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15.僕だけで

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 生徒会室を片付けて、僕らは寮に戻ってきた。学園のすぐ裏にある寮は、僕にとってはいつも、会長のことを考えて、会長にそばにいて欲しいなー、なんて妄想するための場所。

 それなのに、今日は会長が一緒。マモネークとヴィユザも一緒なんだけど、会長がずっと僕の肩を抱いているから、めちゃくちゃ緊張する……

 ただでさえ、生徒会の人が寮を歩いたりしたら目立つのに、会長が新入生の僕の肩なんか抱いてるから、ますます目立つ。

 みんなが振り返る中、僕は真っ赤になって俯きながら歩いていた。

 会長が、こんなにそばにいる……会長が……な、な、な、なんで……こんなことに……

 チラッと見上げれば、会長は僕に微笑んでくれた。

 その笑顔だけで、心が満たされる。
 会長……好きです。こうしているだけで、僕はこんなにも幸せで…………それなのに、ちょっと怖いんです。

 いつまでこうしてそばにいてくれるのかなって、余計なことを考えちゃうんです。

 だって、今だって、ほら。寮の人がみんな振り向いてる。立ち止まって、会長を見てる。

 みんな、会長に振り向いてるんです。
 みんなが、会長を好きなんです。会長の恋人は、僕だけなのに。

 それなのに、廊下で立ち止まってこっちを見ていた群衆のうちの一人が、会長に声をかけてくる。

「あ、あのっ……! 会長!! そ、そちらの方は……」
「気になる?」
「あ、あのっ……あまり見ない方なので……」
「俺の恋人」

 会長が答えると、周りにいた人たちから、一斉にわあっと驚きの声が上がる。今度は、みんなが僕らを見ていた。

 急にそんな風に注目されたら、嬉しいけど恥ずかしい。

 会長……こんなところで、好きって言ってくれた……
 そんな宣言してもらえるなんて思わなくて、真っ赤になりながら隣の会長を見上げたら、会長は僕に微笑んでいた。

「目、閉じて」
「え……?」

 びっくりしたけど、会長の顔が迫ってきて、僕は咄嗟に目を閉じた。そしたら、頬にちゅってキスされた。

 今度は歓声とも驚きとも思えるどよめきが起こる。

 みんなが僕を見てる。僕のことを、会長の恋人だって思ってるんだ。

 会長……嬉しいです。

 僕は彼の恋人って、みんなが知ってくれている気がする。そう知っていてほしい。

 だけど、それじゃ足りない。

 みんなが大好きな会長は、いつも視線を浴びている。僕は、僕以外の人が会長を見ているだけでもモヤモヤするのに……恋人は、僕なんだ。

「か、会長!!」
「どうしたの?」
「あ、あのっ……このあと、食堂行くんですよね? 一緒に……行きたいです」
「……」

 ドキドキしながら、なんとか告げたら、会長はなぜか黙ってしまった。

 なんで!? い、嫌だった!?
 それとも、会長を見ている他の人に見せつけてやりたいなんて下心を見透かされた!?

 違うんです! どうしても……僕だけの会長でいて欲しくて。せめて、少しでも多くの人の前で、恋人って宣言したかったんです!

 ど、どうしよう……もう、嫌われた?!

「あ、あの……」
「そんな可愛い顔で言うなよ……」
「え!?」

 彼は、今度は僕の耳元で言う。

「物欲しそうにしたから、また後で襲うね?」
「えっ……!? かかかかかかか会長!!」

 慌てる僕に、会長はまたにこって笑う。

「行こうか」

 そう言って、会長は僕のことを抱き寄せて、寮の廊下を歩いていく。つい、僕は彼に体を寄せてしまう。

 このままずっと、僕だけの会長でいて欲しいよ……
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