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31.拍手
しおりを挟む僕が演習が行われている方に駆け寄ると、そこにいたみんなが僕に振り向く。演習の邪魔をするわけにはいかない。
「皆さん! 演習を続けてください!! 僕には構わないで!!」
会長も僕に振り向く。
僕が会長の足元に視線をやって、「気をつけてください」って、声は出さないように口だけ動かして伝えたら、頷いてくれた。
会長も、足元に気づいたらしい。土の中から、小さな鳥の使い魔をたくさん作り出した。
光る小鳥が空に飛んでいく。美しい……
違う違う。見惚れてる場合か!
すると、会長の使い魔を見てむきになったのか、セルラテオが、巨大な鳥の使い魔を作り出した。だけど、地面が大きく揺れて芝生が凹んでる。動揺しているみたいだけど、仕掛けたものが見つかって、焦っているのか?
だけど、もう遅い。昨日みたいにリボン切られてたまるか。あれは、僕が会長に送ったものだったのに。
僕は、地面に膝をついて、芝生に手のひらをつけた。そこに魔法をかけると、土の中の様子がわかる。
地上で使い魔を作っても、地中深くの土まで魔力の干渉を受けることはあり得ないのに、土の中に、微かに魔力を感じる。ここで演習が始まる前に誰かが魔法をかけたんだ。
僕が顔を上げると、会長も気づいたらしいけど、今度は首を横に振る。
やめておけってことか? だけど、こんなものがあったら、会長が危険に晒される。今狙われているのは会長なんだ。
僕は、地面に魔法をかけた。すると、地面に沿って優しい風が吹く。それが凸凹だった地面を撫でて、芝生が揺れ出す。抜かれてしまった芝生は再生して、地下に仕掛けられた魔力は消え去った。
だけど地下を探ったら、別のものまで見つかった。今度は、もっと深くに埋められた、強い魔力を発するものだ。多分、それが持つ魔力で地上にいる人に気付かれてしまわないように、地下深くに埋めたんだろう。
何かの魔法具かな??
さすがに魔法を使いすぎた。少しくらくらする。今日はもう、他に魔法は使えないかもしれない。
だけどいいんだ。会長を守るほうが大事。会長のそばにいるほうが大事。僕は、会長のためにここまで来たんだ。
再び地面に魔法をかけると、地面の中に隠されたものが、小さなたくさんの光の玉に包まれて飛び出した。それは外に出るなり、ボンッと音を立てて弾け飛ぶ。地中から花火が飛び出したような光景に、みんなが拍手をくれる。
「すげーな!! お前! 演習場、すげーきれいになったじゃねーか!」
そう言って、ヴィユザが僕に駆け寄ってくる。
周りを見渡せば、演習場は、人が立ち入る前みたいに足跡ひとつない。
そういえば僕、演習場の整備をしていたんだ。会長を守ることばっかりに夢中で、整備のことは忘れていた。
だけど、綺麗になった演習場を見て、みんなが僕に拍手をくれている。
そんなに褒めてくれるなんて思わなかった……会長を狙うものを取り出しただけなのに。ちょっと照れる……
先生まで拍手をくれている。こんなに大勢に褒められたの、初めてだった。
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