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失踪ー陽仁sideー
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陽仁が家の玄関の扉を開けて一番初めに感じたのは、違和感だった。もう7年間住んだ家、住み慣れた我が家に、あるはずの気配がしない。
(そもそも玄関の扉開けたらいつも出迎えてくれるはず…)
違和感はそれだけではない。玄関に置いてある優月の鍵からマスコットが外されている。
(もう古くなってるしただ外しただけ…?いや、あり得ない。)
嫌な予感がした。実を言うと帰る前から嫌な予感がしていた。だから仕事を早く切り上げて急いで帰ってきたというのに…
「ただいま。」
靴を脱ぎながら言ってみるが返事はない。そのままリビングに向かい、リビングから繋がったダイニング、その先のアイランド型になっているキッチンを見る。
(…いない。)
キッチンを見たときにダイニングのテーブルの上に何かが置かれているのが目に入った。陽仁が帰ってきたらすぐに夕飯を食べることができるように、いつも物一つないテーブルに置かれていたのは、一枚の紙だった。
はるくんへ
お帰りなさい、今日もお仕事お疲れ様です。
突然いなくなってしまってごめんなさい。そして優しいはるくんをなかなか自由にしてあげられなくてごめんなさい。やっと決心ができました。俺のことはもういいから、きっともっと良い人と幸せになってください。
俺にとっては毎日が夢の様でした。今までありがとう。
夕飯は作ってあるのでよかったら温めて食べてください。
西原優月
紛れもない愛しい恋人の字で簡潔にそう書いてあった。
陽仁は手紙を元の場所に置き、スマホである映像を開く。映像には、陽仁が今いる部屋の様子が映し出されていた。映像の中では、ダイニングで陽仁と優月が焼き鮭を食べている様子が映し出されている。
「鮭……先週の映像か。」
家の様子をリアルタイムで映し出しているはずのカメラ―――――――家中に仕掛けられた監視カメラの映像をすべて確認し試しに部屋を移動してみるが、カメラは相変わらずダイニングで夕食をとる二人の様子を映し出すのみだった。
(全部屋のカメラが差し替えられてる。…ハッキングか。)
「やられたな…。」
陽仁が呟いて舌打ちを一つ落とす。
(まさかこんなことするとは…。俺も優月のネガティブさを舐めてたな…。)
陽仁が家中に仕掛けた監視カメラは全て一週間前のものに差し替えられ、家からは優月の荷物が綺麗に消えていた。
「てかこの手紙も何?俺を自由にするって?カメラも盗聴器も、こんだけ縛られてんのに気づいててよくそんなこと言えるよね。」
部屋のコンセントに仕掛けてあった盗聴器は全て丁寧に取り外されていた。これなのだ、悪い予感がした理由は。今日の昼前に優月が「行ってきます」と言って買い物に家を出てから音が一切しなかったのだ。それでもカメラには買い物から帰ってきた様子が映っていたし、今日は特別仕事が忙しかったためスルーしてしまった。
陽仁はその時の自身への苛立ちが隠し切れず、自身を落ち着かせるようにふう、と一つ息を吐く。
「はあ…かくれんぼのつもりかな?」
陽仁は無理やり自身を落ち着かせてパソコンを立ち上げる。
(GPSは…生きてるな。)
「さて、ゆづには詳しく話を聞きたいし…早く捕まえなきゃね。って、これじゃおにごっこか。」
優月にとりつけたGPSがうまく稼働していることでひとまず冷静になった陽仁は、いまごろ一生懸命陽仁から逃げているであろう優月のことを考えて口元に笑みを浮かべた。
「あんな手紙書くくらいだし、ゆづもばかだなあ。俺が優月のこと――――――――逃がすわけないのに。」
愛しい人のいない部屋で、陽仁は一人笑う。優月は何か大きく勘違いしているようだが、陽仁は心から、優月のことを愛している。そんな愛しい人が、方法は間違っているとはいえ自分のことを考えて行動してくれている。それもあの臆病な優月が、だ。そのことは陽仁には嬉しいことに思われ、いっそ興奮さえ覚えた。
(まあ、俺の幸せが他の人と結ばれることだって思ってるところだけは腑に落ちないんだけど。)
ただ、そんな優月の勘違いさえも陽仁には些細なことに思えた。その勘違いを正す準備はもう、十分すぎるほどに整っているのだ。
