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優月の過去ー優月sideー
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しかし中学二年の時、そんな優月にまた悲劇が起きた。中学二年の時に全国の子供が受けることになる”第二次性別検査”の結果がΩだったのだ。
この世界には男女のほかにα、β、Ωと三つの性別がある。αは希少な上位の性別で、基本的に優秀な者が多く優遇される。βは人口のほとんどが属しており平凡で特徴のない性別。残りがΩ、この性別は劣性で一番人口が少なく能力がないと言われているが、かなり特殊な性別で、代わりに性別特有の能力を持っている。まず男女問わず妊娠が可能だ。そして月に一度ヒートという時期があり、その時期になるとフェロモンを出してαやβを誘惑する。薬で抑制しないと無差別に周りを誘惑することになってしまい、これを止めるにはαにうなじを噛んでもらい番関係になるしかない。さらに着床率も高く、まさに子を成すことに特化した性別なのだ。しかしそれゆえに、Ωは冷遇されてきた。さらに男のΩは女性Ωより数が少なくαやβの男にない機能を持ち合わせているため、余計に奇異の視線にさらされることになる。
そして優月は、この第二次性がΩだったのだ。男なのにΩ。優月としてはこのことも最早やっぱり、という感じだった。やはり自分はどこまでもみんなから疎まれる存在なのだなあと思った。しかもさらに悪いことに、この検査結果がいじめっ子の手にわたり優月は学校中にそのことが知られてしまった。そしてそれからさらにいじめが過激なものになる。殴る蹴るは当たり前、卒業まで多感で複雑な年ごろの青少年たちの欲求のはけ口とされた。
中学でのいじめがひどくなり、誰も優月のことを知らない地元から遠く離れた高校に進学した。親には特待生として進学して学費がかからないということを言うと勝手にしろと言われた。そこでは優月は努めて普通にふるまうことで、初めて友達ができた。優月が特待生だと知って勉強を教えてほしいと頼まれ、彼らと勉強をした。少しでも自分にできることを増やそう、こんな自分でもいつか何かの役に立てるかもしれないから頑張ってみよう、そんな思いで空いた時間をすべて学ぶことに費やしていた優月は、自分の学んだことで誰かの役に立てることがうれしくて、喜んで彼らに勉強を教えた。楽しい時間だった。友達だと、思っていた。…でも、それはどうやら優月だけだったようだ。
ある日どこからか優月がΩだという噂が流れた。その日を境に、優月の日常はまた変わってしまった。いや、元通りになっただけとも言えるかもしれない。また家では母や、酒に酔った父に殴られ、学校に来たらクラスメイト達の鬱憤をぶつけられる。その中にはかつて友人だと思っていた者たちもいた。高校の生徒たちは進学校の生徒らしく、重圧や束縛へのストレスがあったのだろう。中学時代のただ暴力を振るわれたり、あからさまに無視されたりするのとは違って表立っていじめられることはなく、教師たちの陰に隠れて行われる陰湿ないじめが続いた。まあそれでもきっと教師たちは何となく気づいただろうし、それをあえて何もしなかったようであったが。
そんな毎日が高三まで続いて、もう優月は全てがどうでもよくなっていた。放課後の教室でクラスメイトにいつものように殴り蹴りされていたある日、ふと思った。
そもそも自分は何のために生きているのか。みんなに疎まれて、自分がいれば何もかも、全てが悪い方向に行く。両親の仲は冷め切り、学校ではいじめが生まれた。全部自分が悪い。自分はそもそも生まれてきたことが間違いだったのだ。むしろ気づくのが遅すぎたのではないかとすら思った。やっと分かった。きっと自分は、この世界に存在しない方がいいのだ。そう、思った。……その時だった。
「何してるの?」
この世界には男女のほかにα、β、Ωと三つの性別がある。αは希少な上位の性別で、基本的に優秀な者が多く優遇される。βは人口のほとんどが属しており平凡で特徴のない性別。残りがΩ、この性別は劣性で一番人口が少なく能力がないと言われているが、かなり特殊な性別で、代わりに性別特有の能力を持っている。まず男女問わず妊娠が可能だ。そして月に一度ヒートという時期があり、その時期になるとフェロモンを出してαやβを誘惑する。薬で抑制しないと無差別に周りを誘惑することになってしまい、これを止めるにはαにうなじを噛んでもらい番関係になるしかない。さらに着床率も高く、まさに子を成すことに特化した性別なのだ。しかしそれゆえに、Ωは冷遇されてきた。さらに男のΩは女性Ωより数が少なくαやβの男にない機能を持ち合わせているため、余計に奇異の視線にさらされることになる。
そして優月は、この第二次性がΩだったのだ。男なのにΩ。優月としてはこのことも最早やっぱり、という感じだった。やはり自分はどこまでもみんなから疎まれる存在なのだなあと思った。しかもさらに悪いことに、この検査結果がいじめっ子の手にわたり優月は学校中にそのことが知られてしまった。そしてそれからさらにいじめが過激なものになる。殴る蹴るは当たり前、卒業まで多感で複雑な年ごろの青少年たちの欲求のはけ口とされた。
中学でのいじめがひどくなり、誰も優月のことを知らない地元から遠く離れた高校に進学した。親には特待生として進学して学費がかからないということを言うと勝手にしろと言われた。そこでは優月は努めて普通にふるまうことで、初めて友達ができた。優月が特待生だと知って勉強を教えてほしいと頼まれ、彼らと勉強をした。少しでも自分にできることを増やそう、こんな自分でもいつか何かの役に立てるかもしれないから頑張ってみよう、そんな思いで空いた時間をすべて学ぶことに費やしていた優月は、自分の学んだことで誰かの役に立てることがうれしくて、喜んで彼らに勉強を教えた。楽しい時間だった。友達だと、思っていた。…でも、それはどうやら優月だけだったようだ。
ある日どこからか優月がΩだという噂が流れた。その日を境に、優月の日常はまた変わってしまった。いや、元通りになっただけとも言えるかもしれない。また家では母や、酒に酔った父に殴られ、学校に来たらクラスメイト達の鬱憤をぶつけられる。その中にはかつて友人だと思っていた者たちもいた。高校の生徒たちは進学校の生徒らしく、重圧や束縛へのストレスがあったのだろう。中学時代のただ暴力を振るわれたり、あからさまに無視されたりするのとは違って表立っていじめられることはなく、教師たちの陰に隠れて行われる陰湿ないじめが続いた。まあそれでもきっと教師たちは何となく気づいただろうし、それをあえて何もしなかったようであったが。
そんな毎日が高三まで続いて、もう優月は全てがどうでもよくなっていた。放課後の教室でクラスメイトにいつものように殴り蹴りされていたある日、ふと思った。
そもそも自分は何のために生きているのか。みんなに疎まれて、自分がいれば何もかも、全てが悪い方向に行く。両親の仲は冷め切り、学校ではいじめが生まれた。全部自分が悪い。自分はそもそも生まれてきたことが間違いだったのだ。むしろ気づくのが遅すぎたのではないかとすら思った。やっと分かった。きっと自分は、この世界に存在しない方がいいのだ。そう、思った。……その時だった。
「何してるの?」
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