君は俺の光

もものみ

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産婦人科医の災難な1日ー女医sideー

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 実は沙月は優月から計画のことを聞いていた。三回の診察の際に優月に悩みはないか、など毎回丁寧に伺ったところ、ぽつりぽつりと優月が話し出したのだ。優月はすぐに病院を移ることになってしまうのに…と終始申し訳なさそうにしていたが、沙月が心配事やストレスをためすぎるのはお腹の子にもよくない、と言うと今の自分の状況を話してくれた。ずっと付き合っている人がいるけれど、その人は自分にはふさわしくないということ。どうやら最近その人にいい人がいるようだから自分はその人から離れようと思っているということ。だけれど愛するその人との子供であるお腹の中の子供は産みたいということ。そのためにここから離れた病院を探しているということ。などなど、ぽつりぽつりと優月が語った内容は沙月にはどれも衝撃的だったが、そのすべての言動から、お腹の子の相手である彼への愛情が感じられた。優月はその人に出会えて本当に幸せだったのだ、とも言っていた。

(まあ、あんなにいい子を差し置いて他に”いい人”を作ってるだなんていったいどんな奴かと思ったら…この様子じゃ、この人がそんなことするだなんて考えられないけど。)

 沙月はもう一度目の前の陽仁をじっと見る。美しい顔に笑顔を浮かべてはいるが、その綺麗な目元にはわずかに隈が見られる。

(三日前に来た時に、明後日出ていくって言ってたから、出て行ったのは昨日よね。…この様子じゃ、寝ずに探してたんでしょうね。)

「その前に一つ聞いていいかしら。」
「…?ええ。」
「あなた、優月君以外に外にだれか囲ってるの?」
「は?」

 声が1トーン…いや、2トーンほど下がり、ずっと美しい笑みを貼り付けていた顔が一瞬真顔になる。が、すぐに、またその顔に笑顔を貼り付けて沙月に聞いた。

「…それは、優月が?」

 また変わらずにっこり笑って見せるが、その口元はやや引きつっているように思える。

(やっぱりね。この反応、間違いないわ。)

「ええ、そうね、優月君から聞いたのだけれど、間違っていたかしら?」

 沙月は意地悪く笑みを浮かべて陽仁に問う。答えは分かり切っていたが、やはり恋人のことになると余裕をなくす陽仁が面白かったのだ。

「全く、事実無根です。……それで先生、そのご様子だと何かご存じなのでは?」

 陽仁がきっぱり言い切った後、話題を元に戻そうとする。

(やっぱり、拗れてるだけだったのね。)

 そうと分かれば陽仁に協力してやりたい気持ちもないではないが、沙月とて優月の現住所までは知らないし、何より沙月はあくまでも優月の味方だ。

「残念ながら私もそれは知らないわ。…知っていたとしても、教えることはできないけれど。」
「…そうですか。お手数おかけいたしました、先生。」

 それだけ言うと陽仁はすっと立ち上がった。
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