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イルカのマスコットー陽仁sideー
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一日前
陽仁の予想通り、優月はこの公園にやって来ていた。ショップでスマホを買い替えた後、偶然公園を発見して立ち寄っていたのだ。
(スマホは買い替えたけど、これ、どうしようかなあ…。)
優月はもう一つのGPS―――チョーカーから取り出したチップを見つめる。
(多分このチップ、だよな…)
優月はチョーカーにつけられたGPSにも気づいていた。革製のチョーカーに埋め込まれた超薄型のチップで普通にしていたら気づかない大きさのものだったが、優月が気付いたのはある日の出来事だった。ある日夜中に目が覚めどうしても寝られなくなってしまった優月は、何も持たずに散歩に出た。優月は実家にいたときにも痛みがひどくて寝られない夜など、よく散歩に行っていた。その頃の名残からか、ただ何となく少し歩いて帰ってこようと思っただけだったのだが…
『優月?』
家を出て三十分ほど歩いたところで後ろから声をかけられた。振り向くとにっこり笑った陽仁が立っていた。『はる君…』驚いて優月が言うと、陽仁は困った顔で優月に上着をかけて『探したよ…心配した。』、と言って優月の手を取り何事もなく優月を連れ帰ったのだ。―――――その時の陽仁の手は、暖かかった…不自然なほどに。この時、季節は冬だった。陽仁もそれほど着込んでいるようには見えず、手袋やカイロなども持っていないように見えた。探した、と言うには繋いだ手から伝わる体温が高いように思えたのだ。単純に体温が高いとかそういうことではなく、どこか不自然だった。まるで――――――初めから優月がここにいるのを分かっていて、迎えに来たというように。
(そのとき俺は文字通り何も持っていなかった。――――――――このチョーカー以外は。)
その経験から優月はチョーカーにも居場所を知らせるものがついているのでは?と思っていた。それで今回このチョーカーをよく確かめてみると、革製のチョーカーなのでとても分かりにくいのだが固いものが感じられるところがありその部分にそっと切れ込みを入れてみると、中からこのチップが出てきたのだ。
(それに、このマスコットも…)
今度は陽仁に初デートで買ってもらったイルカのマスコットを見つめる。
(未練がましいよなあ、こんなもの持ってきて…。もう、断ち切らないと。)
優月は必要最小限の荷物で家を出たが、このマスコットはどうしても捨てることができず持ってきてしまったのだ。チョーカーは優月にとって必ず必要なものなのでいいにしても、このマスコットはどうしても必要なわけではない。しかし、これを持っていくことを決めたときから優月にはいい考えが思いついていた。
『よし、できた。』
このチップとマスコット、どちらも手放さなくてはならないものである。それならいっそ一緒にしてしまえばいいのではないか。そう思ってマスコットにチップを縫い付けた。
(あとはこれをどこかに置いて行くだけなんだけど…)
こうしておけばもし陽仁が優月を探しに来たとしても、このマスコットを見れば大体のことは察してくれるだろう。もう優月は、陽仁のもとに帰る気はないのだということも、きっと。それに万が一このマスコットを誰かが拾ってしまっても、それを陽仁が見つけたらチップの回収はしてくれるかもしれないという期待もあった。
『はあ…』
置いておくだけなのだ、後は。それは分かっているのだが…。優月はどうしてもそれを手放せず、優月がそれを見つめ続けてもうすでに十分ほど経過していた。
『それかわいーね!』
ベンチに座ってマスコットを見つめていた優月のもとに女の子がやって来て、優月に声をかけた。
『え?』
『それ、いるかさん?』
『…うん、そうだよ。』
優月は戸惑いつつも女の子の問いに答える。
『そうなんだ!いいなあ、かわいい!!』
女の子がきゃっきゃっとうれしそうに笑いながら優月のマスコットを見る。
『これ……よかったら、君にあげよう?』
『え?』
少女はきょとんとした顔になる。
『実はお兄さん、これ置いて行かないといけなくて…よかったらもらってくれる?』
『いいの?』
少女が目を丸くしながら身を乗り出して優月に尋ねる。その声には少女の期待がにじみ出ていた。
『うん、もらってくれたらうれしいな。』
言うと少女は笑顔になって、両手を上げて喜ぶ。
