3 / 39
守銭奴、転生する
第2話:スキル【貯蓄】
しおりを挟む
森か。
転生っていうくらいだから、生まれるところからのスタートだと思ったがそうではないらしい。
体を動かしてみたが、多少若くなってる気がする。
死ぬときは30だったが、今は20代前半か、下手したら18くらいか。
なんとなく、部活全盛期くらいには動きそうな気がするな。
こっちの方が助かるけど、身分の証明とかどうなってんだ?
いきなりこの姿なら、親もいねーんじゃねーのか?
それとも、この世界に行きてるヤツの体だけ乗っ取ったのか?
いや、多分それはない。
見たところ今は手ぶらだ。こんな森で何の装備もなしってわけはないだろう。
「おっと。それより、スキルってヤツを確認してみるか」
俺はそう呟いて、念じた。
「おぉ、ほんとに出てきたよ」
俺の目の前には、ゲーム画面の様にこんな表示が現れた。
-----------
名前:キンジ
職業:平民
スキル:貯蓄 Lv.1
-----------
は?こんだけ?
ステータス的なのはないのかよ。
それに、職業が平民ってのはなんとなかわかるが、それにもレベルはなし。
で、スキルは【貯蓄】と。
よくわかんねーけど、気に入った。
結局俺は、金貯めるしか能がないってことか。
まぁ、いいんだけどな。
いいさ。ここでも俺がやることは変わらねぇ。
ガンガン金貯めてやるよ。
でも、前回の死で俺は学んだ。
いくらかねを貯めようと、死んじまったら意味がない。
「もう、無理な貯金はやめだ。金は貯めるが、我慢はしねぇ!食いてえもんあったら食うし、女だって抱いてやる!
俺はこの世界で、好きなように生きてやるよ!!」
俺が高らかに宣言すると、近くの茂みからガサガサと音が聞こえ、そこからイノシシのような生き物が現れた。
「は?」
俺が突然の来客にすっとぼけた声を上げている間に臨戦態勢を整えたイノシシっぽい生き物は、そのまま俺に向かって突進してきた。
「うわっ!!」
俺は咄嗟に、身を反らしてその突進を避けた。
(よし、なんとか避けられる!この体、俺の全盛期なんかよりも全然スペック高い!)
そう思いながら俺は、再び来るであろうイノシシへと視線を向けて、絶句した。
イノシシは、俺の背後にあった木々をなぎ倒しながら進み続け、5本程の木を倒したところで立ち止まってこっちに向き直っていた。
(いやいやいやいや、死ぬわ!あんなん当たったら一発で死ぬわ!!転生直後にゲームオーバーだわっ!!あんな攻撃、一発だって当たったら終わりだわ!!!)
俺が冷たい汗を感じながら、どう逃げるか考えようとしていると、突然頭の中に機械的な声が聞こえてきた。
『スキル【貯蓄】に、物理攻撃、単位は1発、で登録しますか?』
(は?なんだよ急に。
スキルに攻撃を登録?
って、もう来やがった!!
あぁもう!なんだか知らねーけど、イエスだ、イエス!!)
俺が機械的な声におざなりに返事をするのと同時に、イノシシは俺の方へと向かってきた。
(スキル【貯蓄】に、物理攻撃、単位1発で登録しました。現在の貯蓄可能数は、2発です)
頭に流れる機械的な声を聞きつつ、一直線に突進してくるイノシシを見て、俺は少し安堵した。
(イケる。この体なら、こんな直線攻撃何度かは避けられる。あとは、スキを見つけて、逃げる!!)
俺は思いのほか性能の高かったこの体に自信を持ち、イノシシが目前に迫るのを待ってヒラリとそれを避けた。
「はぁ!?」
かに思えたのにイノシシの野郎、突然方向転換しやがった。
なんだよ。猪突猛進じゃねーのかよ。
あー。俺の転生、ゲームオーバー。
俺は諦めムードで、イノシシの突進をこの身に受けた。
はずだった。
「「??」」
何故かおれの体に鼻先を付けただけのイノシシと俺は、何が起きたのかも分からず互いに首を傾げていた。
っていうか、イノシシって首傾げるのな。
俺がそんなくだらねぇこと考えてる間に、先に自分を取り戻したイノシシは、その場で再び、俺に突進してきた。
しかしまたしても、イノシシはオレの体に降れた途端立ち止まっていた。
「ブモォーーー!!」
痺れを切らしたのか、イノシシはそう吠えながらそのまま首を振って暴れだした。
「うぉっ!!」
振り回されるイノシシの頭が俺の体に直撃し、今度こそ俺はそのまま吹き飛ばされて近くの木に体を打ち付けた。
ゼロ距離だったから大したダメージじゃない。けど。
「クソ痛ぇっ!!」
俺が体の痛みにそう叫んだとき、またしても脳内に機械的な声が響いた。
『相手の攻撃を貯蓄したことにより、派生スキル【返済】が使用可能となりました』
またわけわかんねーことを。
いや、待てよ。攻撃の貯蓄に、返済だぁ?
もしかして・・・・
試してみる価値はあるか。
あークソ。体中痛ぇ。あと一回避けるのが限界だぞ?
これでダメだったら、そんときはそんときだな。
死を目前に全てが面倒くさくなった俺は、半ば諦めの境地でイノシシと対峙した。
イノシシの野郎、俺を待っていたかのように笑ってやがる。
イノシシも笑うのな。
あークソ。馬鹿なこと考えてるうちに向かってきやがった!
「てめーの攻撃、きっちり返済してやるよ!!」
向かってくるイノシシにそう叫んだ俺は、イノシシが目前に迫る瞬間、一歩前に出た。
「ぐっ!」
腕にイノシシの鼻先を掠めながらもなんとかヤツの側面に出た俺は、方向転換しようとするイノシシの横っ腹を、思いっきり殴りつけながら念じた。
(返済っ!!)
それの拳がイノシシの胴体に触れた瞬間、生き物を殴ったことのない俺でもわかるくらいの衝撃がヤツへと巡り、そのままイノシシは吹き飛ばされていった。
「っしゃぁ!!」
そのまま木々をなぎ倒しながら吹き飛んでいくイノシシに目を向けながら、俺はその場で吠えた。
転生っていうくらいだから、生まれるところからのスタートだと思ったがそうではないらしい。
体を動かしてみたが、多少若くなってる気がする。
死ぬときは30だったが、今は20代前半か、下手したら18くらいか。
なんとなく、部活全盛期くらいには動きそうな気がするな。
こっちの方が助かるけど、身分の証明とかどうなってんだ?
いきなりこの姿なら、親もいねーんじゃねーのか?
それとも、この世界に行きてるヤツの体だけ乗っ取ったのか?
いや、多分それはない。
見たところ今は手ぶらだ。こんな森で何の装備もなしってわけはないだろう。
「おっと。それより、スキルってヤツを確認してみるか」
俺はそう呟いて、念じた。
「おぉ、ほんとに出てきたよ」
俺の目の前には、ゲーム画面の様にこんな表示が現れた。
-----------
名前:キンジ
職業:平民
スキル:貯蓄 Lv.1
-----------
は?こんだけ?
ステータス的なのはないのかよ。
それに、職業が平民ってのはなんとなかわかるが、それにもレベルはなし。
で、スキルは【貯蓄】と。
よくわかんねーけど、気に入った。
結局俺は、金貯めるしか能がないってことか。
まぁ、いいんだけどな。
いいさ。ここでも俺がやることは変わらねぇ。
ガンガン金貯めてやるよ。
でも、前回の死で俺は学んだ。
いくらかねを貯めようと、死んじまったら意味がない。
「もう、無理な貯金はやめだ。金は貯めるが、我慢はしねぇ!食いてえもんあったら食うし、女だって抱いてやる!
俺はこの世界で、好きなように生きてやるよ!!」
俺が高らかに宣言すると、近くの茂みからガサガサと音が聞こえ、そこからイノシシのような生き物が現れた。
「は?」
俺が突然の来客にすっとぼけた声を上げている間に臨戦態勢を整えたイノシシっぽい生き物は、そのまま俺に向かって突進してきた。
「うわっ!!」
俺は咄嗟に、身を反らしてその突進を避けた。
(よし、なんとか避けられる!この体、俺の全盛期なんかよりも全然スペック高い!)
