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46.「好き」が届くまで
しおりを挟む会長は、生徒会室のドアから外をのぞいて、誰もいないことを確認してからドアを閉めた。
「今度はあの人に聞かれてそうだ……借りができた、だの、一族を守るだの、しおらしいこと言ってるけど、腹の中では、こっちを狙っているんだ」
「どういうことですか?」
「借りだ、なんて言って、向こうに頼るように仕向けてるんだよ。そうやって近づいて、あの人の力なしにはやっていけなくするのが、あの人の手口だ。恩を売って、ディトルスティに近づく気なんだよ」
「ぼ、僕に……?」
「もう貴族たちが、君に目をつけたからね……公爵家も、君に恩を売りたいんだよ」
「……本当に弱ってるんですか? あれ……」
「……多分ね。俺はあの人に利用される気はないし、ディトルスティのことも、俺が守るから」
「会長……僕、大丈夫ですよ? だって、僕はこれからも、誰が何をしようが、会長だけが好きですから!! セルラテオは公爵に見放されたなら、僕が何をしてもいいですよね!」
「……それはダメ。それと、もう勝手なことしないこと。だめだよ? 俺に黙って他の貴族に会おうとしたら」
「はい……」
「公爵も、ああ見えて相当弱ってるのは本当だから、しばらくは手は出してこないと思うけど……本当に、気をつけなきゃダメだよ? みんな、ディトルスティの魔法が欲しいんだから」
「は、はい……」
頷くと、会長は微笑んでくれた。そして、僕を連れて、そっと唇を重ねてくる。そのままソファに押し倒された。
「か、会長……」
「心配したんだから」
囁いて、会長が僕の唇を咥える。僕も我慢できなくて、怖かったけど、勇気を出して彼の唇をすこしだけ咥えた。それで、火をつけてしまったらしい。会長は強く、何度も僕の唇を味わって、離してくれない。何度も、ちゅ、ちゅっと、音が響いて、背筋がゾクゾクした。
もう、これ以上の快感は怖くて、身をひこうとしたけど、会長がそんなこと許してくれるはずなくて。背中に手を回されて、強く抱きしめられる。すでに服は乱れて、彼の服が擦れるたびにくすぐったいのに気持ちいい。もっとその体を感じたいのに、くらくらしてきた。ずっと重ねたままの唇から、彼が離れていく。その頃にはすっかり甘い熱に浮かされて、ぼんやりしていた。
「かいちょう……」
「ディトルスティは、本当に感じやすいね。これから心配だよ……そんな格好で、外を歩いちゃダメだよ?」
「しません……そんなこと」
そんなの、できるはずない。
ちょっと悔しくて言うと、会長は微笑んで、僕の頭を撫でてくれる。
もっと二人でいたかったのに、生徒会室のドアが開いてしまった。
「生徒会室で不純な行為は禁止でーーーす!!」
そう言って入ってきたのは、マモネーク。後ろからヴィユザも飛び込んできて、僕に駆け寄ってくる。
「大丈夫だったか!? なんにも、エロいことされてないか!?」
「……ヴィユザが思うようなことはされてないよ……大丈夫」
「そうか……」
ヴィユザは相変わらず、会長を睨みつけて「こいつ傷つけたらタダじゃおかないぞ!」なんて言ってる。
すると会長も腕を組んで言った。
「俺はそんなことしないよ。何度も言うけど、俺たち、付き合ってるから。それで? 君らは何しにきたの?」
すこし冷たく言う会長に、マモネークは平然と答える。
「書記と、ずっと空席だった副会長が決まって、お祝いに来ました! これでやっと僕の肩の荷が降りますよー」
「え? 書記って誰がなるんですか?」
僕が聞くと会長が微笑んで言った。
「ヴィユザに頼んだんだ」
「ヴィユザに?」
するとヴィユザが、僕の肩を抱いて言った。
「俺が、ディトルスティを助けるから、なんかあったら俺に言えよ!」
「う、うん……会長のために働けるなんて、夢みたいだ……」
「……お前……相変わらずだな……」
ヴィユザは呆れたようにしてるけど、僕はいつだって、会長のことしか考えてない。
すると、マモネークが僕に振り向いて言った。
「そういえば、ディトルスティさんに関する処分、取り消しになるみたいです」
「え……?」
「生徒会の管理下に置くっていう処分です。セルラテオが会長にしたことや、フォーラウセたちを使ってやったことを、すべて自白したみたいで。おかげでフォーラウセさんは、演習の魔法具の件以外はお咎めなしです。謹慎が明けたら、セルラテオのお目付役には、フォーラウセさんについてもらうから、もう大丈夫ですよ。どうします? ディトルスティさんはもう自由ですけど……」
「僕、別に拘束されていたつもり、ないです」
振り向くと、会長も微笑んでくれた。
「うん。俺も」
そう言って、会長はまたキスをしてくれる。
マモネークがヴィユザを連れてそっと部屋を出て行って、今度は僕から会長に飛びついた。
*好きな人の「好き」を信じられない僕には、会長の束縛じゃ物足りません*完
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