4 / 41
優月の過去ー優月sideー
4
しおりを挟む
しかし中学二年の時、そんな優月にまた悲劇が起きた。中学二年の時に全国の子供が受けることになる”第二次性別検査”の結果がΩだったのだ。
この世界には男女のほかにα、β、Ωと三つの性別がある。αは希少な上位の性別で、基本的に優秀な者が多く優遇される。βは人口のほとんどが属しており平凡で特徴のない性別。残りがΩ、この性別は劣性で一番人口が少なく能力がないと言われているが、かなり特殊な性別で、代わりに性別特有の能力を持っている。まず男女問わず妊娠が可能だ。そして月に一度ヒートという時期があり、その時期になるとフェロモンを出してαやβを誘惑する。薬で抑制しないと無差別に周りを誘惑することになってしまい、これを止めるにはαにうなじを噛んでもらい番関係になるしかない。さらに着床率も高く、まさに子を成すことに特化した性別なのだ。しかしそれゆえに、Ωは冷遇されてきた。さらに男のΩは女性Ωより数が少なくαやβの男にない機能を持ち合わせているため、余計に奇異の視線にさらされることになる。
そして優月は、この第二次性がΩだったのだ。男なのにΩ。優月としてはこのことも最早やっぱり、という感じだった。やはり自分はどこまでもみんなから疎まれる存在なのだなあと思った。しかもさらに悪いことに、この検査結果がいじめっ子の手にわたり優月は学校中にそのことが知られてしまった。そしてそれからさらにいじめが過激なものになる。殴る蹴るは当たり前、卒業まで多感で複雑な年ごろの青少年たちの欲求のはけ口とされた。
中学でのいじめがひどくなり、誰も優月のことを知らない地元から遠く離れた高校に進学した。親には特待生として進学して学費がかからないということを言うと勝手にしろと言われた。そこでは優月は努めて普通にふるまうことで、初めて友達ができた。優月が特待生だと知って勉強を教えてほしいと頼まれ、彼らと勉強をした。少しでも自分にできることを増やそう、こんな自分でもいつか何かの役に立てるかもしれないから頑張ってみよう、そんな思いで空いた時間をすべて学ぶことに費やしていた優月は、自分の学んだことで誰かの役に立てることがうれしくて、喜んで彼らに勉強を教えた。楽しい時間だった。友達だと、思っていた。…でも、それはどうやら優月だけだったようだ。
ある日どこからか優月がΩだという噂が流れた。その日を境に、優月の日常はまた変わってしまった。いや、元通りになっただけとも言えるかもしれない。また家では母や、酒に酔った父に殴られ、学校に来たらクラスメイト達の鬱憤をぶつけられる。その中にはかつて友人だと思っていた者たちもいた。高校の生徒たちは進学校の生徒らしく、重圧や束縛へのストレスがあったのだろう。中学時代のただ暴力を振るわれたり、あからさまに無視されたりするのとは違って表立っていじめられることはなく、教師たちの陰に隠れて行われる陰湿ないじめが続いた。まあそれでもきっと教師たちは何となく気づいただろうし、それをあえて何もしなかったようであったが。
そんな毎日が高三まで続いて、もう優月は全てがどうでもよくなっていた。放課後の教室でクラスメイトにいつものように殴り蹴りされていたある日、ふと思った。
そもそも自分は何のために生きているのか。みんなに疎まれて、自分がいれば何もかも、全てが悪い方向に行く。両親の仲は冷め切り、学校ではいじめが生まれた。全部自分が悪い。自分はそもそも生まれてきたことが間違いだったのだ。むしろ気づくのが遅すぎたのではないかとすら思った。やっと分かった。きっと自分は、この世界に存在しない方がいいのだ。そう、思った。……その時だった。
「何してるの?」
この世界には男女のほかにα、β、Ωと三つの性別がある。αは希少な上位の性別で、基本的に優秀な者が多く優遇される。βは人口のほとんどが属しており平凡で特徴のない性別。残りがΩ、この性別は劣性で一番人口が少なく能力がないと言われているが、かなり特殊な性別で、代わりに性別特有の能力を持っている。まず男女問わず妊娠が可能だ。そして月に一度ヒートという時期があり、その時期になるとフェロモンを出してαやβを誘惑する。薬で抑制しないと無差別に周りを誘惑することになってしまい、これを止めるにはαにうなじを噛んでもらい番関係になるしかない。さらに着床率も高く、まさに子を成すことに特化した性別なのだ。しかしそれゆえに、Ωは冷遇されてきた。さらに男のΩは女性Ωより数が少なくαやβの男にない機能を持ち合わせているため、余計に奇異の視線にさらされることになる。
そして優月は、この第二次性がΩだったのだ。男なのにΩ。優月としてはこのことも最早やっぱり、という感じだった。やはり自分はどこまでもみんなから疎まれる存在なのだなあと思った。しかもさらに悪いことに、この検査結果がいじめっ子の手にわたり優月は学校中にそのことが知られてしまった。そしてそれからさらにいじめが過激なものになる。殴る蹴るは当たり前、卒業まで多感で複雑な年ごろの青少年たちの欲求のはけ口とされた。
中学でのいじめがひどくなり、誰も優月のことを知らない地元から遠く離れた高校に進学した。親には特待生として進学して学費がかからないということを言うと勝手にしろと言われた。そこでは優月は努めて普通にふるまうことで、初めて友達ができた。優月が特待生だと知って勉強を教えてほしいと頼まれ、彼らと勉強をした。少しでも自分にできることを増やそう、こんな自分でもいつか何かの役に立てるかもしれないから頑張ってみよう、そんな思いで空いた時間をすべて学ぶことに費やしていた優月は、自分の学んだことで誰かの役に立てることがうれしくて、喜んで彼らに勉強を教えた。楽しい時間だった。友達だと、思っていた。…でも、それはどうやら優月だけだったようだ。
ある日どこからか優月がΩだという噂が流れた。その日を境に、優月の日常はまた変わってしまった。いや、元通りになっただけとも言えるかもしれない。また家では母や、酒に酔った父に殴られ、学校に来たらクラスメイト達の鬱憤をぶつけられる。その中にはかつて友人だと思っていた者たちもいた。高校の生徒たちは進学校の生徒らしく、重圧や束縛へのストレスがあったのだろう。中学時代のただ暴力を振るわれたり、あからさまに無視されたりするのとは違って表立っていじめられることはなく、教師たちの陰に隠れて行われる陰湿ないじめが続いた。まあそれでもきっと教師たちは何となく気づいただろうし、それをあえて何もしなかったようであったが。
そんな毎日が高三まで続いて、もう優月は全てがどうでもよくなっていた。放課後の教室でクラスメイトにいつものように殴り蹴りされていたある日、ふと思った。
そもそも自分は何のために生きているのか。みんなに疎まれて、自分がいれば何もかも、全てが悪い方向に行く。両親の仲は冷め切り、学校ではいじめが生まれた。全部自分が悪い。自分はそもそも生まれてきたことが間違いだったのだ。むしろ気づくのが遅すぎたのではないかとすら思った。やっと分かった。きっと自分は、この世界に存在しない方がいいのだ。そう、思った。……その時だった。
「何してるの?」
11
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる