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13.気にしないで
しおりを挟む「……大丈夫?」
そう聞いて、会長が僕に手を貸してくれる。真っ赤になりながら彼の手をとって立ち上がったら、会長は僕の頭を優しく撫でてくれた。
「意地悪しすぎた?」
「そ、そんなことないです……び、びっくりしただけで……」
真っ赤になりながら言う僕。だって、会長に触れてもらえるのはすごく嬉しい。
だけど、いきなりだと戸惑う!! 付き合うなんて、初めてだし……どうしよう、顔が勝手にニヤニヤしてる。さっきのことを思い出して、恥ずかしいのに、すごく嬉しい。
すると会長は、僕に顔を近づけてきた。
「……そんな可愛いこと言うと、また襲うよ?」
「へっ……!? お、襲うっ……!??」
慌てふためく僕に、会長が微笑んでる。
襲うって……まさか本気で!?? だ、だけど、会長とならっ……会長になら何をされてもいいっ……かも……!
けれどそこで、大きな音を立てて、部屋のドアが開かれた。
「レイプだめーーーーっ!!」
大声でそんなことを言って、誰かが生徒会室に飛び込んでくる。会計のマモネークだ。
彼が入ってきたら、会長は自分のローブをむしり取って、僕にかけてくれた。会長のローブ……さっきまで着てたやつ……あ、あったかい……
無意識のうちにそれに顔を埋めていたら、会長に耳元で囁かれた。
「それで体、隠しておいて」
「え……? な、なんで……」
「物欲しそうな体になってるから」
「……っ!!」
それは会長のせいです!!
慌てて、ローブで股間を隠す僕。
会長は僕を隠すように立って、マモネークに振り向いた。ニコニコしてるけど、これは怒ってる時の顔だ。
「マモネーク……入ってくるなって言っただろ?」
凄むように言われても、マモネークは全く怯まない。腰に手を当てて、会長に念を押している。
「レイプはだめです! 彼のことは、拘束と監視は認められたけど、強姦していいとは言われてません! 会長がそんなことしたなんて、大きなスキャンダルになっちゃいます!」
「今のは、付き合ってる恋人に対してしてただけ。それで? 何しに来たの? 俺の邪魔しに来た?」
「もちろん、違いまーす。会長が意地悪しないように、忠告に来たんです! だって会長、その子の処分引き受ける時、怖い顔してたから。俺以外がディトルスティを処分するなんて許さない、みたいな」
「当然だろ?」
そう言って、会長は僕の肩を抱いて引き寄せる。
「だって、ディトルスティは俺の大事な恋人なんだから」
「……はいはい。仲が良くて僕もホッとしました」
マモネークがやれやれと言った様子で答えているけど、そんな会話の間も、僕は俯いていることしかできない。
会長が……会長が、僕の肩をーーーー!!
ドキドキしすぎて見上げたら、会長は僕に微笑んでくれて、ますます嬉しくなる。そんな風に、優しい顔で笑うんだ。僕の会長だ……好き。大好き……
いつのまにか見惚れてたみたい。マモネークの「おーい、大丈夫ー?」っていう、どこか間延びしたような声で、やっと僕は我に返った。
「あ、え、えっと……は、いいっっ!!??」
僕、まだ答えてる途中なのに、会長は、僕の頬に手を当て、反対の頬にはちゅって唇で触れてくる。その上、ちょっとそこを舐められて、びっくりしたのか恥ずかしいのか嬉しいのか、涙が出てきた。
それだけで精一杯なのに、会長は僕を抱き寄せたまま離してくれない。慌てるばかりの僕とは対照的に、会長は冷静な顔でマモネークに振り向いた。
「彼は俺の管理下に置かれるんだから。手を出さないでね?」
「俺の、じゃなくて、生徒会の、です。監視は許されたけど、えっちなことはダメです。無理にしたら強姦です!」
「そんなことする気ない。だって俺たち、付き合ってるんだし。ね?」
会長が、僕を見下ろしてる。ずっと抱きしめられているせいで、会長の顔がすぐそばにある!!
僕は、力の限り何度もうなずいた。
勢いが良すぎてクラクラしてきた僕を、マモネークが見下ろして言う。
「辛いことがあったら言ってください。会長が横暴なことしようとしたら、僕が陛下に話しちゃいます!」
「へ、陛下に!??」
「大丈夫。僕の兄はもう王城に仕えてて、陛下の側近です。君の監視と、必要があれば拘束することは認められているけど、えっちもいいよ、なんて言われてません。嫌だったら、僕に相談してください!」
「ぼ、僕……嫌なんかじゃありません……」
「従順だなぁ……会長に食べられちゃわないか心配です……あ、そうだ! 君に会いたいって人が来てます!」
「僕に……?」
誰だろう。セルラテオじゃないだろうな……
ちょっと怖かったけど、マモネークに「もう入ってきていいよー」って言われて、部屋に飛び込んできたのは、ヴィユザだった。謹慎、解けたんだ。
少しホッとした。巻き込んじゃったような気がしていたから。
彼は部屋に入ってくるなり、僕に駆け寄ってくる。やけに青い顔をして焦っているようだった。
「ディトルスティ!」
「……? どうしたの? 謹慎、解けたのに……」
「お、俺のことはいいんだよ!! お前、生徒会の管理下に置かれるって、冗談だよな!? そんなのっ……風紀委員でもないくせにっ……!!」
「うん……でも、そういうことになったから」
「……」
ヴィユザは、ひどく辛そうにしていた。
ど、どうしたんだろう……処分されるのは僕で、彼じゃない。それに僕が処分されたって、彼は痛くも痒くもないだろうに。もしかして、気を使わせてるのかな?
そう思っていたら、彼はゆっくり口を開く。
「ごめん……俺を庇ったから……」
「え……!? か、庇った? ……なんのこと? 僕はそんなつもりないし、君のせいじゃない」
「全く関係ないとは言えないだろ!! 俺がっ……お前に絡んだりしなかったら、処分だって、もう少し軽くて済んだかもしれないのに!」
「ほ、本当に……君のせいじゃない……だから落ち着いて……原因を作ったの、僕みたいだし、もう忘れてほしい。本当に、気にしなくていいから……」
彼は妙に責任感じてるけど、そんな必要ないし、恩に思われることもない。僕に原因があるのも本当なんだ。
なのに、彼はいきなり僕の手を取って、強く握った。会長ならともかく、よく知らない人にいきなり手を握られると怖い!!
「え!? な、なに!!?? なに!!?? い、痛い!」
「ごめん……」
「あ、謝るなら離してほしい……」
「ごめん!! 俺、お前に酷いこと言って……」
「気にしてないよ……君、ちょっと騙されやすそうだし……僕はもう忘れたから……ど、どうしたの!??」
ヴィユザは、僕の手をますます強く握って、今度は涙を流し始める。どうしたんだ一体!! やっぱり怖いっ……!!
「な、なんで泣くの……? 僕、もう、本当に気にしてなくて……あの、僕も悪かったんだし、誰が悪いとか、言わないでおこうよ……」
「か、感動したんだ! 俺は!!」
「はあ??」
ヴィユザ、本当にどうしたんだろう……だ、大丈夫かな……??
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