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兎と狐のランチタイム
第二十一話
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「…俺は今日の夕飯から自炊しようと思ってるんだけど、キッチン使ってもいい?」
「ん?ああ、ゆき、料理趣味って言ってたもんね。」
「覚えててくれたんだ?そうなんだ!あ、狐塚くんはいつもどうしてるの?」
「いつもは食堂使ってるけど面倒なときはインスタントで済ませてた。」
「そうなの?あ、もしよかったらなんだけど…今日の夕飯、俺が作ろうか?」
料理の腕には自信があるので提案してみたが、どうだろうか?狐塚が驚いた顔で固まったので慌てて保険を掛ける。
「あ、案内してもらったりしたお礼になるかなーと思ったんだけど、もしかして手作りダメだったりする?なら全然、キッチンさえ使わせてもらえれば一人で作って一人で食べるよ…!」
うーん、失敗だったか?手作りダメな人もいるもんな。あわよくばお礼ついでに好感度上がったりしないかなーとか、食堂使ってるんだし気にしないだろ、と思ったんだけど。外食とそれは違う、みたいな人もいるもんな。
「…いや、いいの?なら食べてみたい。」
「う、うん、もちろん!!」
「ふふ、ありがとう。」
了承すると狐塚がふわりと微笑む。うっ、眩しい…!
そんなやり取りをしている間に俺たちの昼食が完成したようだ。おっ、うどん美味しそう。シンプルなきつねうどんだけど出汁のいい香りがとても食欲をそそる。お盆にのせて空いている席まではこび、狐塚と向かい合わせに座った。
「おいしそう…!いただきます!」
ぱちん、と手を合わせてうどんを一口。
「おいしい!」
うんうん、このきつねうどんと言えばこのほんのり甘い出汁がいいんだよなぁ。味は関西風で、出汁がよくきいている。おいしいご飯に気分があがった俺は、目の前から視線を感じて顔をあげた。
「…なに?」
「ふふ、いや、おいしそうに食べるな、と思って。」
「…見てないで唯くんも食べなよ、冷めちゃうよ。」
ちなみに唯も俺がうどんを注文したのを見て同じものを買っていた。もっとも唯はそれだけでは足りないようで、いなり寿司もあるんだけど。
唯もようやくうどんを口にした。
「ん、おいしい。…ゆきと食べるといつもより美味しく感じる気がする。」
「ふふ、ご飯は誰かと食べた方がおいしいよね。」
心からの笑みが漏れ、嘘偽りのない本心を言ってしまった。今は温かいご飯の前だ。これくらいいいだろう。…と、思っていたのだが唯の手がまた止まった。今度は少し目を見開いてこっちを見ている。
「今度はなに?」
「…ううん、なんでも。」
にこっと唯が微笑む。うっ、だからイケメンの微笑みは眩しすぎるんだって…。
俺たちの優雅なランチタイムはこんな感じで何事もなく平穏に過ぎていった。このままほっこりあたたかい時間が過ごせればいいんだけど。
しかし、そんなことは俺には到底無理な話なのだ。
「ん?ああ、ゆき、料理趣味って言ってたもんね。」
「覚えててくれたんだ?そうなんだ!あ、狐塚くんはいつもどうしてるの?」
「いつもは食堂使ってるけど面倒なときはインスタントで済ませてた。」
「そうなの?あ、もしよかったらなんだけど…今日の夕飯、俺が作ろうか?」
料理の腕には自信があるので提案してみたが、どうだろうか?狐塚が驚いた顔で固まったので慌てて保険を掛ける。
「あ、案内してもらったりしたお礼になるかなーと思ったんだけど、もしかして手作りダメだったりする?なら全然、キッチンさえ使わせてもらえれば一人で作って一人で食べるよ…!」
うーん、失敗だったか?手作りダメな人もいるもんな。あわよくばお礼ついでに好感度上がったりしないかなーとか、食堂使ってるんだし気にしないだろ、と思ったんだけど。外食とそれは違う、みたいな人もいるもんな。
「…いや、いいの?なら食べてみたい。」
「う、うん、もちろん!!」
「ふふ、ありがとう。」
了承すると狐塚がふわりと微笑む。うっ、眩しい…!
そんなやり取りをしている間に俺たちの昼食が完成したようだ。おっ、うどん美味しそう。シンプルなきつねうどんだけど出汁のいい香りがとても食欲をそそる。お盆にのせて空いている席まではこび、狐塚と向かい合わせに座った。
「おいしそう…!いただきます!」
ぱちん、と手を合わせてうどんを一口。
「おいしい!」
うんうん、このきつねうどんと言えばこのほんのり甘い出汁がいいんだよなぁ。味は関西風で、出汁がよくきいている。おいしいご飯に気分があがった俺は、目の前から視線を感じて顔をあげた。
「…なに?」
「ふふ、いや、おいしそうに食べるな、と思って。」
「…見てないで唯くんも食べなよ、冷めちゃうよ。」
ちなみに唯も俺がうどんを注文したのを見て同じものを買っていた。もっとも唯はそれだけでは足りないようで、いなり寿司もあるんだけど。
唯もようやくうどんを口にした。
「ん、おいしい。…ゆきと食べるといつもより美味しく感じる気がする。」
「ふふ、ご飯は誰かと食べた方がおいしいよね。」
心からの笑みが漏れ、嘘偽りのない本心を言ってしまった。今は温かいご飯の前だ。これくらいいいだろう。…と、思っていたのだが唯の手がまた止まった。今度は少し目を見開いてこっちを見ている。
「今度はなに?」
「…ううん、なんでも。」
にこっと唯が微笑む。うっ、だからイケメンの微笑みは眩しすぎるんだって…。
俺たちの優雅なランチタイムはこんな感じで何事もなく平穏に過ぎていった。このままほっこりあたたかい時間が過ごせればいいんだけど。
しかし、そんなことは俺には到底無理な話なのだ。
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