(後は仕上げをして、そしたら――――――俺がどれだけゆづのこと愛してるか、ゆづに分からせてあげなきゃね。)
(そもそも玄関の扉開けたらいつも出迎えてくれるはず…)
違和感はそれだけではない。玄関に置いてある優月の鍵からマスコットが外されている。
(もう古くなってるしただ外しただけ…?いや、あり得ない。)
嫌な予感がした。実を言うと帰る前から嫌な予感がしていた。だから仕事を早く切り上げて急いで帰ってきたというのに…
「ただいま。」
靴を脱ぎながら言ってみるが返事はない。そのままリビングに向かい、リビングから繋がったダイニング、その先のアイランド型になっているキッチンを見る。
(…いない。)
キッチンを見たときにダイニングのテーブルの上に何かが置かれているのが目に入った。陽仁が帰ってきたらすぐに夕飯を食べることができるように、いつも物一つないテーブルに置かれていたのは、一枚の紙だった。
はるくんへ
お帰りなさい、今日もお仕事お疲れ様です。
突然いなくなってしまってごめんなさい。そして優しいはるくんをなかなか自由にしてあげられなくてごめんなさい。やっと決心ができました。俺のことはもういいから、きっともっと良い人と幸せになってください。
俺にとっては毎日が夢の様でした。今までありがとう。
夕飯は作ってあるのでよかったら温めて食べてください。
西原優月
紛れもない愛しい恋人の字で簡潔にそう書いてあった。
陽仁は手紙を元の場所に置き、スマホである映像を開く。映像には、陽仁が今いる部屋の様子が映し出されていた。映像の中では、ダイニングで陽仁と優月が焼き鮭を食べている様子が映し出されている。
「鮭……先週の映像か。」
家の様子をリアルタイムで映し出しているはずのカメラ―――――――家中に仕掛けられた監視カメラの映像をすべて確認し試しに部屋を移動してみるが、カメラは相変わらずダイニングで夕食をとる二人の様子を映し出すのみだった。
(全部屋のカメラが差し替えられてる。…ハッキングか。)
「やられたな…。」
陽仁が呟いて舌打ちを一つ落とす。
(まさかこんなことするとは…。俺も優月のネガティブさを舐めてたな…。)
陽仁が家中に仕掛けた監視カメラは全て一週間前のものに差し替えられ、家からは優月の荷物が綺麗に消えていた。
「てかこの手紙も何?俺を自由にするって?カメラも盗聴器も、こんだけ縛られてんのに気づいててよくそんなこと言えるよね。」
部屋のコンセントに仕掛けてあった盗聴器は全て丁寧に取り外されていた。これなのだ、悪い予感がした理由は。今日の昼前に優月が「行ってきます」と言って買い物に家を出てから音が一切しなかったのだ。それでもカメラには買い物から帰ってきた様子が映っていたし、今日は特別仕事が忙しかったためスルーしてしまった。
陽仁はその時の自身への苛立ちが隠し切れず、自身を落ち着かせるようにふう、と一つ息を吐く。
「はあ…かくれんぼのつもりかな?」
陽仁は無理やり自身を落ち着かせてパソコンを立ち上げる。
(GPSは…生きてるな。)
「さて、ゆづには詳しく話を聞きたいし…早く捕まえなきゃね。って、これじゃおにごっこか。」
優月にとりつけたGPSがうまく稼働していることでひとまず冷静になった陽仁は、いまごろ一生懸命陽仁から逃げているであろう優月のことを考えて口元に笑みを浮かべた。
「あんな手紙書くくらいだし、ゆづもばかだなあ。俺が優月のこと――――――――逃がすわけないのに。」
愛しい人のいない部屋で、陽仁は一人笑う。優月は何か大きく勘違いしているようだが、陽仁は心から、優月のことを愛している。そんな愛しい人が、方法は間違っているとはいえ自分のことを考えて行動してくれている。それもあの臆病な優月が、だ。そのことは陽仁には嬉しいことに思われ、いっそ興奮さえ覚えた。
(まあ、俺の幸せが他の人と結ばれることだって思ってるところだけは腑に落ちないんだけど。)
ただ、そんな優月の勘違いさえも陽仁には些細なことに思えた。その勘違いを正す準備はもう、十分すぎるほどに整っているのだ。
(後は仕上げをして、そしたら――――――俺がどれだけゆづのこと愛してるか、ゆづに分からせてあげなきゃね。)
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