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再会ー優月sideー
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「…お願い、もう逃げないで。」
優月がとっさに身をよじると、陽仁は優月の肩の上から回した手にぎゅっと力を籠める。
(はる君の手、震えてる。)
優月は逃げようとしていた力を抜いた。
「…はる君、この近くに俺の家があるから付いてきて。」
優月は静かな声で告げる。落ち着いているように見えるが、その内心は動揺と、久しぶりの恋人に反応して熱くなってしまう体を鎮めるのに必死だった。二人はすぐそこの優月の家に向かって歩き出す。優月の左手は、しかっりと陽仁に繋ぎ止められていた。左手から、あの日よりはいささか冷たい体温を感じる。
(はる君…はる君だ。)
優月は無意識に左手を握り返してしまう。
(……って、だめだ、落ち着かないと。)
そうは思うものの、優月は焦ったりはしていなかった。どうしてか体から力が抜け、安心感すら感じてしまっていたのだ。
(久しぶりのはる君……。…ちゃんと説得できるかな。)
優月はすでに思い通りにならない自分の体に不安を覚えつつ、賃貸の我が家に帰ってきた。やや古めの、家賃の安さを重視した部屋だ。長身の陽仁には玄関の扉は低すぎたらしく、くぐるようにして部屋へ入ってくる。
「こんなとこにいたんだね。この辺も探させたんだけど…。」
陽仁は優月の家に入り、目を細めて部屋の中を見渡す。陽仁の上品な雰囲気とこの部屋はどう見ても似合っておらず、それがなんだかおかしかった。ちなみにこの辺を探しても優月が見つからないのは当然だ。この部屋は優蘭名義で借りているのだから。
「……座ってて、お茶いれるよ。」
「……。」
陽仁がぎゅっと優月の手を握る。離す気はないようだ。
「…大丈夫だよ。そこら辺に座ってて。キッチン、見えるでしょ。」
そう言うと、陽仁はしぶしぶテーブルの近くに座り、お茶を入れる優月の後姿をじっと見つめる。
「はい、お茶。」
優月は陽仁にそっとお茶を差し出し、陽仁の対面に座る。
「…ありがとう。」
そう言ってお茶を受け取ると、陽仁は優月と距離を詰めて隣に座りなおした。
「うん…。」
「……。」
二人の間にしばらく無言が続く。優月もどこから話をすればいいのか考えあぐねている。しばらくそのままの時間が続き、陽仁が先に切り出す。
「…ゆづ、少し痩せた?…この一か月、元気だった?」
陽仁が優月の頬に手を添え、じっと優月を見つめながら言う。
「…うん、元気だったよ。はる君は……少し隈ができた?お仕事忙しかった…?…あんまり寝れてない?」
優月も陽仁を見つめ返す。陽仁は前と変わらずシミ一つない陶器のような肌に美し顔立ちであるが、その目元にはうっすらと隈がにじんでいた。
「うん。仕事はそんなに忙しくなかったけど、隣にゆづがいないから寝れなかった。」
陽仁が少し拗ねたような口ぶりで言う。久しぶりの陽仁の甘い言葉に優月はかあっとほほに熱が集まり、何も言葉を返せなかった。
「…ゆづ、こっち、来て?」
陽仁が優月に伺う。優月は静かに頷き、陽仁の足の試打に収まると陽仁が先ほどのように後ろから優月を抱きしめた。一緒に住んでいた時はソファーの上で陽仁がよくこうしたり膝の上にのせたりしてきて、なんでもない時間を一緒に過ごしていた。しかし、今日の抱きしめ方にはいつもとは違う点があった。いつもは脇の下から手を入れてぎゅっと体に密着させるのだが、今日は優月の肩の上から腕を回し優月を包み込むように抱きしめている。
「……もう、知ってるの?」
優月が陽仁に尋ねる。この抱きしめ方は、明らかに優月のお腹に触れないようにとの配慮からだろうと気づいたのだ。
「…うん。」
陽仁は短くそう答えた。
「…そう。」
「……俺も、触っていい?俺との子…なんでしょ?」
陽仁が優月に伺う。
「…うん、そうだよ。……そんなこと、分かってるくせに。」
「ゆづから直接聞きたかったから。」
陽仁がそっと優月の腹を撫でる。
「ちょっとぽっこりしてる。……ここに、俺たちの子どもが…?」
「…そうだよ。」
優月は首肯する。おそらく陽仁はもう何もかも知っている。そもそも初めに病院に行ったときはチョーカーもスマホもそのままだったし、この場所まで分かったということは、いまさら何を隠しても無駄だろうと思った。