そう思いながら俺は、再び来るであろうイノシシへと視線を向けて、絶句した。
イノシシは、俺の背後にあった木々をなぎ倒しながら進み続け、5本程の木を倒したところで立ち止まってこっちに向き直っていた。
(いやいやいやいや、死ぬわ!あんなん当たったら一発で死ぬわ!!転生直後にゲームオーバーだわっ!!あんな攻撃、一発だって当たったら終わりだわ!!!)
俺が冷たい汗を感じながら、どう逃げるか考えようとしていると、突然頭の中に機械的な声が聞こえてきた。
『スキル【貯蓄】に、物理攻撃、単位は1発、で登録しますか?』
(は?なんだよ急に。
スキルに攻撃を登録?
って、もう来やがった!!
あぁもう!なんだか知らねーけど、イエスだ、イエス!!)
俺が機械的な声におざなりに返事をするのと同時に、イノシシは俺の方へと向かってきた。
(スキル【貯蓄】に、物理攻撃、単位1発で登録しました。現在の貯蓄可能数は、2発です)
頭に流れる機械的な声を聞きつつ、一直線に突進してくるイノシシを見て、俺は少し安堵した。
(イケる。この体なら、こんな直線攻撃何度かは避けられる。あとは、スキを見つけて、逃げる!!)
俺は思いのほか性能の高かったこの体に自信を持ち、イノシシが目前に迫るのを待ってヒラリとそれを避けた。
「はぁ!?」
かに思えたのにイノシシの野郎、突然方向転換しやがった。
なんだよ。猪突猛進じゃねーのかよ。
あー。俺の転生、ゲームオーバー。
俺は諦めムードで、イノシシの突進をこの身に受けた。
はずだった。
「「??」」
何故かおれの体に鼻先を付けただけのイノシシと俺は、何が起きたのかも分からず互いに首を傾げていた。
っていうか、イノシシって首傾げるのな。
俺がそんなくだらねぇこと考えてる間に、先に自分を取り戻したイノシシは、その場で再び、俺に突進してきた。
しかしまたしても、イノシシはオレの体に降れた途端立ち止まっていた。
「ブモォーーー!!」
痺れを切らしたのか、イノシシはそう吠えながらそのまま首を振って暴れだした。
「うぉっ!!」
振り回されるイノシシの頭が俺の体に直撃し、今度こそ俺はそのまま吹き飛ばされて近くの木に体を打ち付けた。
ゼロ距離だったから大したダメージじゃない。けど。
「クソ痛ぇっ!!」
俺が体の痛みにそう叫んだとき、またしても脳内に機械的な声が響いた。
『相手の攻撃を貯蓄したことにより、派生スキル【返済】が使用可能となりました』
またわけわかんねーことを。
いや、待てよ。攻撃の貯蓄に、返済だぁ?
もしかして・・・・
試してみる価値はあるか。
あークソ。体中痛ぇ。あと一回避けるのが限界だぞ?
これでダメだったら、そんときはそんときだな。
死を目前に全てが面倒くさくなった俺は、半ば諦めの境地でイノシシと対峙した。
イノシシの野郎、俺を待っていたかのように笑ってやがる。
イノシシも笑うのな。
あークソ。馬鹿なこと考えてるうちに向かってきやがった!
「てめーの攻撃、きっちり返済してやるよ!!」
向かってくるイノシシにそう叫んだ俺は、イノシシが目前に迫る瞬間、一歩前に出た。
「ぐっ!」
腕にイノシシの鼻先を掠めながらもなんとかヤツの側面に出た俺は、方向転換しようとするイノシシの横っ腹を、思いっきり殴りつけながら念じた。
(返済っ!!)
それの拳がイノシシの胴体に触れた瞬間、生き物を殴ったことのない俺でもわかるくらいの衝撃がヤツへと巡り、そのままイノシシは吹き飛ばされていった。
「っしゃぁ!!」
そのまま木々をなぎ倒しながら吹き飛んでいくイノシシに目を向けながら、俺はその場で吠えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる