゃないかな??」

「いや~、それはそうなんだけどさ~。」
「やけに煮え切らないな。何か理由あんのか?」
恒久が、そんな重清の態度にそう声をかける。

「いや、単純に、聞きに言ったら死ぬほど修行させられそうで・・・」
「でもなシゲ。」
そう恒久が話始める。

「お前、血の契約者だろ?雑賀家特有の忍術とかも、たぶんあるぞ?そう言うの、ちゃんと早めに聞きに行って、修行してもらってた方がいいと思うぞ?」
「そっか、ツネはお父さんからも修行してもらっているんだったね。」
恒久の言葉に、聡太が返す。

「あぁ。悔しいが、あのクソ親父との修行はかなり身になってる。だからな、シゲ、辛いのはわかるが、早めにお前んとこのばあさんに相談に行け。」

「・・・わかったよ。明日休みだし、行ってみるよ。」
重清が、悩みに悩み、断腸の思いでそう答え、その隣の椅子ではプレッソが小さく絶望のため息をついていた。

「えらいえらい。よく決断したね。」
聡太が笑いながらそう言って、コーヒーを飲んだ口元をふくために、テーブルに備え付けられたナプキンへと手を伸ばす。

「ひぃっ!」

聡太が突然そんな声を出したことを不審に思った恒久と重清が聡太に視線を送るも、聡太は声を出すこともできないほどにおびえたまま、手に持ったナプキンを2人へと差し出す。

そこには、一言こう書かれていた。

『今すぐ来な』

と。
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