君は俺の光

もものみ

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病院ー優月sideー

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 優月は準備を整えて病院に行き、いつものように診察室へ向かう道を歩いていた。

(ふう、何とか間に合った。)

 優月はほっと息をついて歩みを進める。

(ふふ、性別、どっちかな。男の子かな、女の子かな…。…どっちでも、可愛いんだろうなあ。)

 優月は思わず口元がにやついてしまい、意識して顔を引き締めた。もう少しで優月の担当医師がいる病室に着く。優月はΩの婦人科の中でもさらに早川女医の知り合いである先生を紹介してもらって、その先生だけに見てもらっている。病院付近で見覚えのある人物を見かけるようになってからは、その先生にも事情を伝えて優月のことはは受付で呼ぶのではなく決められた時間ぴったりに直接診察室を訪れることになっている。遅れたりする場合はメールや電話を使ってやり取りしていた。

(こっちの都合でこんなややこしいことしてもらってるんだから俺が遅れたら申し訳なさすぎる…!)

 優月は早歩き気味で診察室までの廊下の最後の曲がり角を曲がるいや、曲がろうと足を踏み入れたその時――――――――

(わ、あの人……!)

 優月は足を止めて角の手前の壁に身をひそめる。診察室へと続く廊下の途中に見覚えのある人物がいた。

(多分はる君とこにいた人だ…見たことある。もう時間ないのに…どうしよう……)

 優月は考える。診察室へはどうしてもこの廊下を通らないといけない。

(あとそこの角曲がるだけなのに…!)

 診察室はこの廊下を通って突き当たり、男のいる所を過ぎてすぐの角を曲がったところにある。

(でももう時間ないし…。……というか、そもそもあの人…?)

 優月は男の顔をちらりと見て考える。優月はその男のことを知っていると言うよりは見たことがある、といった感じであった。

(前にはる君のお家にお邪魔した時に見かけた人だと思うんだけどなあ。)

 そう思うものの、優月はその男を一度しか見たことがない。その人だって名前も知らないし紹介されたわけでもない。陽仁の屋敷とも言える実家の何人もいた使用人たちの中に、本当に文字通りただ[[rb:見た > ・・]]だけなのだ。むしろ何となくでも覚えている方が異常だ。

 優月は、もしかしたら彼が優月のことを探しに来たというのは勘違いなのかもしれないとも思い始めた。しかし、以前の明らかに誰かを探している様子だった青木とて、優月は一度しか会ったことがない人物だった。そう言えば、近くで見かけたのはみんな優月とあまり面識のない人物だったような気もする。

(この辺に探しにきてるのはあんまり会ったことない人たちに限られてるのかな…。)

 あり得そうだ。優月は陽仁の慎重な性格を考えてそう思う。

(黒島さんとかがいたら普通に分かるもんな。……あの人…うーん、でも普通に病院で誰かを待ってる人とかにも見えるんだよなあ…。)

 優月はもう一度だけ男の顔を見て、それからスマホの時計に目を落とす。

(……行けるか…?)
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