おれは忍者の子孫

メバ

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修行と依頼

第48話:依頼の結果

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扉から入ってきたのは、古賀と、もう1人見知らぬ男であった。
男は、着ている服から判断するに警察官であろうことは容易に想像できたが、警察官とは思えないそのどっぷりとしたお腹を揺らしながら、古賀の後ろを付いて部屋へと入ってきた。

「や、色々と大変だったね。」
部屋に入るなり、古賀は軽い口調で5人に話しかける。

「あの、先生。おれたち逮捕されちゃうんですか?」
重清が不安そうに古賀を見る。

「え?逮捕?されるわけ無いじゃん。面倒なことにならないように、わざわざ私が来たんだから。」

その声を聞いた4人は、緊張から開放されたためか、そのまま座っていた椅子へと崩れ落ちる。

「「「「よかったぁーーー」」」」
「あれ、ショウ、何も話してないの??」
古賀が不思議そうにショウを見る。

「すみません。みんながあまりにも雰囲気重くするから、言い出せなくって笑」

(今、最後に『笑』ってついてなかったか!?)
恒久が心の中でつっこむなか、古賀が話し続ける。

「まぁ、それは良しとして。まったく、どうして犬の捜索だけで警察のご厄介になるかなぁ。」
古賀が、5人にジト目を向ける。

「すみません、おれが気をつけていれば・・・」
重清が申し訳なさそうに頭を下げる。

「ま、起きたことは仕方ない。次から気をつければいいよ。でも、今回の件で警察に借りを作っちゃったよ。」
古賀がため息をつくと、それを引き継ぐように古賀と入ってきた男が口を開く。

「こちらとしては、甲賀さんと忍者部の方々に貸しを作ることができたので、今回の件は非常にありがたいのですがね。」
男が『忍者』という言葉を口にしたことで、翔を除く4人に緊張が走る。

「松本さん、こういったところでその話は・・・」
「おっと、申し訳ない。」
古賀が諌めるように松本と呼ばれた男に視線を送ると、男は悪びれもせず謝罪の言葉を口にする。

「紹介してなかったね。彼は松本さん。この警察署の、署長さんだよ。以前、お偉いさんは我々の存在を知ってるって話したろ?彼もそのお偉いさんなのさ。
彼は、今回の件を不問にしてくれたんだ。あることを条件にね。」

「あること??」
古賀の言葉を聡太が聞き返す。

「そ。忍が丘署管轄内での重犯罪1件に私が、軽犯罪1件に社会科研究部が、それぞれ捜査協力をすることになったんだよ。無料でね。」
「協会を通して依頼をすると、どうしても高くなりますからな。今回は、良い買い物でしたよ。」
松本が、にやりと笑う。

「一応今回の件は、協会にも伝えておきますよ?こちらとしても、無許可での依頼受託は問題になりますので。」
「えぇ、それは構いませんよ。」

古賀と松本が大人な会話を繰り広げる中、翔を含めた5人は思う。

(おれ(わたし)たち、置いていかれている)

と。

そんな彼らの心中を察してか松本は、
「では、協力をお願いしたいときには甲賀さんにご連絡させて頂きます。」
と、一同に声をかけて部屋から出ていくのであった。

松本が部屋から出てすぐ、この部屋で出迎えた警察官が、部屋へと入ってくる。

「チッ、あのジジイ。部屋の外にまで忍者って聞こえてましたよ。」
男は、『忍者』という言葉だけ小声にしながら、悪態をつく。

「ガク、きみもわざわざその言葉を口にしなくてもいいだろうに。」
古賀が呆れながら、男に声をかける、5人に向き直る。

「彼はガク。こいつはお偉いさんなんかじゃなく、こちら側の人間さ。」
「俺は小野田 学(まなぶ)。忍名は、風魔 ガクだ。ノリさんとは、同じ中学の後輩にあたる。それよりお前ら、おれの『冷たい警察官』の演技、どうだった?」

小野田の言葉を聞いて、恒久が驚いたように声をあげる。
「あれ、演技だったんですか!?森本さんとのギャップもあって、めちゃくちゃ怖かったんですよ!」

「はっはっは、ビビってくれたんなら俺の演技も捨てたもんじゃないな。」
そう言って、小野田が笑い、それに釣られるように5人も笑顔になる。

「それに、森本とも仲良くやれたようだな。あいつは、面倒見の良いやつだ。2中の近くの派出所にいるから、何かあったら頼ってやるといい。」
そう言って5人に笑顔を向ける小野田に、古賀がため息をつきながら、
「まったく、あんまりこの子たちを不安にさせないでほしいものだよ。」

「そうは言いますけどねノリさん。たまたまこの警察署には俺がいたからよかったものの、俺達がどこにだっているわけじゃないじゃないですか。だから、事情を知らない人間がどう対応するのか、今のうちに見せてあげるのも優しさってもんじゃないですか?」
「はいはい、おっしゃる通りで。」

(おれ(わたし)たち、また置いていかれている)

再びそう思う5人なのであった。

「さて、俺も仕事に戻りますわ。ノリさん、あのジジイには気をつけた方がいいですよ。」
「きみは、職場での発言に気を付けた方がいいよ。仮にも君の上司なんだから。」
「その辺はわきまえてますよ。じゃ、君らもまたな。今度は、こんなトコで会わないことを祈るよ。」
そう言って、小野田が部屋を出て行ったあと、聡太が口を開く。

「ガクさんって、学って名前なのにガクなんですね。マナでもナブでもなく。」
「それ、彼の前で言わなくて正解だよ。凄く気にしてるからね。」
苦笑いしながら、そう言って笑う古賀。

「同じ中学なのに、先生は甲賀で、ガクさんは風魔。なんで違うんですか??」
茜が、聡太に続いて質問する。
「ああ、それは、単に師が違うからだよ。私が2年に上がるときに、顧問が代わったからね。
よくあることだよ。まぁ、彼の場合は他にも理由があるんだけどね・・・」
と、古賀が寂し気な顔をしてそう答えるのであった。

その後、忍者部一行も警察署をあとにする。

学校へ戻る道すがら、重清が古賀に話しかける。
「古賀先生、小太郎はどうなったんですか?」
「あぁ、プレッソに学校まで連れてきてもらった後、ハチと一緒に飼い主の元に連れて帰ってもらったよ。」
それを聞いた聡太が
「じゃぁ・・・」
と声を出すと、
「あぁ、これで、一応依頼は達成だね。」
「「「「よっしゃ~~~!」」」」
古賀の言葉に、4人が声をそろえるのであった。

「でも。」
そんな4人に古賀が水を差す。

「一応達成ってだけで、今回は色々と言いたいこともあるんだからね。ちゃんと評価を受け止めて、精進するように。」

「「「「はぁ~~い」」」」
4人が先ほどとは打って変わって低いテンションでそう答える。

その横で翔が、古賀の言葉に一喜一憂する4人を見て、
(ほんとに、息があってるな~)
と微笑むのであった。


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依頼
うちの可愛い小太郎が、いなくなっちゃったんです。どうか、早く探してください!!

結果
小太郎に怪我もなく、無事に依頼者の元に返すことができた。

評価
依頼自体は達成していますが、警察の厄介になったことが大きなマイナスポイントです。
動物は、急に声をかけると逃げることもあるので、注意しましょう。
プレッソが動物と意思疎通が取れるのであれば、そちらに頼ることも手です。
また、動物を探す際には、思わぬ方向に逃げることもあるため、できれば捜索時は最低2人1組になるよう心がけましょう。
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