推しの悪役令息に転生しましたが、このかわいい妖精は絶対に死なせません！！

まさかの転生

第三話

◇◇◇◇◇




「ん……」

　楓がふと目を開ける。幼い体は体力がなく、どうやら自室に机でうたた寝していたようだ。

（あれは夢…じゃないよな。…そっか、やっぱり僕は死んで転生したんだな。）

　楓はふう、と一つ息を吐く。

（でも前世の植物たちは無事みたいだし、あの時妹も学校で店には来てなかったし、両親も家にいた。ってことはみんな無事なんだよな…。ならよかった。）

　ここで楓は頭を切り替える。心残りだった植物たちのことも解決したし、家族も無事だ。となると次は自分のことを考えなければならない。もう一度、分かっていることや現在の状況を整理し、今度こそ紙に書き出してみることにする。

　まず、転生後の名前はセオドア。セオドア・フォーサイス。愛称テオ。公爵家の一人息子で儚げな容貌が魅力の美少年。現在6歳だが6歳にしてすでに完成された美しさを持っており、その見た目はさながら妖精そのものだ。そしてその見た目から後に＜妖精令息＞と呼ばれることになるーーーーーーーというのは、前世、鈴木楓だった時に得た知識だ。セオドア・フォーサイスはゲーム『Baby's breath』の中に登場するキャラクターの一人なのだ。
　『Baby's breath』は楓の妹が勧めてきたゲームなのだが、内容は剣と魔法の世界が舞台の、いわゆるBLゲームなのだ。ちなみにその影響なのか、今セオドアがいる世界には女性はいない。女性という概念そのものが存在しないのだ。ただしその代わり男性でも妊娠して子を成すことができる。しかしその出生はあまり高くはなく、そのためセオドアの国では一夫多妻制がとられている。

（まあうちではお父様はお母様が亡くなった後も結局第二夫人をとらずに過ごすからあんまり関係ないんだけどね。って話がそれたな。えっと、ストーリーは…）

　平民出身にもかかわらず大変珍しい光の魔力を持つヒロインが、ほとんどが貴族という魔法学園に入学して攻略キャラ達との交流を経て永遠の愛を見つけ出す、というストーリー。よくあるシナリオのゲームなのだが、とにかく作画が綺麗で、腐女子腐男子でなくてもプレイする人がいる程に一部から絶大な人気があった。
　このゲームはコンセプトもよかった。このゲームは多様な花や植物がキャラの名前や地名のモチーフとなっている。たとえばこのゲームのタイトル”Baby’s breath”はカスミソウの別名で、カスミソウの花言葉は”永遠の愛”。ヒロインのハッピーエンド、“永遠の愛を見つけだす”というところとつながっているのだ。
　楓は妹にゲームに出てくる植物の説明をしてやっていると、ふいに「お兄ちゃんもやってみたら？」と言われてプレイし始めたのだ。コンセプトを妹から聞いていたのでなんとなく程度で始めたのだが絵が綺麗で好感を持ち、その後すぐに楓はこのゲームにドはまりすることになる。というのは、楓の今世、セオドア・フォーサイスの影響だった。

　楓、いや、セオドアは手元の小さな鏡で自分の顔を見てため息をつく。

（はあ、やっぱりー－－－ー－