推しの悪役令息に転生しましたが、このかわいい妖精は絶対に死なせません!!

もものみ

文字の大きさ
上 下
9 / 9
バッドエンド回避計画!

第九話

しおりを挟む
「やっぱりここ、すっごくいい場所だなあ…」

 あたり一面に広がる青。その正体は一面に咲き誇る小さく可憐な花々。青いネモフィラやブルーエルフィンといった青い花を中心に、カスミソウやスズランなど白い花もちらほら生えていて、美しい様相を描いている。前世の世界ではありえないような光景だが、この世界、特に自然豊かなフォーサイス領では、こういった花々は野生に群生するようになっている。

「ふふ、ここは植物いっぱいだし、最高の世界だ…」

 これ以上やるとまた倒れてしまいそうなので、いったん魔法の練習を中断して休憩することにする。

(ぽかぽか暖かくて気持ちいいなあ…)





「あ…」

 セオドアはいつの間にか目を覆って眠ってしまっていたようだ。ふと目を覚ますとまだ日は高く、それほど時はたっていないように感じられた。

(うーん、やっぱりこの体は体力がないなあ…)

 そっと体を起こすと近くのブルーエルフィンに蝶がとまっていた。

(ちょうちょ…驚かせたかな。)

 ぼんやりと様子を見ていると、蝶が花から羽ばたきふわりとセオドアの方に飛んできた。

「わ、」

 とっさに手を胸の前に持ち上げると、すっと美しい蝶がテオの指にとまった。

「ふふ、かわいいね。」

 セオドアはその日の午後を穏やかに過ごしたー----その様子を見ているものの存在には気づくことなく。





◇◇◇◇◇




「今日は何をしていたんだい?」

 夕食時、オスカーがいつもの問いをセオドアに投げかける。

「今日は先生方がお休みだったから、庭で魔法の練習をしたりしてたよ。」

 にっこりしながらセオドアが言う。

「そうか。魔法や勉強の調子はどうだい?」
「勉強は、マナーと歴史、算術をやってるよ。先生が褒めてくれるから、ちょっと照れるけど楽しい。」

 セオドアがはにかむ。セオドアは前世で25年生きた記憶がある。当然簡単な算術などはできるし、歴史も、覚えるポイントが分かるので簡単にできてしまう。それを大げさなほどに褒められるので、セオドア絵推しては少し恥ずかしいのだ。

(まあ、人生二週目だしね…。でもそれだけじゃなくて、多分テオのポテンシャルもあるんだよなあ。覚えたいことがすっと頭になじむ気がする。)

 そんなことを思っていると、オスカーがうれしそうに微笑みながら話す。

「ふふ、教師が褒めていたよ。すごく優秀だってね。」
「へへ…。」

 オスカーの愛し気な目線に少し照れる。

(お父様、やっぱり顔がいい…まぶしい…!)

「あ、そ、そうだ、まほう…魔法は……ちょっと体力がなくて…あんまりうまくいかない。」

 セオドアが取り繕って話題を変えるも、目下の悩みを思い出してしまいシュンとなりながら言う。

「…そうなのかい?教師に来てくれている人はテオのこと才能があるって言っていたよ。二つの属性の魔法を扱えるのはすごいし、この年でどちらも中級魔法まで使えるのはすごいって。」
「そうですか…。でもまだコントロールは数分しかできないし、もっと頑張ります!!」

 セオドアがぎゅっと手を握っていう様子をオスカーが眺める。

「ふふ、テオは大人になったね。」

 オスカーが目を細めてうれしそうに言う。

「へへ、そうかな。」

 前世の記憶を思い出したからかな、とは思いつつもセオドアは嬉しそうなオスカーを見られて自然と笑顔になる。

(ゲームではお父様にも迷惑かけちゃってたもんな…。お父様のためにも、断罪回避頑張らないと…!)

「…ところで、今日は相談があってね。」

 セオドアがひっそりと決意を固めていると、オスカーが真剣なトーンで言った。

「相談?」
「ああ、実はねー----義弟ができるの、嫌かい?」

 ピシャーーン

 まさしくその擬音に相応しい衝撃がセオドアの身に走った。

 義弟。義弟。おとうと。

 セオドアはこの時すっかり忘れていた事実を思い出した。

(しまった!!すっかり忘れてた!!!ウィルのことだ!!)

 ウィリアム・フォーサイス。愛称はウィル。フォーサイス家に養子に入り、悪役令息セオドアの義弟になるー-------『Baby's breath』の攻略対象の、最も危険なキャラの一人のことを。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

オタンコナス

おすすめに出てきたので読んでみたら、面白くて読み進んでしまいました!
お忙しいとは思いますが、今後の展開を楽しみにしております!

解除
KanonDiMajor
2024.01.24 KanonDiMajor

でも、どうか、私はまだ不安なままです。
メキシコからこんにちわ。

解除

あなたにおすすめの小説

可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~

狼蝶
BL
――『恥を知れ!』 婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。 小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。 おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。 「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい! そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼毎週、月・水・金に投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

悪役令息に転生したので、断罪後の生活のために研究を頑張ったら、旦那様に溺愛されました

犬派だんぜん
BL
【完結】  私は、7歳の時に前世の理系女子として生きた記憶を取り戻した。その時気付いたのだ。ここが姉が好きだったBLゲーム『きみこい』の舞台で、自分が主人公をいじめたと断罪される悪役令息だということに。  話の内容を知らないので、断罪を回避する方法が分からない。ならば、断罪後に平穏な生活が送れるように、追放された時に誰か領地にこっそり住まわせてくれるように、得意分野で領に貢献しよう。  そしてストーリーの通り、卒業パーティーで王子から「婚約を破棄する!」と宣言された。さあ、ここからが勝負だ。  元理系が理屈っぽく頑張ります。ハッピーエンドです。(※全26話。視点が入れ代わります)  他サイトにも掲載。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ
BL
皇子殿下(7歳)に転生したっぽいけど、何も分からない。 侍従(8歳)と仲良くするように言われたけど、無表情すぎて何を考えてるのか分からない。 分からないことばかりの中、どうにか日々を過ごしていくうちに 主人公・イリヤはとある事件に巻き込まれて……? 思い出せない前世の死と 戸惑いながらも歩み始めた今世の生の狭間で、 ほんのりシリアスな主従ファンタジーBL開幕! .。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ HOTランキング入りしました😭🙌 ♡もエールもありがとうございます…!! ※第1話からプチ改稿中 (内容ほとんど変わりませんが、 サブタイトルがついている話は改稿済みになります) 大変お待たせしました!連載再開いたします…!

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。