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入学式とターゲット
第一話
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《白兎side》
『暖かな日差しに包まれて、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日のよき日にこの入学式を迎えられたことを嬉しく思います。これから皆さんは―――――』
美しい自然に囲まれ、鳥の囀りの聞こえる講堂にゆったりとした声で学校長のスピーチが響く。スピーチ長いな。隣のやつなんかもう欠伸して、寝る寸前って感じだ。さっきの理事長はダンディーなおじさんで、見とれてる生徒や保護者もいるくらいかっこよかったし、内容も良かったのに。学校長の方のスピーチは着飾る言葉が多すぎてむしろお粗末になっている。
長ったるいスピーチを聞き流しつつ、バレないように周りを伺う。はじめから寝てる人、友人同士で喋ってる人、真面目そうな人もいれば制服着崩して髪色も派手なやつまで、色んな人がいる。しかし、そのほとんどに共通していることがある。それはこのやたら凝ったデザインの、たとえ崩していても明らかに上質な制服からもわかる通り、生徒の大半が金持ちだということだ。高校からの編入だと憧れて入った者もいなくはないが、学費がバカ高いので少数派だ。
かく言う俺は編入組で、この校舎も、周りの人も、みんな馴染みがない。…まあ、すでに頭には入っているが。
『―――ということで、これを皆さんの入学を祝す言葉とさせていただきます。』
校長の実のないスピーチが終わった。
『続いて、生徒代表からの式辞に移ります。』
司会を勤める教師がそう言うと舞台上に、ものすごい美形のキリッとした顔立ちの学生が出てきた。ストレートの黒髪から覗く瞳は鋭く、鼻も高く骨格も整っており、端正な顔立ちだが、男らしい野性味ある色気を備えている。肩幅もしっかりしてて背も高い。体もしっかり鍛えてあるみたいだけど、ムキムキというよりは細マッチョって感じだ。
『学園入学おめでとうございます。生徒会長の鷹岡 朔夜(たかおか さくや)です。』
見た目がいいだけじゃなく、声までいい。鷹岡が出てきただけで生徒たちから悲鳴のような声が上がる。…アイドルかなにか?え、ていうか野太い声まで上がってるんだけど。"抱いてください!"…?え、どういうこと…?男子校だよな?え、そういうこと?……いや、動揺するな。ここではなにがあるか分からない、そんなのは分かっていたことじゃないか。
「……」
生徒たちが大騒ぎする中、ちらりとある人物を見る。相も変わらず、人の良さそうな笑顔を浮かべている。人は見かけによらないものだ。ここで、壇上の人物をじっと見つめた。彼だって、イケメンで優秀そうだがどんな人物かなんて分かったものではない。
鷹岡はターゲットの1人だ。―――ターゲット、というのはある人物によって定められた者たちのことで、俺はそのターゲット達の弱味を握るよう命令されてこの学園にやって来たのだ。しかし俺が教えてもらえたのはターゲットの名前と学年、クラスだけだ。しかもこの学園は山奥の閉鎖された完全寮制の学校で、民間に情報はほとんどおりない。つまり、俺はターゲットのことも、ましてやこの学園のことすらもほとんど知らないのだ。一応地図だけは新入生向けの資料で見て把握してはあるが…。まあ、とにかく理不尽な話だがたったそれだけの情報で学園内のターゲットに近づき、バレないように、しかも1年以内に弱味を握り、報告しなければならない。どんな理由で俺にそう命じたのかも、ターゲットの素性も今のところ謎だが、俺はやるしかない。既に発見したターゲットからいかにも難易度が高そうだが、やるしかないのだ。
「鷹岡朔夜…生徒会長か…。」
決意を改め、ターゲットを見てポツリと呟いた声は、周囲の歓声にかき消された。
『暖かな日差しに包まれて、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日のよき日にこの入学式を迎えられたことを嬉しく思います。これから皆さんは―――――』
美しい自然に囲まれ、鳥の囀りの聞こえる講堂にゆったりとした声で学校長のスピーチが響く。スピーチ長いな。隣のやつなんかもう欠伸して、寝る寸前って感じだ。さっきの理事長はダンディーなおじさんで、見とれてる生徒や保護者もいるくらいかっこよかったし、内容も良かったのに。学校長の方のスピーチは着飾る言葉が多すぎてむしろお粗末になっている。
長ったるいスピーチを聞き流しつつ、バレないように周りを伺う。はじめから寝てる人、友人同士で喋ってる人、真面目そうな人もいれば制服着崩して髪色も派手なやつまで、色んな人がいる。しかし、そのほとんどに共通していることがある。それはこのやたら凝ったデザインの、たとえ崩していても明らかに上質な制服からもわかる通り、生徒の大半が金持ちだということだ。高校からの編入だと憧れて入った者もいなくはないが、学費がバカ高いので少数派だ。
かく言う俺は編入組で、この校舎も、周りの人も、みんな馴染みがない。…まあ、すでに頭には入っているが。
『―――ということで、これを皆さんの入学を祝す言葉とさせていただきます。』
校長の実のないスピーチが終わった。
『続いて、生徒代表からの式辞に移ります。』
司会を勤める教師がそう言うと舞台上に、ものすごい美形のキリッとした顔立ちの学生が出てきた。ストレートの黒髪から覗く瞳は鋭く、鼻も高く骨格も整っており、端正な顔立ちだが、男らしい野性味ある色気を備えている。肩幅もしっかりしてて背も高い。体もしっかり鍛えてあるみたいだけど、ムキムキというよりは細マッチョって感じだ。
『学園入学おめでとうございます。生徒会長の鷹岡 朔夜(たかおか さくや)です。』
見た目がいいだけじゃなく、声までいい。鷹岡が出てきただけで生徒たちから悲鳴のような声が上がる。…アイドルかなにか?え、ていうか野太い声まで上がってるんだけど。"抱いてください!"…?え、どういうこと…?男子校だよな?え、そういうこと?……いや、動揺するな。ここではなにがあるか分からない、そんなのは分かっていたことじゃないか。
「……」
生徒たちが大騒ぎする中、ちらりとある人物を見る。相も変わらず、人の良さそうな笑顔を浮かべている。人は見かけによらないものだ。ここで、壇上の人物をじっと見つめた。彼だって、イケメンで優秀そうだがどんな人物かなんて分かったものではない。
鷹岡はターゲットの1人だ。―――ターゲット、というのはある人物によって定められた者たちのことで、俺はそのターゲット達の弱味を握るよう命令されてこの学園にやって来たのだ。しかし俺が教えてもらえたのはターゲットの名前と学年、クラスだけだ。しかもこの学園は山奥の閉鎖された完全寮制の学校で、民間に情報はほとんどおりない。つまり、俺はターゲットのことも、ましてやこの学園のことすらもほとんど知らないのだ。一応地図だけは新入生向けの資料で見て把握してはあるが…。まあ、とにかく理不尽な話だがたったそれだけの情報で学園内のターゲットに近づき、バレないように、しかも1年以内に弱味を握り、報告しなければならない。どんな理由で俺にそう命じたのかも、ターゲットの素性も今のところ謎だが、俺はやるしかない。既に発見したターゲットからいかにも難易度が高そうだが、やるしかないのだ。
「鷹岡朔夜…生徒会長か…。」
決意を改め、ターゲットを見てポツリと呟いた声は、周囲の歓声にかき消された。
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