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イルカのマスコットー陽仁sideー
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「着いた…けど……」
陽仁は例のアパートに向かって車を走らせたが、途中で現在地を確認したところ別の場所になっていたため、目的地を変更してそちらにやってきた。
「来たはいいんだけど――――――――公園…?」
そう、優月のGPSの移動先はアパートから歩いて行ける距離にある小さな公園だった。
(やっぱりGPSの場所はここで合ってる。でもなんで公園に…?)
陽仁は疑問に思う。それに、肝心の優月の姿が見えない。
(まさかここじゃないのか…?)
最悪の可能性に思い当たって陽仁は口元を引きつらせながら、それでも一応公園の中に入って優月の姿を探した。しかしどこを見ても優月は見当たらない。まさかチョーカーは単純にこの公園に捨てただけで、実はマンションの方だったのだろうか…そんなことを思っていると、砂場で遊んでいた女の子が友達に何かを自慢しているところに出くわした。ふとそれを見てみると、それは陽仁にとって見覚えのあるものであることに気づいた。
「きみ、それ、俺にもちょっと見せてもらってもいいかな?」
陽仁は人受けのいい笑顔を浮かべてその女の子に話しかけた。まだ小学校に上がっただろうか、というくらいの年頃の子供たちはまるでどこかの国の王子様のような陽仁に見とれながらもおずおずとそれを差し出した。
「はい、どうぞ…」
その子が差し出したものは一見何の変哲もないイルカのマスコットだ。しかし、陽仁にとってそれは大きな意味を持つものだった。
(これ…お腹のところに固い感触がある。…こんなのなかったはずだ。)
その部分をよく見ると、小さく縫い目があった。その付近に何か小さく薄い、チップのようなものが埋め込まれている。何よりそのマスコットそのものに、陽仁は見覚えがあった。
(これ……ゆづと初デートで水族館に行ったときにお土産に買ったやつだ。)
そう、そのイルカのマスコットは陽仁と優月の初デートの思い出の品だったのだ。それにこのチップのような手触りは、おそらく優月のチョーカーに埋め込んであったGPSだろう。ということは、これは優月のもので間違いない。
「ねえ、これ、誰かにもらったの?」
陽仁は動揺しつつも笑顔を作って少女に話しかける。
「うん!昨日、ここにいたお兄ちゃんが悲しそうな顔でじーっとこれ見てたから、それかわいいねって言ったらお兄ちゃんがくれたの!お兄さん、あのお兄ちゃんの知り合い?」
そのマスコットをもらったという少女がキラキラした瞳で尋ねてくる。
「…うん、そうなんだ。あのね、お願いなんだけど、これ、返してくれないかな…?」
陽仁が少女の目をじっと見て言うと、少女はきょとんとした顔になる。
「お兄さんに?」
「うん、そう。…ごめんね、新しいのなら買ってまた持ってくるから、これは返してくれないかな…?俺にとって、とっても大切なものなんだ。」
マスコット自体が大切なわけではない。大切なのは、このマスコットに詰まった優月との思い出の方だ。
陽仁が真剣な顔で頼み込む。すると、少女は突然にこっと笑った。
「お兄さん、昨日のお兄ちゃんとおんなじこと言ってる!」
「え?」
少女に虚を突かれて、今度は陽仁がきょとんとする番だった。
「これくれたお兄ちゃんも、くれる時に――――――――
陽仁は例のアパートに向かって車を走らせたが、途中で現在地を確認したところ別の場所になっていたため、目的地を変更してそちらにやってきた。
「来たはいいんだけど――――――――公園…?」
そう、優月のGPSの移動先はアパートから歩いて行ける距離にある小さな公園だった。
(やっぱりGPSの場所はここで合ってる。でもなんで公園に…?)
陽仁は疑問に思う。それに、肝心の優月の姿が見えない。
(まさかここじゃないのか…?)
最悪の可能性に思い当たって陽仁は口元を引きつらせながら、それでも一応公園の中に入って優月の姿を探した。しかしどこを見ても優月は見当たらない。まさかチョーカーは単純にこの公園に捨てただけで、実はマンションの方だったのだろうか…そんなことを思っていると、砂場で遊んでいた女の子が友達に何かを自慢しているところに出くわした。ふとそれを見てみると、それは陽仁にとって見覚えのあるものであることに気づいた。
「きみ、それ、俺にもちょっと見せてもらってもいいかな?」
陽仁は人受けのいい笑顔を浮かべてその女の子に話しかけた。まだ小学校に上がっただろうか、というくらいの年頃の子供たちはまるでどこかの国の王子様のような陽仁に見とれながらもおずおずとそれを差し出した。
「はい、どうぞ…」
その子が差し出したものは一見何の変哲もないイルカのマスコットだ。しかし、陽仁にとってそれは大きな意味を持つものだった。
(これ…お腹のところに固い感触がある。…こんなのなかったはずだ。)
その部分をよく見ると、小さく縫い目があった。その付近に何か小さく薄い、チップのようなものが埋め込まれている。何よりそのマスコットそのものに、陽仁は見覚えがあった。
(これ……ゆづと初デートで水族館に行ったときにお土産に買ったやつだ。)
そう、そのイルカのマスコットは陽仁と優月の初デートの思い出の品だったのだ。それにこのチップのような手触りは、おそらく優月のチョーカーに埋め込んであったGPSだろう。ということは、これは優月のもので間違いない。
「ねえ、これ、誰かにもらったの?」
陽仁は動揺しつつも笑顔を作って少女に話しかける。
「うん!昨日、ここにいたお兄ちゃんが悲しそうな顔でじーっとこれ見てたから、それかわいいねって言ったらお兄ちゃんがくれたの!お兄さん、あのお兄ちゃんの知り合い?」
そのマスコットをもらったという少女がキラキラした瞳で尋ねてくる。
「…うん、そうなんだ。あのね、お願いなんだけど、これ、返してくれないかな…?」
陽仁が少女の目をじっと見て言うと、少女はきょとんとした顔になる。
「お兄さんに?」
「うん、そう。…ごめんね、新しいのなら買ってまた持ってくるから、これは返してくれないかな…?俺にとって、とっても大切なものなんだ。」
マスコット自体が大切なわけではない。大切なのは、このマスコットに詰まった優月との思い出の方だ。
陽仁が真剣な顔で頼み込む。すると、少女は突然にこっと笑った。
「お兄さん、昨日のお兄ちゃんとおんなじこと言ってる!」
「え?」
少女に虚を突かれて、今度は陽仁がきょとんとする番だった。
「これくれたお兄ちゃんも、くれる時に――――――――
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