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毒蛇との邂逅
第二十四話
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心のなかで誰にも鉢合わせませんように、と祈りながらぎゅっともう一度フードを握り、ささっとフロアを偵察する。最小限の時間で最大の情報を!と思って懸命に見渡したが、これといった情報は得られなかった。いかんせん部屋数も少ないから不備があって空き部屋、みたいなのもなさそうだし。確かめられることと言えば部屋の位置関係くらいか。
リスクをおかしたわりに乏しい結果にやや落ち込み、俺は撤退することにした。うん、エレベーター丁度6階にあるし乗らせてもらうか。5階で誰か乗ってきたら降り損ねてしまって…とかなんとか言い訳しよう。まあ大丈夫だろう。
これがいけなかった。何事も、まあ大丈夫だろう、と思った瞬間にそれは大丈夫じゃなくなるのだ。そもそもよく考えたらエレベーターが6階にあるということはつまり誰かがついさっき6階で降りたということで、この時間に部屋に来たということは何かを取りに来ただけと言う可能性も十分にあって…まあ、何を考えても今さら後の祭りでしかないのだが、つまるところ俺は…
「ここで何してるの?」
生徒会の誰かに見つかってしまったのだ。
声がかかった瞬間に思わずビクッとなってしまう。どうする?逃げるか?いや、でも逃げるとしたら階段だが、今エレベーターを待っていた俺の後ろから声がかかったと言うことは、位置的に考えて階段に向かって走り出す前に捕まってしまうだろう。ということは、あれしかないか。俺はさっと後ろを振り返った。
「す、すみません…!!僕、今年からこの寮に移ってきたのですが、とんでもなく方向音痴で…間違ってこのフロアに来てしまいまして…着いてしまってから生徒会のフロアだったことを思い出しまして…す、すぐ帰ります!ですので見逃していただけませんか…!」
フードをとらないまま喋るわけにはいかないが顔も見られたくないから、俺は振りかえってフードをとってすぐに頭を深々と下げた。ふるふると震える演技も忘れていない。いや、半分ガチ震えもあるが。
OKもらえた瞬間に階段にダッシュしよう。頼む、これで許してくれ…!
「ふーん、なるほど?」
ちらっとだけ顔をうかがうと、にっこりしながら顎にてを当てて首をかしげる王子様系イケメンがいた。サラサラの茶髪に白い肌、瞳も甘いキャラメルブラウンといった色味だ。これまたまっぶしい顔だな…。小顔で足も長く、背は高いががっしりというよりはすらっとしていて本当に物語の王子様といった感じだ。やっぱり生徒会役員で間違いない。しかしこの王子様イケメン、にっこにこのくせして声が驚くほど冷たい。氷点下だ。さむいさむい…凍えてまた震えが…。蛇に睨まれた蛙状態。いや、俺の場合蛇ににらまれた兎?いや、それだとこの王子様イケメンが蛇になってしまうな。
とかなんとか無駄なことを考えて王子様イケメンの言葉の続きを待った。無限とも感じられる地獄の時間だ。え、なるほどから何にも返してくれないんだけど…帰ってもいいのか…?仕方ない、少しだけ顔あげて聞いてみるか。
「あ、あの…行ってもいいですか…?」
「ん?ああ、うーん、そうだね……きみ、ちょっと顔…」
イケメンが言いながら未だほぼ完全に頭を下げた体勢の俺の顔を掬い上げようとする。
ま、まずい!顔見られる…!うう……できれば避けたかったけど…仕方ない…
「あ、こんなとこにいた。」
顔を見られる覚悟を決めて拳をぐっと握りしめたところで、イケメンの後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。
リスクをおかしたわりに乏しい結果にやや落ち込み、俺は撤退することにした。うん、エレベーター丁度6階にあるし乗らせてもらうか。5階で誰か乗ってきたら降り損ねてしまって…とかなんとか言い訳しよう。まあ大丈夫だろう。
これがいけなかった。何事も、まあ大丈夫だろう、と思った瞬間にそれは大丈夫じゃなくなるのだ。そもそもよく考えたらエレベーターが6階にあるということはつまり誰かがついさっき6階で降りたということで、この時間に部屋に来たということは何かを取りに来ただけと言う可能性も十分にあって…まあ、何を考えても今さら後の祭りでしかないのだが、つまるところ俺は…
「ここで何してるの?」
生徒会の誰かに見つかってしまったのだ。
声がかかった瞬間に思わずビクッとなってしまう。どうする?逃げるか?いや、でも逃げるとしたら階段だが、今エレベーターを待っていた俺の後ろから声がかかったと言うことは、位置的に考えて階段に向かって走り出す前に捕まってしまうだろう。ということは、あれしかないか。俺はさっと後ろを振り返った。
「す、すみません…!!僕、今年からこの寮に移ってきたのですが、とんでもなく方向音痴で…間違ってこのフロアに来てしまいまして…着いてしまってから生徒会のフロアだったことを思い出しまして…す、すぐ帰ります!ですので見逃していただけませんか…!」
フードをとらないまま喋るわけにはいかないが顔も見られたくないから、俺は振りかえってフードをとってすぐに頭を深々と下げた。ふるふると震える演技も忘れていない。いや、半分ガチ震えもあるが。
OKもらえた瞬間に階段にダッシュしよう。頼む、これで許してくれ…!
「ふーん、なるほど?」
ちらっとだけ顔をうかがうと、にっこりしながら顎にてを当てて首をかしげる王子様系イケメンがいた。サラサラの茶髪に白い肌、瞳も甘いキャラメルブラウンといった色味だ。これまたまっぶしい顔だな…。小顔で足も長く、背は高いががっしりというよりはすらっとしていて本当に物語の王子様といった感じだ。やっぱり生徒会役員で間違いない。しかしこの王子様イケメン、にっこにこのくせして声が驚くほど冷たい。氷点下だ。さむいさむい…凍えてまた震えが…。蛇に睨まれた蛙状態。いや、俺の場合蛇ににらまれた兎?いや、それだとこの王子様イケメンが蛇になってしまうな。
とかなんとか無駄なことを考えて王子様イケメンの言葉の続きを待った。無限とも感じられる地獄の時間だ。え、なるほどから何にも返してくれないんだけど…帰ってもいいのか…?仕方ない、少しだけ顔あげて聞いてみるか。
「あ、あの…行ってもいいですか…?」
「ん?ああ、うーん、そうだね……きみ、ちょっと顔…」
イケメンが言いながら未だほぼ完全に頭を下げた体勢の俺の顔を掬い上げようとする。
ま、まずい!顔見られる…!うう……できれば避けたかったけど…仕方ない…
「あ、こんなとこにいた。」
顔を見られる覚悟を決めて拳をぐっと握りしめたところで、イケメンの後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。
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