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産婦人科医の災難な1日ー女医sideー
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「ただ……」
陽仁が扉に向かって歩き出し、ドアを開けようとするのを遮るように沙月は少し大きめの声を出す。
「他県にある、ここより大きいΩの婦人科設備が整っている病院を紹介したのは確かね。」
ぽつり、と呟くように沙月が言う。
「……なるほど、ありがとうございます。」
しばらく間があって、陽仁は美しい笑みを浮かべながらそう言い、一礼して部屋を出て行った。
「やっと帰った…。」
沙月はどっと疲れた気がしてうなだれる。
(あの様子じゃ、私の言ったことをちゃんと理解したようね。…まあ、心配はしてなかったけど。)
沙月の勤める病院はこの辺りでは一番大きい大学病院だ。”他県にある、ここより大きいΩの婦人科設備が整っている病院”。そんなものは他県と範囲を絞らなかったとしても、この付近では一つしかないのだ。
(大学病院ではないけれど、そこそこ大きくてΩ専門の婦人科が入ってる病院。あの病院から通える範囲に住んでるでしょうね。)
本当に居場所は知らないので教えられないが、ヒントは与えた。あとは彼がうまくやるだろう。
(はあ…。それにしても、見た目とか雰囲気とかは優月君が言ってた特徴通りではあったけど、”優しくていい人”の部分だけはどうも同意しかねるわね…。)
優月の言っていた通り、優し気な美しい顔立ちにすらりとしたスタイル、それに物腰柔らかな雰囲気ではあったが、どうも先ほどの人物が優月の言っていたような性格の人物には思えなかったのだ。
(実際、他にいい人がいる、っていうのは勘違いだったんだし。チョーカーのフェロモン見たときからその部分は疑ってたんだけど、あの様子じゃむしろその逆じゃない。)
優月はいい加減自分に縛り付けていた彼を自由にしてあげなければいけないのだと言っていたが、むしろ逃がしてもらえないのは優月の方では…?などと考えて、沙月は慌てて首を振る。
(いや、私はもう自分のやることはやったわ。あとは…どう転んだとしても、あの子が幸せになれることを祈るだけね。)
そうは思うものの、もし優月が本気で陽仁から離れたいと思っているのならそれは不可能なことに思えた。
(まあ優月君も別れたいと思ってるわけではなさそうだったし、きっと拗らせてるだけ…よね?)
沙月はすでに先ほど陽仁に情報を与えてしまった。今更こんなことを考えても無駄ではあるのだが…
(ていうか、私が言わなくても彼ならどこまででも優月君を探して見つけ出すような気がするし、そもそも私が言ったことくらいなら優月君が[[rb:産婦人科 > ここ]]に通ってたことが分かってるなら普通に考えればたどり着くわね。)
というか、陽仁ならもう沙月の紹介した病院やほかのΩ婦人科の設備が整った病院は調べる準備をしてあってもおかしくないな…と思ったところで陽仁の去り際の目を思い出して沙月は背筋を震わせる。
(…”いい人”というより、あれは―――――――)
沙月は余計なことを考えてしまいそうになって、慌てて考えを打ち消す。世の中には気づかない方がいいこともあるのだ。とにかく、今思うのは一つだけ。
「頼むから、もう来ないでほしい…。」
陽仁が扉に向かって歩き出し、ドアを開けようとするのを遮るように沙月は少し大きめの声を出す。
「他県にある、ここより大きいΩの婦人科設備が整っている病院を紹介したのは確かね。」
ぽつり、と呟くように沙月が言う。
「……なるほど、ありがとうございます。」
しばらく間があって、陽仁は美しい笑みを浮かべながらそう言い、一礼して部屋を出て行った。
「やっと帰った…。」
沙月はどっと疲れた気がしてうなだれる。
(あの様子じゃ、私の言ったことをちゃんと理解したようね。…まあ、心配はしてなかったけど。)
沙月の勤める病院はこの辺りでは一番大きい大学病院だ。”他県にある、ここより大きいΩの婦人科設備が整っている病院”。そんなものは他県と範囲を絞らなかったとしても、この付近では一つしかないのだ。
(大学病院ではないけれど、そこそこ大きくてΩ専門の婦人科が入ってる病院。あの病院から通える範囲に住んでるでしょうね。)
本当に居場所は知らないので教えられないが、ヒントは与えた。あとは彼がうまくやるだろう。
(はあ…。それにしても、見た目とか雰囲気とかは優月君が言ってた特徴通りではあったけど、”優しくていい人”の部分だけはどうも同意しかねるわね…。)
優月の言っていた通り、優し気な美しい顔立ちにすらりとしたスタイル、それに物腰柔らかな雰囲気ではあったが、どうも先ほどの人物が優月の言っていたような性格の人物には思えなかったのだ。
(実際、他にいい人がいる、っていうのは勘違いだったんだし。チョーカーのフェロモン見たときからその部分は疑ってたんだけど、あの様子じゃむしろその逆じゃない。)
優月はいい加減自分に縛り付けていた彼を自由にしてあげなければいけないのだと言っていたが、むしろ逃がしてもらえないのは優月の方では…?などと考えて、沙月は慌てて首を振る。
(いや、私はもう自分のやることはやったわ。あとは…どう転んだとしても、あの子が幸せになれることを祈るだけね。)
そうは思うものの、もし優月が本気で陽仁から離れたいと思っているのならそれは不可能なことに思えた。
(まあ優月君も別れたいと思ってるわけではなさそうだったし、きっと拗らせてるだけ…よね?)
沙月はすでに先ほど陽仁に情報を与えてしまった。今更こんなことを考えても無駄ではあるのだが…
(ていうか、私が言わなくても彼ならどこまででも優月君を探して見つけ出すような気がするし、そもそも私が言ったことくらいなら優月君が[[rb:産婦人科 > ここ]]に通ってたことが分かってるなら普通に考えればたどり着くわね。)
というか、陽仁ならもう沙月の紹介した病院やほかのΩ婦人科の設備が整った病院は調べる準備をしてあってもおかしくないな…と思ったところで陽仁の去り際の目を思い出して沙月は背筋を震わせる。
(…”いい人”というより、あれは―――――――)
沙月は余計なことを考えてしまいそうになって、慌てて考えを打ち消す。世の中には気づかない方がいいこともあるのだ。とにかく、今思うのは一つだけ。
「頼むから、もう来ないでほしい…。」
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