おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
29 / 519
雑賀(さいが)の血

第27話:恒久対ノブ、アカ対ケン

しおりを挟む
森に出た一同に向き直った古賀が、重清たち4人に対して口を開く。

「じゃぁ、早速模擬戦に入ってみよう!今日のところは、先輩たちが相手をしてくれるからね。」
「いきなり先輩とですか!?」
そう言った古賀に、恒久が声をあげる。
「いや、最初だからこそ、先輩となんだよ。きみたちは今日初めて忍術を使うだろう?いきなり1年生同士で模擬戦をやると、下手すると大事故になりかねないからね。その点彼らなら、きっとその辺は大丈夫なはずだよ。多分ね。」
((((いや、そこは言い切って!))))
4人が心の中でつっこむ。

「それに、今のきみたちでは彼らを傷つけることもできないだろうしねぇ。」
そう言いながら目を向けてくる古賀にイラッとした恒久が、普段の口調を忘れて前に出る。
「そこまで言うんなら、やってやろーじゃねーか!」
「威勢がいいなぁ!よし、お前の相手はオレだ!」
そう言ってノブが前に出る。
「よし、じゃぁ初戦は決まったね。制限時間は5分にしとこうか。2人とも、準備はいいかな?」
「あ、その前に1つ。」
さっきの威勢の直後に聞くことに若干の恥ずかしさを感じながらも、恒久が手を挙げる。
「忍術って、どうやって使えばいいんすかね?」
「一度契約した忍術は、忍力を展開しながら『この術を使う』ことを念じるだけで、簡単に出せるはずだよ。いわゆるショートカットだね。逆に、その方法を使わずにその忍術に必要な心・技・体の力と忍力を練り合わせて発動することもできる。こちらの方法の方が、色々と応用もききやすいんだけど、流石に今日はそれは難しいだろうから、今回は前者の方法を使うといいよ。じゃ、いいかな?他のみんなは少し離れよう。」

恒久とノブ以外のメンバーが離れたことを確認して、古賀が声を発する。

「始めっ!」

その声を聞くと同時に、恒久は武具の手裏剣を具現化する。
そのときには既に、ノブの拳には武具のナックルがあった。
(チッ、具現化一つとってもこの差かよ。)
そう考えながらも、恒久は手裏剣をノブに向けて投げる。
(武具分身の術!)
恒久がそう念じると、投げた手裏剣が4つになる。
1つの本物と、3つの幻術となった手裏剣がノブを襲う。

対するノブは、4つになったことなど気にも止めないようにそのうちの本物である1つの手裏剣をそのまま拳で殴って弾く。
本物が弾かれたことで、他の手裏剣はそのままスッと消えていく。

「なぁ!?」
まさか拳で簡単に本物の手裏剣を弾かれると思っていなかった恒久が声をあげている隙に、ノブが一気に恒久との距離を詰める。
(クソっ、じゃぁ幻刀の術だ!)
そう考えて、術を発動させようよ忍力を展開させる恒久。しがし。

(発動しねぇ!どうなってんだよ!)
そう思っている間に、ノブはすぐ近くまで来ていた。
慌てて恒久は、土穴の術を発動させる。しかし地面に穴が空いたときには既にノブはその場を通り過ぎており、
「そこまで!」
恒久の目の前に、ノブの拳があるのであった。

「んー、ノブさぁ。一気に決めすぎだよ?もう少し恒久の動きを見たかったのにー。なんのための模擬戦なのさ。」
と、ジト目でノブ見る古賀に、
「すんません。つい。」
と、ショボーンとしながらノブが答えるのであった。
((((いや、いかつい男のショボーン姿とか見せられても))))
そんな4人の心の声など知る由もない古賀は、
「恒久、悪かったね。もう一戦やる?」
と恒久に聞くも恒久は、
「いえ、先輩方との差を実感出来ただけでも収穫はありましたので。ノブさん、ありがとうございました。」
そう言ってノブに頭を下げる。
「ハッハッハ!そう言ってもらって助かる!」
先程までのショボーンな姿とうってかわって、ノブが豪快に笑いながら親指を立てるのであった。

「さて、じゃぁとりあえず模擬戦の評価は最後にまとめてするとして、次にいこうか。誰かやるかな?」
「はい!わたしやります!」
古賀の言葉にアカが前に出ながら答える。
「こっちはおれが。さっきの猿みたいなことにはならないようにする。」
「うぉぉい、ケン。猿はないだろ猿は。せめてゴリラにせんかい!」
(((ゴリラはいいんだ)))

アカ以外の3人の心のつっこみをよそに、アカとケンが前に進み出る。
そして、お互いが距離を取って向かい合い、
「始めっ!」
古賀の声が響き渡る。

「火鎧の術!」
アカがそう言うと、アカの周りに火が現れ、アカの体を包んでいく。そしてアカは、同時に手甲を具現化する。
アカは火を腕、体、そして足に纏い、考える。
(体の力で拳を強化できるのなら・・・)
アカは体の力を足へと集中させ、ケンへと向かって走り出す。
(やっぱり、スピードがあがってる!)
「ほう。」
それを見たケンは、感心して既に具現化していた刀を構える。
そしてアカから突き出された拳を回避して、アカの後ろへと回り込む。
(わかる!後ろにいるのがわかる!)
そう思ってアカが後ろを振り向くと、既にケンの刀がアカへと振り下ろされるところであった。
アカは咄嗟に、手甲で刀をガードする。
しかしケンの刀は、アカの手甲に当たると同時に、霧のように散る。
(幻術!?)
アカがそう思った途端、火の鎧を纏う腕に衝撃が走る。
その衝撃に驚いたアカは、すぐにその場から距離を置き、衝撃のあった腕に目をやる。

「安心しろ。この刀、切れないようにしてる。それより腕の具合、どうだ?」
ケンがアカに話しかける。とても模擬戦の途中だとは思えない程に普通に。
「あれ、思ったほど痛くない!」
「そうか。じゃ。そろそろおしまい。」
そう言ってケンがアカへと向かってくる。
先程ごく普通に話しかけられたことによって油断してしまっていたアカは、ケンの攻撃に対応できないと判断してその場から逃れようとする。
(うっ、足が。)
そう思って自分の足に目を向けると、植物がアカの足に絡みついていた。

アカが足から目線を上げたときに初めて、ケンの刀が首筋に当てられていることにアカは気づく。

「そこまで!」
古賀の声がまた、鳴り響く。

「ノブ、こういうこと。」
ケンがノブに対してニヤリと笑いながら言う。
「わ、わかっとるわい!嫌味なやつだ!」
ノブが拗ねたようにそう返す。

「さてと、次にいこうか。どっちがやるかな?」

これまで、人と戦うということにどこか尻込みしていたソウが、恒久とアカの模擬戦に触発されて、前に進み出る。
「ぼ、ぼくがやります!」
「じゃ、次はおれかな?」
そう言って、シンが前へと出てくる。
そして二人が、向かい合う。

「始めっ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...