優月がとっさに身をよじると、陽仁は優月の肩の上から回した手にぎゅっと力を籠める。
(はる君の手、震えてる。)
優月は逃げようとしていた力を抜いた。
「…はる君、この近くに俺の家があるから付いてきて。」
優月は静かな声で告げる。落ち着いているように見えるが、その内心は動揺と、久しぶりの恋人に反応して熱くなってしまう体を鎮めるのに必死だった。二人はすぐそこの優月の家に向かって歩き出す。優月の左手は、しかっりと陽仁に繋ぎ止められていた。左手から、あの日よりはいささか冷たい体温を感じる。
(はる君…はる君だ。)
優月は無意識に左手を握り返してしまう。
(……って、だめだ、落ち着かないと。)
そうは思うものの、優月は焦ったりはしていなかった。どうしてか体から力が抜け、安心感すら感じてしまっていたのだ。
(久しぶりのはる君……。…ちゃんと説得できるかな。)
優月はすでに思い通りにならない自分の体に不安を覚えつつ、賃貸の我が家に帰ってきた。やや古めの、家賃の安さを重視した部屋だ。長身の陽仁には玄関の扉は低すぎたらしく、くぐるようにして部屋へ入ってくる。
「こんなとこにいたんだね。この辺も探させたんだけど…。」
陽仁は優月の家に入り、目を細めて部屋の中を見渡す。陽仁の上品な雰囲気とこの部屋はどう見ても似合っておらず、それがなんだかおかしかった。ちなみにこの辺を探しても優月が見つからないのは当然だ。この部屋は優蘭名義で借りているのだから。
「……座ってて、お茶いれるよ。」
「……。」
陽仁がぎゅっと優月の手を握る。離す気はないようだ。
「…大丈夫だよ。そこら辺に座ってて。キッチン、見えるでしょ。」
そう言うと、陽仁はしぶしぶテーブルの近くに座り、お茶を入れる優月の後姿をじっと見つめる。
「はい、お茶。」
優月は陽仁にそっとお茶を差し出し、陽仁の対面に座る。
「…ありがとう。」
そう言ってお茶を受け取ると、陽仁は優月と距離を詰めて隣に座りなおした。
「うん…。」
「……。」
二人の間にしばらく無言が続く。優月もどこから話をすればいいのか考えあぐねている。しばらくそのままの時間が続き、陽仁が先に切り出す。
「…ゆづ、少し痩せた?…この一か月、元気だった?」
陽仁が優月の頬に手を添え、じっと優月を見つめながら言う。
「…うん、元気だったよ。はる君は……少し隈ができた?お仕事忙しかった…?…あんまり寝れてない?」
優月も陽仁を見つめ返す。陽仁は前と変わらずシミ一つない陶器のような肌に美し顔立ちであるが、その目元にはうっすらと隈がにじんでいた。
「うん。仕事はそんなに忙しくなかったけど、隣にゆづがいないから寝れなかった。」
陽仁が少し拗ねたような口ぶりで言う。久しぶりの陽仁の甘い言葉に優月はかあっとほほに熱が集まり、何も言葉を返せなかった。
「…ゆづ、こっち、来て?」
陽仁が優月に伺う。優月は静かに頷き、陽仁の足の試打に収まると陽仁が先ほどのように後ろから優月を抱きしめた。一緒に住んでいた時はソファーの上で陽仁がよくこうしたり膝の上にのせたりしてきて、なんでもない時間を一緒に過ごしていた。しかし、今日の抱きしめ方にはいつもとは違う点があった。いつもは脇の下から手を入れてぎゅっと体に密着させるのだが、今日は優月の肩の上から腕を回し優月を包み込むように抱きしめている。
「……もう、知ってるの?」
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「…うん。」
陽仁は短くそう答えた。
「…そう。」
「……俺も、触っていい?俺との子…なんでしょ?」
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「…うん、そうだよ。……そんなこと、分かってるくせに。」
「ゆづから直接聞きたかったから。」
陽仁がそっと優月の腹を撫でる。
「ちょっとぽっこりしてる。……ここに、俺たちの子どもが…?」
「…そうだよ。」
優月は首肯する。おそらく陽仁はもう何もかも知っている。そもそも初めに病院に行ったときはチョーカーもスマホもそのままだったし、この場所まで分かったということは、いまさら何を隠しても無駄だろうと思った。
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