おれは忍者の子孫

メバ

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修行と依頼

第44話:雅の恐怖と再会

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「え!じゃぁ、今のカリキュラムって、シゲのおじいさんが作ったものってこと!?」
そんなアカの驚きの声が、『中央公園』に鳴り響く。

「ちょ、茜、声がでかいって!!」
聡太が諭すように小声で茜に話しかける。

今日も今日とて、重清たち以外に客のいない『中央公園』ではあったが、それでもあけみ姉さんが近くにいるため、気を使ってのことだった。

「どうせ今日も客はいなよ。悪かったね。」
誰にともなくつっこみながら、あけみ姉さんが注文したコーヒーを運んでくる。

「あ、あけみさん。いつも騒がしくてすみません。」
「いいんだよ。いつも静かなんだし、たまには元気な声が響いてるほうがこっちとしてもありがたいからね。」
聡太の言葉に、あけみ姉さんが笑って答え、カウンターへと戻っていく。

あけみ姉さんがカウンターに戻ったのを確認して、恒久が重清に話しかける。
「しかしシゲ、前も思ったけど、お前のばあさんって、なんていうか、その、ものすげーのな。」
「あ、それわたしも思った!でも、なんかカッコいいよね!!」
「カッコいい、か?ってか、おれ自身が一番びっくりしてるんだぞ?忍者って知る前は、すげー優しいばあちゃんだったのに。それがあんな鬼ババ・・・」
「!!!重清っ!!」
重清の言葉を遮るようにプレッソが叫ぶと同時に、

「パリーーン」
カウンターの方からそんな音が聞こえる。

「ごめんねーー!カップ割れちゃっただけだから気にしないでーー!」
そんなあけみ姉さんの声が聞こえてくる。
「おかしいなぁ。触ってもいないのに、なんで割れちゃったのかしら?」
そんな声とともに。

その声を聞いた重清とプレッソは、顔を青ざめてガタガタと震えていた。
「し、重清?それにプレッソも。どうしたの??」

「いや、多分さ、さっきのカップ、ばあちゃんがやったんだと思うんだよね。」
「「「へ??」」」

「ばあちゃんさ、昨日言ってたんだよね。いつも見てる、って。昨日の話の流れは、『見守ってるよ』風だったけど、多分、ほぼほぼ監視に近い意味合いな気がしてさ。」
「いやいやいやいや、それは流石にねーだろ!」
恒久が、声を潜めながらも重清の言葉を否定する。

「前にもあったんだよね、こんなこと。ばあちゃんの悪口言ったら、どこからともなくばあちゃんの声が聞こえたりして。ソウ、覚えてる?」
「あ・・・あったね、そんなこと。」
聡太が、顔を引つらせて重清な言葉を肯定する。

「いや、流石にそんなことできるわけ・・・あ。」
「ツネ気がついた?忍者部の部室、ばあちゃんの忍術なんだよ?そんな忍術使える人が、おれみたいなペーペーの忍者監視するなんて、できないと思う?」

重清の言葉に、誰も反論することができない。
いや、反論することができないのではなかった。
監視されているかもしれない。そんな状況で、何かを口にするのが怖かったのだ。

「し、シゲのおばあさん凄いね!あの部室がおばあさんの忍術だなんて!」
アカが、勇気を振り絞って口を開く。
内容は、思いっきり雅のヨイショであったことを、誰も咎めることは出来なかった。
もうこれは、仕方なのないことなのである。

「それに、監視って言い方ひどくない?シゲは可愛い孫なんだから、見守ってくれてるんだよ!!」
アカのさらなるヨイショに、
「まぁ、確かにな!実際、見られてるって思ったら迂闊なこともできないし、ばあちゃんに胸張れる人生送れるってもんだよな!」

((((あ、フォローを真に受けた))))

重清を除く全員が、心の中で呟く。

「ほんと、お前いい性格してるよな。」
「ん?おう!ありがとな!!」
「はぁ。こんなバカが、全てを守れるやつになれるのか?」

ツネの皮肉にも、素直に喜ぶ重清。
それをそばで見ていて、ため息をつくプレッソなのであった。

「それにしても、」
いい感じに『恐怖の監視疑惑』の話題が落ち着いたところで、聡太がここぞとばかりに話題を変える。

「今日の模擬戦、みんな凄かったね!」
「いや、お前もたいがいだったぞ?なんだよあのレーダー。」
恒久が話題を変えた聡太に親指を立てながらもつっこむ。
「いやー、あれにはぼく自身もビックリしてるんだよ?」
「確かに、あのレーダーは反則だわ。」
「それ言うんだったら、アカの新しい術もすごくない!?ってか、めちゃくちゃカッコ良かった!おれもあんな術欲しいよ!!」
「あー、シゲは、ショウさんからそのへんつっこまれたもんね。」
アカの言葉に羨ましそうな表情で割り込む重清に、聡太が見を向ける。



