33 / 41
再会ー優月sideー
33
しおりを挟む
「さあ、これでゆづの言ったことは全部俺が否定したよ。…どう?まだ不安なことはある?」
陽仁が優月の顔をのぞき込んで問う。もうあの美女とのことはとっくに否定されてしまった。優月の自分は釣り合わないという発言も、完全に。それに何より、先ほどの言葉が優月の思いの全てだった。優月の逃げ続ける理由が、完全になくなってしまった。それは、優月のこの鬼ごっこの完全敗北を意味していて――――――――
「…もう、帰る気になった?」
陽仁が問いかける。分かっているのだ。もう優月にこの鬼ごっこを続ける理由がないことを。完璧に、優月の負けだった。
「…うん。」
優月は消え入りそうな声で、確かにそう言った。
「そっか、良かった。――――――じゃあ本題に入らせてもらうけど、」
「え!?」
これでこの長いようで短かった生活も終わりか…と思っていると、陽仁が突然優月にそんなことを言う。優月は思わず驚きの声を上げてしまった。
(え、なに…?この状況で、これより大事な話なんてある…?)
陽仁は優月を驚かせるだけ驚かすと、何も言わずにいったん身を離し優月と向かい合う形になった。優月は驚きと困惑で動揺しつつも、静かに陽仁の言葉を待つ。
「優月、俺と――――――――結婚してください。」
ひざまずいてそう言いながら陽仁が差し出したのは、小さな指輪だった。普段使いしやすいようにか、装飾は多くなくシンプルな作りで、真ん中に下品にならない程度の大きさの宝石が一つだけついている。
「え………?」
優月は目を見開いて陽仁を見つめ、それだけ呟くと固まってしまう。
(けっこんって…結婚?それに、指輪まで……え?結婚?はる君が、俺と…)
「っ…え、そんな、え…?嘘、ほんとに…?これ、俺に…?」
「もちろん。ゆづ以外誰がいるの。」
陽仁があきれたように笑う。優月の目からは、また涙があふれだしていた。
「ふふ、ゆづ、今日はよく泣くね。」
そう言って陽仁が優月の涙をぬぐう。
「はる君……。…でも、俺なんかが、」
「優月。…さっきの俺の言葉、思い出して。」
陽仁が優しくそう言う。
「ひっく、でも…ほんとに、いいの?…後悔しない?」
「当たり前じゃん。優月とこの子もろとも、世界一幸せになってみせるよ。」
陽仁が優しく笑う。優月は手で涙をぬぐうも、どんどん涙が溢れてきて追いつかない。
「ゆづ。答え、聞かせて。」
陽仁が涙をぬぐう優月の手をそっと掴み、優月と目を合わせる。その言葉に、優月はぐずぐずになりながら答える。答えはもう、決まっていた。
「ッはい……俺なんかでよかったら、よろしくお願いしますっ…!」
陽仁が優月の顔をのぞき込んで問う。もうあの美女とのことはとっくに否定されてしまった。優月の自分は釣り合わないという発言も、完全に。それに何より、先ほどの言葉が優月の思いの全てだった。優月の逃げ続ける理由が、完全になくなってしまった。それは、優月のこの鬼ごっこの完全敗北を意味していて――――――――
「…もう、帰る気になった?」
陽仁が問いかける。分かっているのだ。もう優月にこの鬼ごっこを続ける理由がないことを。完璧に、優月の負けだった。
「…うん。」
優月は消え入りそうな声で、確かにそう言った。
「そっか、良かった。――――――じゃあ本題に入らせてもらうけど、」
「え!?」
これでこの長いようで短かった生活も終わりか…と思っていると、陽仁が突然優月にそんなことを言う。優月は思わず驚きの声を上げてしまった。
(え、なに…?この状況で、これより大事な話なんてある…?)
陽仁は優月を驚かせるだけ驚かすと、何も言わずにいったん身を離し優月と向かい合う形になった。優月は驚きと困惑で動揺しつつも、静かに陽仁の言葉を待つ。
「優月、俺と――――――――結婚してください。」
ひざまずいてそう言いながら陽仁が差し出したのは、小さな指輪だった。普段使いしやすいようにか、装飾は多くなくシンプルな作りで、真ん中に下品にならない程度の大きさの宝石が一つだけついている。
「え………?」
優月は目を見開いて陽仁を見つめ、それだけ呟くと固まってしまう。
(けっこんって…結婚?それに、指輪まで……え?結婚?はる君が、俺と…)
「っ…え、そんな、え…?嘘、ほんとに…?これ、俺に…?」
「もちろん。ゆづ以外誰がいるの。」
陽仁があきれたように笑う。優月の目からは、また涙があふれだしていた。
「ふふ、ゆづ、今日はよく泣くね。」
そう言って陽仁が優月の涙をぬぐう。
「はる君……。…でも、俺なんかが、」
「優月。…さっきの俺の言葉、思い出して。」
陽仁が優しくそう言う。
「ひっく、でも…ほんとに、いいの?…後悔しない?」
「当たり前じゃん。優月とこの子もろとも、世界一幸せになってみせるよ。」
陽仁が優しく笑う。優月は手で涙をぬぐうも、どんどん涙が溢れてきて追いつかない。
「ゆづ。答え、聞かせて。」
陽仁が涙をぬぐう優月の手をそっと掴み、優月と目を合わせる。その言葉に、優月はぐずぐずになりながら答える。答えはもう、決まっていた。
「ッはい……俺なんかでよかったら、よろしくお願いしますっ…!」
21
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!


モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる