王道学園のハニートラップ兎

もものみ

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狐と狸とそれから兎

第十話

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「そうなんだ…それはなんか、ごめんね?」
「ぜーんぜん!ゆきとならいいよー!」
「本当?ありがとう。あの、それから、良かったらなんだけど、俺に学園のこと教えてくれないかな?俺、この学園のこと全然知らなくて…」
 双子の手を片方ずつぎゅっと握って俺の席の前に立っている双子の顔を、前髪をさらりと自然に落としてメガネ越しに見上げる。それから上目のままで愛斗、恋斗と順に見つめる。…座ってる位置からだと上目遣いやりやすくていいな。…というかこれ、本当に効くんだろうな?俺にハニートラップを仕込んだ奴よ。大丈夫か?きもくない?
「ゆ、ゆきと…」
「…あれ、え?ゆきとって…」
「ねえゆきと、メガネ…」
「だめかな?」
 恋斗にメガネをとられそうになったので、すかさずダメ押しで目を見つめてもう一度言った。すると恋斗は目をぱちぱちと瞬かせてからふっと顔ごとそらした。そこで愛斗に視線を移す。
「まなとくん…」
「わ、わかった!!うん、教える!むしろ教えとかないと危ない!」
「あぶない…?」
「ほんと…!ゆきと、よく見ると結構きれいな顔だね…?!メガネとって髪あげてみたいなー!!」
「だっ、だめだよ!」
「なんでー?」
「……恥ずかしいから…。俺、小さい頃から人見知りなんだよ。」
 これは事前に考えてあった言い訳だ。顔をよく見られないためではあるが、嘘ではない。俺はたしかに昔は人見知りだった。いまは克服しただけで。嘘はつくときに少しだけ真実を混ぜることがポイントだ。ぐんとリアリティが増す。
「そうなのー?」
「そうは思わなかったけどな~」
「メガネと髪があると安心するから…人見知りしなくなるんだ。」
「ふ~ん、そうなんだー?」

 狸塚双子はまだ納得しきった様子ではなかったが、俺はこのまま押しきることにした。まだまだ聞きたいことはある。
「それより、学園のこと、教えてくれない?」
「そうだったね!」
「いいよー!まず僕らも所属してる生徒会からいくねー?この学園の生徒会はー、学園内で行事運営とかしてて、結構いろんな権限があるんだけど~、メンバーは生徒たちの人気投票で決まるの!」
「は?」
 思わず素で返してしまった。
「ニンキトウヒョウ…?」
「あはは、台詞がカタカナになってるよー!」
「もー、びっくりしすぎー!じゃあこれ聞くときっともっとびっくりするよ!その人気投票ねえ、別名『抱きたい抱かれたいランキング』なんだよ!!」
「ダキタイダカレタイランキング…?」
「そうだよー!全校生徒の投票で、親衛隊持ちの人の中から抱きたいランキング抱かれたいランキングをやってー、それの得票数で上位だった人たちが生徒会になるんだよー。親衛隊持ちの生徒は小規模のものもあわせたらまあまあいるからね~」
「その中の1位が抱かれたいランキング中等部からずっとぶっちぎり1位の会長、2位が抱かれたいランキング2位、抱きたいランキングの方にもランクインしてる副会長だよー!」
「あと、会計、書記、庶務は上位の人たちから希望制なんだー!」
「そ、そうなんだ…?」
「そうだよー!僕たちもー、抱きたいランキング抱かれたいランキングどっちもばっちりランクインしてるから~」
「それで僕たちも生徒会でー、庶務やってるんだ~」
「へ、へえー…あ、あのさ、生徒会の人たちのことってもっと教えてもらえたりする…?会長のこととか…」
「「会長??」」
「あっ!もしかしてー、スピーチのときに会長に惚れちゃったのー?!」
「ダメダメー!会長はああ見えてすっごく性格悪いしー、それにー!生徒会役員とはあんまり関わらない方がいいよー?」
「そうなの?」
「そうだよー!生徒会役員はー、みんな親衛隊っていうファンクラブみたいなのがついてて~」
「あんまり生徒会と仲良くしてると親衛隊から睨まれちゃうよー!」
「親衛隊は"制裁"っていう権限が与えられててー、親衛対象に近づきすぎた生徒に罰を与えるんだ。」
「僕らの親衛隊はそんなに怖い子達じゃないから大丈夫だけど~」
「会長のとことかー、あとは副会長のとこ!ほんとーに厳しいところもあるからね~」
「副会長のとこは特に厳しいよね~」
「そうだね~、王子さまみたいに振る舞うからガチ恋勢多いんだよねー」
「へえー…。」
 ふむふむ。会長副会長の親衛隊は危険、特に副会長のところは要注意、ね。いやその前に親衛隊ってなんだよって話だけどな…。でもこの学園に一刻も早く適応しておきたい俺としてはどれも有益な情報ばかりだ。生徒会長に関する情報もそうだし…会長に近づくときは親衛隊に気を付けないとな。
「あのさ、ほかのメンバーの名前とかも教えてもらえたりする?その、副会長とか。」
「えー!ダメだよー!!」
「さっきも言ったけどー、副会長たちの親衛隊はほんとこわーいから!副会長には関わらない方がいいって~!!」
「生徒会役員とは、僕ら以外と関わっちゃダメだよー?」
「そうそう、あとー、あの狐もなぜかファン多いから、おすすめしないなー」
「「だからゆきとは僕たちと遊ぼうね!」」
「え、ええ?」
「ね!」
「ね!」
「遊んでくれるよね?」
「う、うーん?」
「うんって言ったー!!」
「言った言ったー!!」
「えぇ…」
 いや、少なくとも生徒会長と接触しないっていうのは無理なんだが…それに、副会長も関わるなって言うなら名前ぐらい教えておいてもらいたい。俺だってターゲットに関係ないところでいらん問題に首を突っ込みたくはない。しかし双子はこれ以上生徒会ことを教えてくれるつもりはないようだ。なんか懐かれたみたいなのは良かったけど…困ったな。この状況どうしようか。うーん、と詰め寄られて困り笑顔を浮かべるているとガラガラと教室の後ろのドアが開いた。
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