『やったー!お兄ちゃん、ありがとう!!』
『ふふ、…実はこれ――――――――
陽仁の予想通り、優月はこの公園にやって来ていた。ショップでスマホを買い替えた後、偶然公園を発見して立ち寄っていたのだ。
(スマホは買い替えたけど、これ、どうしようかなあ…。)
優月はもう一つのGPS―――チョーカーから取り出したチップを見つめる。
(多分このチップ、だよな…)
優月はチョーカーにつけられたGPSにも気づいていた。革製のチョーカーに埋め込まれた超薄型のチップで普通にしていたら気づかない大きさのものだったが、優月が気付いたのはある日の出来事だった。ある日夜中に目が覚めどうしても寝られなくなってしまった優月は、何も持たずに散歩に出た。優月は実家にいたときにも痛みがひどくて寝られない夜など、よく散歩に行っていた。その頃の名残からか、ただ何となく少し歩いて帰ってこようと思っただけだったのだが…
『優月?』
家を出て三十分ほど歩いたところで後ろから声をかけられた。振り向くとにっこり笑った陽仁が立っていた。『はる君…』驚いて優月が言うと、陽仁は困った顔で優月に上着をかけて『探したよ…心配した。』、と言って優月の手を取り何事もなく優月を連れ帰ったのだ。―――――その時の陽仁の手は、暖かかった…不自然なほどに。この時、季節は冬だった。陽仁もそれほど着込んでいるようには見えず、手袋やカイロなども持っていないように見えた。探した、と言うには繋いだ手から伝わる体温が高いように思えたのだ。単純に体温が高いとかそういうことではなく、どこか不自然だった。まるで――――――初めから優月がここにいるのを分かっていて、迎えに来たというように。
(そのとき俺は文字通り何も持っていなかった。――――――――このチョーカー以外は。)
その経験から優月はチョーカーにも居場所を知らせるものがついているのでは?と思っていた。それで今回このチョーカーをよく確かめてみると、革製のチョーカーなのでとても分かりにくいのだが固いものが感じられるところがありその部分にそっと切れ込みを入れてみると、中からこのチップが出てきたのだ。
(それに、このマスコットも…)
今度は陽仁に初デートで買ってもらったイルカのマスコットを見つめる。
(未練がましいよなあ、こんなもの持ってきて…。もう、断ち切らないと。)
優月は必要最小限の荷物で家を出たが、このマスコットはどうしても捨てることができず持ってきてしまったのだ。チョーカーは優月にとって必ず必要なものなのでいいにしても、このマスコットはどうしても必要なわけではない。しかし、これを持っていくことを決めたときから優月にはいい考えが思いついていた。
『よし、できた。』
このチップとマスコット、どちらも手放さなくてはならないものである。それならいっそ一緒にしてしまえばいいのではないか。そう思ってマスコットにチップを縫い付けた。
(あとはこれをどこかに置いて行くだけなんだけど…)
こうしておけばもし陽仁が優月を探しに来たとしても、このマスコットを見れば大体のことは察してくれるだろう。もう優月は、陽仁のもとに帰る気はないのだということも、きっと。それに万が一このマスコットを誰かが拾ってしまっても、それを陽仁が見つけたらチップの回収はしてくれるかもしれないという期待もあった。
『はあ…』
置いておくだけなのだ、後は。それは分かっているのだが…。優月はどうしてもそれを手放せず、優月がそれを見つめ続けてもうすでに十分ほど経過していた。
『それかわいーね!』
ベンチに座ってマスコットを見つめていた優月のもとに女の子がやって来て、優月に声をかけた。
『え?』
『それ、いるかさん?』
『…うん、そうだよ。』
優月は戸惑いつつも女の子の問いに答える。
『そうなんだ!いいなあ、かわいい!!』
女の子がきゃっきゃっとうれしそうに笑いながら優月のマスコットを見る。
『これ……よかったら、君にあげよう?』
『え?』
少女はきょとんとした顔になる。
『実はお兄さん、これ置いて行かないといけなくて…よかったらもらってくれる?』
『いいの?』
少女が目を丸くしながら身を乗り出して優月に尋ねる。その声には少女の期待がにじみ出ていた。
『うん、もらってくれたらうれしいな。』
言うと少女は笑顔になって、両手を上げて喜ぶ。
『やったー!お兄ちゃん、ありがとう!!』
『ふふ、…実はこれ――――――――
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