時は少し遡って重清とショウの模擬戦の直後。

「シゲ、ちょっといいかな?」
ショウが、重清に声をかける。

「シゲ、今日は楽しかったよ。ノブとの修行で、接近戦もかなり上達していたね。でも、ちょっと気になったんだけど・・・」
ショウが申し訳なさそうな表情で話を止める。

「ショウさん、気付いたことがあるなら教えてください!おれ、これから全てを守れる男になるために、どんどん強くならなきゃいけないんで!」
「全てを守る??」
ショウが不思議そうにプレッソの方に目を向ける。

「あぁ、こいつが言ってるのまマジだ。こいつとオイラの、目標であり覚悟らしいぜ?」
ニシシと笑うプレッソを見て、
(あ、この笑顔も可愛い。)
そう考えて、すぐに気を取り戻す。

「すごく大きな目標を掲げちゃったね。でも、それなら気づいたことはどんどん伝えてあげないと、だね!」
「ありがとうございます!」
「シゲの現時点での最大の攻撃方法は、鉄玉の術を使ったプレッソを投げること、だよね?」
ショウの言葉に、重清とプレッソが頷く。

「でも、そもそも重清の最大の特徴は、プレッソとの連携だと思うんだ。
ぼくたちには武具しかないけど、シゲにはプレッソがいる。実際、きみたちとの連携には僕も苦労させられた。それを生かさない手はないと思うんだ。
だからこそ、シゲ。きみは別の攻撃手段を見つけた方がいいと思う。」

「別の、手段・・・」
ショウの言葉に、重清は考え込んでしまう。
「ま、すぐに思いつくようなものでもないと思うから、頭の片隅にでも置いておいて。」
そう言って、ショウはプレッソに抱き着くのであった。



時は戻って『中央公園』。

「全てを守るのに、攻撃の手段を考えるってのも、なんかな~。」
重清が悩んでつぶやく。
「それこそ、おまえのばあさんに相談してみたらいいんじゃないか?」
頭を抱える重清に、恒久が意地悪そうにアドバイスする。

「ん~。それも考えたんだけどさ。まずは自分で考えてみたいんだよね。多分、少しも悩まずにばあちゃんのとこ行っても、絶対何にも教えてくれないと思うんだ。」

「ちゃんと、シゲのこと考えてくれているんだね。」
聡太が笑って言うと、重清も嬉しそうに頷く。
「良いばあちゃんだろ?修行が厳しいのが玉に瑕だけどな。」
「すげーでかいキズだけどな!」
プレッソがすかさず重清につっこむと、

「ばあちゃーん、プレッソが厳しい修行望んでるってよ~~」
「や、ちょ、ば、ばあちゃん、違うんだよ!!」
重清の華麗なる裏切りにより、聞いているかもわからない雅に対し、プレッソはただただ言い訳を積み重ねていくのであった。

その後、無駄話をしながらも各々宿題を終わらせた4人と1匹は、『中央公園』を後にする。

「まぁ、
プレッソは宿題とかないけどな。」
恒久がどこへともなくつっこみながら。

恒久、茜と別れた重清は、いつものようにプレッソを頭に載せ、聡太とともに家路へとつく。

と、前方から1人の少女が歩いてくる。
その姿を見た途端、重清の体が硬直する。
(ん?重清、どうしたんだ?)

突然フリーズした重清を不思議に思ったプレッソが、心の中で声をかけながら、重清の視線の先の少女へと目を向ける。

「あ、田中さん。」
聡太が呟く。
(田中さん?あ、あれがもしかして、重清を盛大にふったっていう田中琴音か?)
(うるせーな!そうだよ!ってか、なに呼び捨てにしてんだよ!田中琴音さん、だろーが!)
(はいはい。重清、見てろよ?)

プレッソがそう言って、琴音の方へと駆けていく。
そして。

「にゃぁーーん」
思いっきり猫なで声を出しながら琴音へと近づく。
「あら、きみどうしたの?迷子かな??」
そう言ってプレッソを抱えて、撫でる琴音。

「あー!プレッソ、お前!!」
そう言って琴音へと重清が近づくと、
「あ、す、鈴木くんちの猫??あら、聡太くんも久しぶり。」
「あ、うん。琴音ちゃん、久しぶり。そ、卒業式以来だね。」
「琴音さん、お久しぶり。」

「「「・・・・」」」

3人の間に、ビミョーな空気が流れる。

「えっと、私、用事があるから、行くね。バイバイ、猫ちゃん。」
「にゃーーん」
プレッソが、さらに猫なで声で琴音に答える間もなく、琴音は走り去って行った。

「あーー!なんかスゲー気まずい!しかも、なんでおれだけ名字!?なんでソウは名前で呼ばれてんの!?ってかプレッソ!お前なに琴音ちゃんに抱っこしてもらってんだよ!?」

今の雰囲気にダメージを受けたんだ重清は、ただ騒ぐしかないのであった。

重清恋は、再燃した、のであろうか。

それはまだ、本人にもわからない事なのであった。
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